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第百十九話 ルビアス王子の剣を手に

 エリザベートには衝撃だった。

 クラウドはなんてすごい観察力で。

 なんという洞察力だろうか。

 的確すぎる。

 それでいてエリザベートの自尊心や誇りを決して傷つけない。

 純粋に感動を覚えていた。

 クラウドは人に教える才能がある。

 彼に習えば捻くれたり屈折せずに、確実に上達して素直に真っ直ぐに育つと思う。

 きっと必ず彼ならば良い方向に導いてくれる。

 クラウドには良き師、良き指導者の素質があるとエリザベートは見抜いていた。



 クラウドは剣を軽く振った。

 エリザベートは凛々しい動作で聖剣エクスカリバーを中段に構えた。


「握る剣に力は込めすぎずにしなやかに。体は硬くせずに柔軟さと機敏さを意識していく」


 きゅっと握った剣を横に構えてから、クラウドはニイッと悪戯っぽい少年の様な明るい表情を浮かべた。

 剣の切っ先をエリザベートに向け冗談交じりの大袈裟な挑発めいた仕草をしてみる。

 楽しそうで明るく怪傑で、クラウドはわんぱくな少年みたいだ。


「やるか? エリザベート」

「もちろん」


 二人は見つめ合いニコリと笑った。

 まるで舞踏会でダンスを踊る前の男女のように。

 始まりにワクワクして。

 そして相手がどう動くか。

 気持ちが高揚する。

 そして目の前の相手に挑戦的になる。

 楽しいワルツのように。


「来いっ! エリザベート! お前と戦うためにルビアスに借りた剣だ」

「ルビアスに?」


 クラウドは動かない。

 クラウドは聖剣雷撃のレイピアを使う以前のルビアスの愛用の剣を、縦に真一文字に構えたまま。

 エリザベートは海岸の砂地を蹴りこんでクラウドに向かって斬り込んだ。

 蹴って舞った砂粒が上空まで上がる。


「俺のは大振りすぎてっ、今のお前のための稽古には向かないからなあっ」


 ルビアスの剣を使うのは奴の剣の方が、より接近戦に向いているからだ。

 俺のバトルアックスでは一度の一振りが時間がかかりすぎるから、剣と斧が対峙する時間がかかり接近戦の稽古には向いていない。

 接近戦でエリザベートには出来るだけ多くの回数を振り斬らせてやりたい。

 エリザベートは接近戦は得意中の得意だからだ。

 クラウドはエリザベートにもっと感覚をつけさせて速度を増せるようにしたい。


「クラウドっ!」

「まだまだあっ」


 もっとも得意な間合いで打ち込め何度も。

 断ち切れ迷いを。

 俺がお前の剣を何度でも受けてやるから。


 得意なところを強化して自信をつけさす!

 そして不得意なところは得意分野でつけた自信でおのずと高みに上がるだろう。

 駄目なところを良いところで引っ張り上げようとさせる。


 これが負けん気が強いが自分を責めて傷つけやすいエリザベートのために、クラウドが考え用意していた特訓方法だった。

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