第九話 聖獣発見!
「俺には声が聞こえるんだ」
「声?」
ルビアス王子はたいへん良い香りのお茶を淹れてくれた。
「これは?」
「リョクチャと言うらしい。遠い遠い東の国の飲み物だ」
「薄い緑色ね。美しいわ」
すすめられるまま工房の粗末な椅子に座ったカトリーヌの横顔を見て、ルビアス王子はドキリとする。
「ん。美味しいわ。こんな飲み物は飲んだことがないわ」
「そうだろ? 兄上たちにはこのさわやかな美味さが分からないみたいなんだよなぁ」
カトリーヌがルビアス王子と打ち解け始めた感じに見えたので、慌ててジスが尻尾をブンブン振り回した。
「ああ。それで。
声が聞こえるってどんな声ですか?」
「姿なきものの声が君の場所をささやくんだ。
【漆黒の勇者エリザベートは聖剣と共に。エリザベートはオワイ島にいる】と」
「なんで私だと」
じいっとルビアス王子はカトリーヌを見た。
(ひゃー。そんなに見ないで)
内心恥ずかしくて冷や汗ものだ。
「瞳だよ」
「瞳?」
「君ほど強い意志の輝きをもった瞳の人はいない。君にはなにか大きい宿命のようなものを感じて。
背負っているものがある気がしたんだ」
「なんだ。ヘッポコ王子なわりには分かってんじゃんか」
ジスがけなしながらほめる。
「口が悪いな。聖獣くん」
「ふんっ」
「声」
それって。
(私がジスに会った時と一緒だ)
カトリーヌが考えこんでいると部屋の空間がピリリと鳴った。
「いい加減に出て来たらどうだ?」
ジスが空中を睨むと。
ボォンッ!
小さな爆発音がして火に包まれた可愛らしい鳥が現れた。
「うわっ!?」
ルビアス王子は椅子から転げ落ちた。