第百十話 ルビアス王子とクラウド
「ただいま」
エリザベートがララの農園から帰るとクラウドとルビアス王子がいなかった。
黒の魔法使いランドルフと聖女アリアにダンバは、スヤスヤとまだ寝ていた。
聖獣達もまだぐっすりと眠っている。
(まだ朝は早いから、みんなを寝かしておこう)
聖獣ジスは水浴びをするといって出掛けた。
そこでエリザベートは朝の鍛錬がまだだったので一人、波打ち際に向かった。
ここ、オワイ島にいる時は、エリザベートがいつも訪れるお気に入りの場所だった。
……声がする。
気迫と、鋭い気力の込もった声だ。
クラウドとルビアス王子が二人で訓練している。
不思議なのは二人が楽しそうに見えることだ。表情は笑ってなどいないのだけれど。
クラウドとルビアスの二人が、先生と弟子のような感じにエリザベートには見えた。
ルビアスは師を素直に仰ぐ潔さがあった。
初めは反発していたかもしれないけれど、クラウドも熱心に指導してるように見える。
案外と二人は良い相性のコンビかもしれない。
エリザベートは寄ることはせずに遠目から、二人の特訓の様子をしばらく眺めていた。
やがて全体像よりも、二人の繰り出す剣さばきをじいっと真剣に観察していた。
二人の強さの秘密、優れた部分を知るために。