9日目 あの、ここは廃村ですけど?
「ごめんくださーい」
そんな声で俺はいつもの寝床で目を覚ました。
昨日に続いてまた来客らしい。
面倒臭いけど立ち上がった俺はそのまま木の柵、いや砦の方に向かっていく。
「何?」
木の門を開けて顔だけを覗かせる。
そこにいたのは黒髪ロングヘアの少女だった。
「こんにちは!」
元気よく挨拶してくれるのでとりあえず返しておく。
「うん」
「ここって何ですか?こんなところに国なんてありましたっけ?」
そう聞いてくる少女。
「何って言われても廃村?」
「へー。廃村なんですねー、って廃村?!!!。でも、凄い砦ですねこんな砦見たことありません」
「あ、うん」
本当は1メートル程度の木の柵を作ろうとしてこうなったんだけどね。
「凄く立派な砦ですので中に王国でも広がってるのかなぁって思いました」
王国かぁ。そんなものは広がってないなぁ。
「で、どうしたの?こんな辺境まで」
「あ、そうそう。私の名前はクロエって言うんです。ダークエルフです。一応」
「うん」
「そ、その今色々ありましてダークエルフの森から来たのです」
彼女がそう言うと後ろに向かって手招きした。
するとゾロゾロとダークエルフがやってくる。
人数は100人くらいだろうか?
「そんな大人数でこんな辺境に何の用で?」
「あの。私達もこの国に入れて欲しいのです」
「国?何処の国?」
「いや、あ、ごめんなさい。村でしたね。ごめんなさい。てっきりこんな素晴らしい砦があるものなので王国だと思いこんでいて」
なんだそういうことか。
「悪いけど王国はないよ。あるのは本当に廃村だから」
そう答えてからさっきの質問に答えることにする。
「廃村でいいのなら全然入れてもいいけど」
「ほ、ほんとですか?!」
「う、うん」
俺がそう答えるとダークエルフの少女は後ろに目をやって手招き。
「みなさーん。いいみたいですよ!中にいれてもらいましょう!」
ゾロゾロ。
ダークエルフの軍団が廃村に入ってきた。
「わー。本当に廃村なんですねー」
「ホントだよ。廃墟しかないよ」
そう答えながら歩く。
「俺はシアン。何時までいるつもりかは知らないけどまぁ、よろしくね」
「よろしくお願いしますねシアンさん」
きっちりと挨拶してくれる彼女。
何処がとは言わないがデカい。
その中身を想像しただけで鼻血を吹き出してぶっ倒れそうだからやめておくが、あと顔が可愛い。
「あら、どうかしましたか?鼻血を出して?」
「ん?あぁ、今日は暑いからさ」
おっといけない。
どうやらクロエのダイナマイトボディに当てられて鼻血を垂れ流していたらしい。
しかし俺もいちいちあれを見ていて興奮して鼻血を出したなどとは言わない。
天気のせいにしておく。
そう、この今も俺を照らしている太陽のせいなのだ、と。
「そうですよね。暑いですよね最近は」
「うんうん。最近暑いからさ。こうくらっときて鼻血がぶー」
「ふふふ、面白い方なんですねシアンさんって」
そう言われるが何とかそういう方面に持っていかなくてはな。
まさかクロエの体見て興奮して鼻血がぶーなんて口が裂けても言えないし。
間違いなく変態扱いされる。
そんなことを思いながら更にそれを見て鼻血を垂れ流していると
「お姉ちゃん。そいつの言ってること全部嘘だから」
と、俺の巧妙な話術を看破する奴がいた。
なんだと?!
振り向くと
「そいつは。お姉ちゃんの体見て興奮してるド変態なだけだよ」
ピンク色の髪の毛をツインテールにしている少女の姿。
どうやら姉ちゃんと呼んでいることから察するに姉妹らしいが。
「えぇ?!シアンさんはそんな人じゃないと思いますけど?!こんな凄い砦の中にいる人なんですよ?!この人も凄いに決まってます!そんなすごい人がそんなことで鼻血を流すわけないでしょう?!」
「お姉ちゃん。人を信じすぎ。姉ちゃん自分の体がどれだけエロいか分かってないよね?」
「え、エロいって!そ、そんなことないですよ!」
否定するクロエだが間違いない。
その体は兵器そのものだと思います。
「そんなことないよ。妹さん。本当にこの照りつける暑さでクラっときて鼻血ぶーなだけだよ」
あくまでそう言っておくが。
ジトーっと俺を見てくる妹。
「そこまで言うなら分かったよ。離れるから」
だが俺は紳士の一面もある。
紳士的に友好的にいこうじゃないか。
それでも俺をいつまでもジトーっと見てくる。
クロエはそんな俺たちを見てオロオロしているが妹の方はやめるつもりがないらしい。
「君、名前は?」
聞いていなかったので聞いておくことにする。
「ナナだよ」
「分かった。ナナちゃんだね」
白状しよう。
俺の中のおっさんが囁いている。
この子の視線は中々いいと。
このまま蔑みの目で見られるのも悪くない、むしろいいと。
だが
「分かった。シアン、意地でも認めないつもりなのね」
俺を呼び捨てにするナナ。
そのまま口を開いた。
「私と決闘して。私が勝てばお姉ちゃんに謝ってもう近付かないで。勿論私たちはこの国からは出ていかないけど」
「は?何だよその条件」
「シアンが勝てば私が謝る。それでいい?」
と訳の分からない決闘を申し込まれていた俺だった。