第百四話 祖父ローリングの背中
開けっ放しの窓から、とても気持ちのいい夜風が入ってくる。
一年中夏の陽気のオワイには、故郷ランドン公国のような四季はない。
ほぼ夏だ。
爽やかな湿気が少ない過ごしやすい夏だ。風がそうさせるのかな。
夏の陽気でも、過ごしやすい。
夜は寒くはならないが、少しだけ涼しくなる。
虫の音が聞こえる。なんていう虫かは分からないけど。
素敵な音色の調べだ。
夜だけ聞こえてる。
エリザベートは料理をする男たちの背中を見ていた。
手伝うと言っていたのに「俺はシェフだから」とか「エリザベートはまだ完全に回復してないかもしれない」とか、ルビアス王子もクラウドも私に気を使ってくれる。
あと「炊事場はこれ以上は狭い」って。
そうだよね。
クラウドとルビアス王子の仲がいいのか悪いのか分からない掛け合いと、二人の背中を見つめているうちに、エリザベートもテーブル席に座りながら、うとうととし始め、いつの間にか眠りに落ちていた。
ああ、二人の背中はおじいちゃんに似てるのかな?
料理を頑張る不器用なおじいちゃんの背中を思い出す。
トロリと睡魔はエリザベートを包み込む。