婚約破棄された私は恋愛結婚したい!!
久しぶりの投稿です!!少し雑なところもあるかもしれないのですが、楽しんでいただけたら嬉しいです!
貴族は恋愛結婚なんて望めない。でも、私はずっと恋愛結婚したいと思っていた。まぁ、今の私には関係ないけど。だって好きになった人が婚約者だもの!
そう思っていた、今までは……。
「え……今、なんとおっしゃって……?」
定期的に行っている婚約者とのお茶会の中、唐突に告げられた言葉で私の頭は停止した。
「アデル、婚約破棄しよう」
もう一度同じ言葉を告げられ、なんとか意味を理解しようとする。
「なん……で、そんなこと……」
「すまない、好きな女性ができたんだ。君とは結婚できない」
息を呑むとヒュッと声がこぼれでる。
私と婚約破棄する?理由は好きな女性ができたから?それなら私は彼がその女性を愛する前からあなたのことを愛していたのに…。なんで、なんでなの⁉︎
真っ黒な感情が心の中に湧き上がってくる。
「あなたは私と婚約破棄したいのですね……」
急に出てきた女に私の愛する人を奪われた。
私の方があなたのことを愛していたのに。
私の方が先に出会っていたのに。
私の方があなたの隣に相応しいのに。
私の方が……。
そんな言葉をグッと押し込めて両手を胸の前で握る。
「わかりました」
「本当か⁉︎ありがとう!」
そういうと今まで見たことがないほどの満面の笑みを彼は浮かべた。
あぁ、そんなに彼女のことが好きなのね。
彼のしたことは許せない。でも、私は彼以上に人を愛するということを知っているはずだ。だからこそ、婚約破棄しようという彼の言葉を無視するわけにはいかなかった。恋愛は決して早い者勝ちではないのだから。
なにより、愛する人が幸せになってもらうことこそ私の幸せなのだから。
彼は私の返事を確認するやいなや私に一瞥も寄越さずにすぐに私の部屋を出ていった。
所詮私は彼の婚約者というだけだったのね。彼からしたら婚約者は私ではなくともよかったのだろう。
「私はあなたじゃなきゃダメだったのですけどね……」
伊達に何年も一緒にいるわけではないのだから、私の元婚約者が違う女性に惹かれているのは感じていた。彼が愛している女性に釘をさしにいこうか、と思ったことは何度もあった。だが恋はその程度じゃ気持ちなど変わらないことなどわかっていたし、何よりそんなことが出来なかった。それは同じく恋をする自分も貶めることと同意義なのだから。
「私、どうしたらよかったのかしら?」
私しかいない部屋で答えなど返ってくるはずもなく……。
「そんなんどーしよもないだろ」
「っ⁉︎」
バッと後ろを振り向くと開けっぱなしだった窓から真っ黒の瞳がこちらを見ていた。
「毎日毎日アデルとあの男のうふふあははの声が聞こえたと思ったらもう婚約破棄かよ」
サラリと髪を振り、こちらに顔を見せる。
「ロウ!あなたなんでここに……」
「俺の屋敷の窓からこのベランダに飛んできただけだけど?」
ロウの後ろを見るとロウのほうの屋敷の窓も開け放たれていた。
軽い動きでロウはこちらの部屋に入ってくるとどしりとソファに座り、用意されているクッキーを食べ始める。
「お、案外うまいな。これ、どこのだ?」
「それは……あの人のために特注で取り寄せたものよ。……なによ、笑いたいなら笑えば?つくして婚約破棄されたアホだってね」
するとロウは私のことをじーっと見つめ、視線を逸らすとまたクッキーを食べ始める。
何よ、こいつ。
憎らしいくらい顔が整っている彼は私の幼なじみだ。小さい頃から隣の屋敷に住んでいるロウとは交流があり、最近はあっていなかったものの仲は相変わらずである。
「というか、ロウ、未婚の女性の部屋に入っていいのかしら?見つかったら大変よ」
「だーいじょうぶだって。それに、もしみっかっても両方婚約者もいないんだし、何の問題もないだろ?」
「それは……そうだけど…てか、あなた早く婚約者作りなさいよ。その顔ならたっくさんくるんでしょ?縁談とか」
「まぁね。でも……」
ニヤリとロウは笑って私に近づく。
「好きでもないやつと婚約なんてしたくないだろ?アデルならわかるよな?」
グッと言葉に詰まった私を一瞥し、ふぅとロウは息を吐き出す。
「まぁ、なかなかいないわけよ。俺の心を射止めるやつは」
あんたは望みが高すぎるだけでしょ。
「で、そう言うアデルは新しい婚約者どうすんの?」
「まぁ、一度婚約破棄された私をもらってくれる人なんていないだろうし……お父様が選んでくださったかたにするわ」
「はぁ⁉︎」
突然のロウの大声に私は思わず身をすくめる。せっかくのイケメン顔を怒りで真っ赤にしながらロウは私の肩をガシッと掴んだ。
「アデル、お前はそれでいいのか⁉︎変なやつに嫁がなきゃいけないかもなんだぞ⁉︎恋愛結婚はどうした!夢なんだろ⁉︎」
「別にいいわよ。もう、諦めたわ」
いや、諦めたんじゃなくて諦めるしかないんだ。もう、私をもらってくれる人なんていない。それは覆しようがない事実なのだから。
「というか、婚約破棄したのはお前のあの元婚約者の責任だろ!それを前面に押し出せばアデルが問題で婚約破棄されたわけじゃないってみんなわかるはず……」
「えぇ。でも、彼に責任を負わせたくはないわ。彼には幸せになってほしいもの」
「アデル、お前何言ってるのかわかってるのか⁉︎」
グッとこちらを睨みつけるロウに負けず私も睨みつける。
「わかってるわ!自分でもこれがバカバカしいことくらい。でも、だからって彼のことを恨めない!」
睨み合いが続き、スッと先に目を逸らしたのはロウだった。悲しそうに目を伏せるとポツリポツリと話す。
「アデルの言いたいことはわかった。アデルが覚悟してることも。でも、アデル、お前は俺にとって、大切な存在なんだ。だから、俺はアデルに傷ついて欲しくない。それはわかってほしい」
真剣な瞳で見つめられ私は少し嬉しく思いながら頷く。
「……わかったわ。でもロウ、私だってあなたに幸せになって欲しいのは一緒よ?だから、あなたもいい婚約者を見つけていい人生を歩んでほしいの。そのためならいくらでも私は協力するわ」
憎いところも多いけれど、彼は私にとって唯一無二の存在だ。いつも支えてくれて、励ましてくれて、相談に乗ってくれて、ときには私が励まして……そんな彼との時間は宝物だ。だから、彼には私よりも幸せになってほしい。
「いくらでも、協力?でも、俺に協力なんてしてたらアデルの夢が叶わない時が出てくるかもしれないんだぞ?」
何を言っているのかはよくわからないけど私が返す答えはひとつだ。
「それでもいいわ。だって私、これ以上なにか願う気はないんですもの。このままだったら私に未来はないわ。そのくらい、婚約破棄の鎖は強いのよ」
私が嫁がされるところは多分だけどそうとうやばいところだろう。そんなところで願いを叶えるだなんて無理な話。そのくらいならロウの幸せのために生きてみるのも面白いかもしれない。
「……アデル、なんでも協力してくれるのか?」
「えぇ。なんでもOKよ」
チラリとロウの様子を見てみるが彼は俯いていて顔が見えない。
「それが、ロウの幸せだというのならいいわよ」
「アデル」
唐突に名前を呼ばれて驚きながらもロウの言葉を待つ。ロウは綺麗な黒の瞳をこちらに向ける。その瞳に射抜かれ私は動くことすらできなかった。数十秒、いや実際は数秒かもしれない時間が流れ、ロウが口を開く。
「アデル」
「……えぇ、何かしら?」
私も心を決めてロウを見つめ返す。ふぅと息を吐き輝く金髪を揺らすとロウは告げる。
「俺と婚約してくれ」
……。
「ふえっ⁉︎」
何を言われても大丈夫なように心は落ち着かせていたのだが、あまりにも、衝撃的な、予期しなかった事態に腑抜けた声が出てしまった。
「え、あの、ロウ?誰と婚約するのかしら?」
「もちろんアデルだ」
「何のために?」
「好きだからだ」
「……っ⁉︎えっ、まっ、えっ?」
深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着かせると私は聞く。
「い、いつから、いつから好きだったの」
「まぁ、アデルが元婚約者と婚約する前から少なくとも好きだった」
「でも、私はあなたのことを」
「あぁ、アデルが別に俺のことを恋愛対象として見てないことくらいわかってる。だからアデルには申し訳ないと思う。婚約してほしいだなんて俺の自己満足だ」
ドクドクと心臓が跳ね、音が鼓膜を破りそうだ。
「だけど、アデルが特に婚約したいやつがいないのなら俺と……」
その言葉で一気に私は現実にもどった。
あぁ、そうだ。私は婚約破棄された身。もし、ロウが私と婚約すればロウに対しての見方が変わってしまうだろう。もちろん、悪い方へと。
「ロウ、あなたは私と婚約すべきではないわ。私はあなたにとって重荷にしかならないもの」
「……それでも!」
「ロウが優しいのはわかってる。でも、だからってここまで私に優しくしなくてもいいの」
ロウが私を好きだなんて嘘だ。きっと私をかわいそうに思って婚約しようと言ってくれるんだろう。
「アデル……お前やっぱバカだな」
「は?……それはどーゆうことかしら?」
ニコニコと微笑みながらロウに迫る。すると、ふんっと鼻でロウは笑って言う。
「好きだとかなんだとかもういい。アデルはバカだから直球でも伝わんないらしいしな。俺らしく言わせてもらう。アデル、俺と婚約しろ」
「なによ、それ!別にあなたの指示に従う理由なんて私にはないわ」
「あぁ、そうだ。でも、考えてみろよ。もうお前はいい縁談を望めない。だけど俺と婚約すればどうだ?いいってこともないかもしれないが悪くもないだろ?一番無難だと思わないか?」
「……えぇ、そうよ。たしかに今の時点ではあなたと婚約するのが一番いい選択だわ。でも、だからって……」
「はい、婚約成立!」
はい?
「私まだ一度も了承なんて」
「アデル、本当にバカだな。あのなぁ、俺に気なんて使わなくていいんだよ。アデルが俺に幸せになってほしいなら俺と婚約しろ、ただそれだけだ。大丈夫!アデルのこともしっかり幸せにするから。一石二鳥だろ?」
そう告げたロウは憎らしいくらいカッコいい。ロウは最後の一個のクッキーを頬張ると話をつづける。
「あ、言っとくけどアデルのことを好きっていうのは本当だから。それに、アデルの夢は叶えるつもりだ。結婚するまでにはアデルは俺を好きになる!いや、そうさせる!ほら、れっきとした恋愛結婚になるだろ?」
ポンポンと進んでいく話に思わず私はポカンと口を開けながら考える。
そうだったわ。昔っからロウは憎らしいけど、いつも優しさの裏返しだったわね……。
「……ばっかじゃないの?」
私がそう言うとロウは二カリと笑った。そんなロウの笑みにつられて私も微笑む。
小さい頃から私はずっとロウとのこんな関係が好きだったのよね。あら?もしかして、私って昔からロウのことが……。
ロウは私が笑ったのを確認すると軽い身のこなしで隣の屋敷に帰っていった。
いつのまにか元婚約者のことなんて私の頭からは消えていた。今はただただ……。
「ありがとう、ロウ」
そう告げた私の心はロウでいっぱいだった。
二人の夢が叶う日はそう遠くはない
完
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