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第百六話 オムライス

「エリザベート」


 その声に起きた。

 エリザベートは、ハッとして見渡す。


「クラウド……?」


 ここは、……私のうちだ。

 そうだ。帰って来たんだったわ。

 みんなが、仲間になったみんながいる。

 エリザベートはとたんに嬉しくなった。


 ――いい匂いがしてる。

 野菜や焼いた卵かな?


「エリザベート。起きたか?」 


 横にクラウドが立っていて、エリザベートは心が飛び上がるほどドキリとした。


「あっ、うん。私、寝てたんだ?」


 エリザベートはクラウドに恥ずかしくて目を合わせられなくてどぎまぎしながら答えた。


 キスしたことが不意に蘇ってしまう。


「ああ。イビキかいてたぞ」

「うそっ」


 恥ずかしい。

 一瞬でエリザベートは顔が赤くなった。


「はははっ。冗談だ」


 クラウドはエリザベートの反応が面白くて可愛くて笑った。


「エリザベートをからかうなよ、クラウド。エリザベートの寝姿は綺麗だったろ? うん、健やかで美しかった。……まるで天使か女神かと思ったよ」


 ルビアス王子がすかさず援護してくれるも、なんだかくすぐったい感じがしてますます恥ずかしくなった。


「ああ。たしかにな」

「もっ、もう、良いよ、クラウド、ルビアス。恥ずかしいんですけど!」


 エリザベートはこんなんで一緒に野宿するときが来たらどうするのよと思ってる。

 

 黒の魔法使いランドルフも目を覚ました。


(――なんだ。な〜んだ、みんなずいぶん仲がいいんだな)


 ランドルフは少し胸がチクリとした。うらやましくて。

 あーあ、ボクはいつでも入れてもらえないんだな。

 ランドルフに拗ねた気持ちがもたげ上げた時。

 先に眠りから覚めていた聖女アリアがそんなランドルフに声をかけてきた。


「私、ランドルフさんがいてくれて良かったです。助かりました」

「えっ?」


 ランドルフは目をぱちくりした。


「こんな奴が役に立ったのか? アリア」


 聖獣ジスが睨んでくる。

 いつまでもボクを恨んでいるんだこの犬は。


「ええ。もちろんです。ランドルフさんが仲間になってくれたから私魔法が上達してます。嬉しいですわ」

「ねえ、君って……」

「はい? なんですか? ランドルフさん」

「あっ、いや。なんでもないや」


 ……アリアって。

 うんっ、いいっ!

 ああ、すごく可愛い。

 すっごく可愛いよ。

 笑顔が屈託のない、純粋で明るくて。

 アリア……。

 うわあっ、輝いてるよ。

 一点の黒の翳りのない、純白さ。

 ちょっと人とズレた感じがまたいい。


(――これはマズイぞ。ボクはこの聖女に恋したかもしれない)


 色恋沙汰いろこいざたに鋭いランドルフは自分の心に芽生えた感情モノの名前にすぐ気がついた。


(恋だ。これは恋に違いない。ボクはアリアを……好きだ。ああ、マズイな。これって……さ。アリアにボクは恋におちた)


 まだソファに座るランドルフの前でニコリと立って笑うアリアに、ランドルフはキュンっと胸を高鳴らせていた。



 クラウドが出来たての料理を並べた。

 みんなが席につく。

 ララがくれたテーブルはジスと二人じゃ大きかったけど、こうしてみんなで座ると小さく見える。


「オムライスだ。美味いぞ」

 エリザベートが見たことのない料理だった。

 なにかが黄色いほわほわの卵で包まれている。


「わあ。美味しそう」

「いただきます」


 あちこちから声が上がった。


 オムライスかあ。

 本当に美味しそう。

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