Ⅲ 旅立ち
何か長くなりましたね、自分でも驚きです。しかもこれ、40分で書いたんやぞ?(まぁ本当に書いてる人に比べたら雀の涙ほどだとは思うんですけど)
主に説明回になりそう。誤字脱字あったら教えてください。
……1つ、半年くらい前からずっと疑問に思っていたことがあった。
だけど相手が死神なもんでなかなか試すことが出来ずにいた。
でも……
それも今日で分かる。
今、”自分”に使える武器は少ない。
使える、使えないで言ったらスキルの補正のおかげである程度はマシになっている。
それでも、武器が武器とも言えないような粗末なものでは余程その技に卓越した者でもない限り立派な得物を持っている相手に勝つことは難しいだろう。
そして自分は技に卓越した訳でもなし、でもって相手は立派な大鎌を持っている。
このままじゃ勝てない。
ならばどうするか。
自分だけの魔法を見つければいい。
なぜここで魔法かと言うと、はっきりいって自分は頭も良くないし、武器も上手く使えるわけじゃない。
更に、ある日、ファンタジーということで魔法を使おうとした時に気がついた。
自分には魔法を武器として扱うことは出来ないと。
どういうことか。
形のある魔法を作ることが出来なかったのだ。
魔法を生み出すことはできる。しかし、それを飛ばしたり、得物のように持って使ったりが出来なかった。
目の前が真っ暗になった。こんなんで死神に勝てるのかと。
だから”自分”は視点を変えた。
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「……やっぱりいるなぁ……森の出口は目の前なのに……」
今、”自分”は森の切れる場所。つまり、森ではない所に行こうとした。けど、やっぱりあいつがいる。
ちょっと怖いな……と思ったけどしょうがないか……こっちはこれが初戦闘なんだし……
今までのは狩り、命の危機はあれど互いにただ生きるためにやることとは違っていた。
それでも変わらないことがある。
それは、先制。
先にことを上手く運ぶことが出来ればその後の展開も場合によるが良いものとなることが多い。
でも……こいつにそれはやらない。
「待たせたね、最初から手加減する気は無いから、よろしくね」
やつは得物を構える。”自分”もこの1年、ずっと振り続けてきた刀を構える。
不自然な程に辺りには音がなくなってく。
目の前の相手しか感じなくなっていく。
まるで暗闇。まだ時間上、明るいはずなのに、”自分”の視界には奴しか入らない。
と、風が吹いた。葉擦れの音、そして飛び去っていく鳥たち。
瞬間、奴が動く。
持つ大鎌にしては機敏な動きでこちらを仕留めにかかる。
……まだ
奴は鎌を振り上げる
……魔力を練る
「……エンチャント」
奴は鎌を振り下ろす
瞬間
「風足ステップ」
消えた。
そして
「雷帝・鎌鼬」
チィンという音が鳴り響く。
”自分”が刀を鞘に入れた音。
瞬間、轟音。
雷がその場を横切った。
それを食らった奴は……
「……ナゼハズシタ」
手に持つ柄だけとなった鎌を見下げ、そう呟いた。
「君、多分この体の持ち主と何かしら縁があるよね?じゃあ殺したくないかな」
思えばおかしかった。
こいつはどこに行っても現れる。
しかしこいつは一体しかいないように見える。
つまりこちらの行動を読んでいる。
ではなぜ、拠点に来ないのか。
なぜ、狩りの最中に襲われることは無いのか。
なぜ、”彼女”は狙われなかったのか。
手を組んでる。とまでは思わなかったが、今の反応だと何かしらあるな?
「ワレハソナタヲコロソウトシタ、ソレデモカ?」
「殺そうとしてんならもうとっくの昔に殺されてるでしょ」
大方”自分”を試そうとしたんだろうなぁ……
「合格?」
「……ソウ……だナ、ココいチ年、そなたはガンバってキタ、ソレを見届けさせて貰ったからな、それならばその体を託せる」
ちょっと待て。
「なんか言葉が流暢になってない?」
「それはそなたがその”目”に慣れてきただけだろう?」
「目?」
そういえばなんかステータスに知らないのがあったね、あれかな?
「あの目は元々彼女が持っていたものだ。どうやらスキルは魂に依存するようだが、目は肉体の方に依存していたらしいな?おかげでそなたは我を見ることができるようになっている」
「目がなかったら見えない?」
「元々彼女はその目のせいで異端児とされていたくらいだからな」
えぇ……なんか厄介そう……
「さて、そなたはこの森から出る権利を得ることが出来たのだが、どうするつもりだ?復讐を未だ求めるのか?」
復讐?なんだっけ……あぁ、あれか。
「……なんでそれ知ってるの?」
「彼女から聞いた。どうやらそなたは魂の姿でずっとそう呟いていたらしいぞ」
「何それ怖い」
復讐、復讐ねぇ……理由が理由だし……
「うん、そうだね、復讐か。それをじゃあ、旅の目標としようかな」
「何故だ?」
「友達を助けたい。ただそれだけだよ」
あのクソ王、そしてそれに従ってる奴らは潰してやりたいなと思ってるしね。
「……にしては殺意が薄いな?」
「アッハハ……まぁ確かにそうかもね……多分さ、殺すとかそんな方法じゃなくてね、もっと別の方法が無いかなって思ってるんだよね」
「ほぅ?何か思いついてるのか?」
「いや、今は特に……でも、下手に殺すのは不味いでしょ。いつかはこの体を彼女に返さないといけないのにさ」
「………返してくれるのか、その体を、奪わずに……」
「?……当たり前じゃん、借りたものは返さないと」
「皆が皆、そなたのような訳では無いのだがな……」
あ、何か闇深そ、聞かないようにしとくか。
「そういえば、先程は一体何をしたのだ?我も何をされたのか理解出来なんだ」
「ん?主に雷魔法で切っただけだよ?」
「……」
おっと、訳が分からないみたいな顔で見られてもね。
「そんな目で見ないでよ、なんでできるようになったのかは疑問に思ってるよ」
「では一体?」
「魔力がさ?何か多くもなく少なくもなくくらいな感じで、一応この刀と合わせた時、雷が1番良かったんだけど……」
「まずその刀と合わせるとはどういうことだ?」
えっ……まずそこから?意外とこの技って希少?
「エンチャントってスキルがあって、それで自分に関するものに魔法を上乗せできる感じだね」
「何故魔法を攻撃として使わん」
「魔法に形をつけることが出来ないんだよね……だから自分か自分に触れてるものにしか魔法をつけるということしかできなくて……」
「……なるほど?」
「で、雷魔法をずっと使うと魔力の消費が激しくて……だから、比較的魔力の消費も少なくて使い道も安定する風魔法でスタートダッシュ、そこからは雷魔法を足に着けて爆発的ダッシュ。からの刀に魔力を付与しての一閃て感じ」
「よし、わかった、何もわからないことがな」
えぇ~……
「んじゃ、そろそろ行ってもいいかな?」
「待て、そなたにこれを渡そう」
言うと死神はなんか黒い球体……なんか禍々しくない?を生み出してこちらに飛ばす……体に入ってきたけど大丈夫なの?これ。
「安心せよ、その力は守り、そなたに危機が迫れば、我が力が守ってくれる」
へぇ、便利。
「最後にひとつ、我が名はベンディアス・ロードニルと言う。そなたの名前は?」
……ちょっと名前長いな……ニルさんでいっか。
名前……名前ねぇ……
ぶっちゃけ外で活動するようになったら誰かしらと交流することになるだろうし、名前は重要、そして、もう”俺”は死んでいるし”彼女”でもない。
となれば、だ。
「”僕”の名前は、零、ここからどうなってくか、自分でも分からない存在だよ」
「零、か、いい名前だな……そなたの旅が良きものとなることを祈らせて貰おう」
「ありがとね」
これでこの森での生活は終わる。ここから、新しい日常が始まっていくんだ。
とりあえず……
……お金とかどうしよう?
これで第0章は終わりです。次回から第一章!
因みに零は傍から見たら性別不詳の僕っ子になります(笑)