オカルト研究部(1)
玲子は呪詛使いのかなえの監視役になる。玲子の従兄の武雄も同じクラスに編入されると玲子はボッチ生活を満喫できない。
鴨川洋子は、前々から氷室玲子に興味があった。見た目は人嫌いに見えるが妙に他人を心配している時もある。なによりも彼女は、オカルトが好きそうだ。洋子はゆっくりと彼女に近づく。
いつものように教室の机でぼんやりとしていると「ヤッホー、玲子さん」いきなり声をかけられてビックっとなる。普段から会話をしない人間には対話は怖い。どんな理由で挨拶されたのかが判らない。私がゆっくりと目で相手を見ると、メガネをかけた同級生だった。ただし名前は知らない。「何?」言葉は少なめにするのは、どう会話していいのか判らないからだ。いきなり相手の容姿を見て「今日はイエベなの?似合ってる、かわいいわ」とか返せない。
「あのね、お願いがあるの」メガネの少女は、私の力を知っているのだろう。私は気味の悪い娘として敬遠されがちだ。でもその手の話なら得意だ。「どんな状況なの?教えてくれる」私は彼女を正面から見ると、やけに嬉しそうだ。よほど困っていると予想した。メガネ少女は「オカルト研究部に入部してくれない?」両手を合わせて片目をつむる。
「……」勧誘?なのだろうが、オカルト研究部とは何をする部なのか、イメージが出来なかった。「部活動はあまりしないのよ…」武雄とのバイトもあるし、蛇神を召喚できて呪術を使えるかなえの監視もある。そう思うといそがしい。「部員が足りなくてお願いします」彼女は頭を下げる。さすがに無下に断るのがツライし教室中の人間が見ている。「ちょっとまって」私は彼女の腕を取ると廊下に出た。
「えーっと名前はなんだっけ?」メガネっ娘は悲しそうに「鴨川洋子です」「鴨川さんね」「洋子でいいです」「……じゃあ洋子」なんか背中がぞくぞくしてきた。「私もやることがあるけど、幽霊部員ならかまわない」と伝えると洋子は手を小さく叩いて喜ぶ。「玲子 なんか楽しそうね」かなえが教室から出てくる。「なにがあったの?」舞子もついでに出てくる。「そうだ、みなさんも部室に来てください」洋子は嬉しそうに放課後の約束を取る。
写真部の敬一には悪いが、今日はオカルト研究部に全員参加する事になる。部室と言っても正式ではなくて仮の部活動で使ってない教室を利用する。空き教室は雑然としていて長机やパイプ椅子で埋まっていた。「部活動の内容は、これです」会議で使うホワイトボードに何やら書いてある。【幽霊を探せ】【UFOの居そうな地域】【タヌキは化かすのか】なるほど、世間一般じゃない事を調べたいらしい。かなえが「どうやって探すの?」と幽霊の部分を指さす。「廃墟探索とかどうですか?」洋子は嬉しそうだ。
舞子も興奮して「幽霊の写真とか撮れるといいね」と積極に話題に参加する。私はそれをぼんやり見ながら、見えていない人の方が幸せに感じていた。ガラガラと扉が開く。武雄が顔を出す。「ここに居たのか」私を見ると隣に座る。「どんな集まりだ?」武雄は私に顔を近づけるとひそひそと聴いてきた。こんなに周囲に人が居るんだから、声をひそめる必要が無い。「ちょっと 近い」私は武雄の肩を押した。
皆が私を見ていた。「何?」ちょっとムっとして返す。「別に」かなえが興味なさそうに自分の爪を見る。舞子が眉をひそめる。洋子はキラキラした目で私を見ると、「そうだ、占いをしましょう」と手をパンと音を立てて叩く。立ち上がると、ロッカーからごそごそ何かを持ってくる。
続く