第百十三話 クラウドと黒の魔法使い
クラウドはこちらに来ないエリザベートを見ていた。
エリザベートはなんとなく殺気立っているな。
クラウドは少年時代から長年、戦に行っていたから、ああ、悩んでいるんだなと分かった。
ずっと剣の道にいれば、戦に身をおいてると多かれ少なかれああいう時がくるのだと思った。
どうその殻を破るかは、破ってみて初めてわかる。
いろいろ試すからだ。
一度では上手くいかないことの方が多い。
人に教えを乞うことで破ることもあれば、ちょっとしたコツで突破することもある。
かと言って人の意見ばかりではまた迷ったり。
見えかけたものを失ったり。
せっかく掴みかけてるのに惑わされたり。
悩みの渦中にいるときは、なかなか道が見えづらかったりする。
エリザベートにはどう接するべきかな? と、将軍時代のくせでクラウドは思案していた。
そこに欠伸をしながら黒の魔法使いランドルフがけだるげに海岸に来た。
クラウドのところに。
それからランドルフはクラウドの横に立ち、チラリとエリザベートを見た。
「くっくっくっ……。エリザベートったらさあ。……荒れてるねえ、あれは」
にんまりとした顔つきでランドルフは一言放った。
――この男は鋭く侮れない。
クラウドはランドルフをそう見ている。




