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6/16

6日目 全力で引きこもることを決意しました

「よし!」


 テイムしたゴブリン達と共に廃村に戻ってきた。

 これからこの廃村を整備しなくちゃならない。

 何たって俺は今日からここで暮らすのだから。


 俺は思っていた。

 今の俺は無職だ。

 なら無職らしくこういう辺境で慎ましく暮らすべきなのだ、と。


 実はというとここに来た時からある程度そうしようかなというふうには思っていた。


「俺はここで生きていくぞ!ここから出ない、絶対にだ」


 という訳で、俺はレナに目を向けた。


「レナはどうする?」

「あ、あの。私は行く場所がなくて、良ければお傍に置いてくれませんか?」

「いいよ」

「い、いいのですか?!」


 驚く彼女。


「何でそんなに驚くの?」

「だだだ、だって!シアン様は物凄く強くて優しくて、そんな方の近くにいられるなんて凄く幸福な事で驚いてしまいました」


 そう言って少し顔を赤くする少女。

 うーん。俺が強い?優しい?


 それは疑問だけど近くにいるのは構わない。

 それにこの先の無職生活。

 俺とドラだけではつまらない。


「とりあえずあの教会を直す」


 俺はテイムしたゴブリン達に指示を出す。


「ギィ」


 返事をしたゴブリン達に俺は材料を渡す。

 そこそこの知能はあるようであの建物の修復くらいは出来そうだ。


 元々俺がやろうと思っていたことだけど運良くゴブリンをテイム出来て良かった。


 肩を回しながら周りを見る。

 時刻はお昼くらいか。


「寝ようかな。俺はやる事ないし。ふぁーあ」

「こ、この時間からですか?!」


 驚くレナ。


「え?うん。だめなの?」

「お、お昼から寝られるんですか?!」

「え、寝れるけど」


 そう答えると不思議そうな顔をするレナ。


「あ、あの普通睡眠って夜にしますよね?それをお昼からするんですか?」

「え?うん?」

「ど、どうやって寝るのですか?!」


 ずいっと俺に身を寄せてくるレナ。


「え、ふ、普通に寝るんだけど?」


 そう言いながら近くにあった瓦礫の上に寝そべる。


「こ、こうやって普通に目を閉じるんだけど」

「そ、それでお昼に寝られるのですか?」

「え、うん」


 そう答えながら思い出していた。

 そう言えば俺はシアンとして生まれてから1度も昼寝をした事がない気がする。


 どれだけ眠くても我慢して夜に寝ていたのを思い出す。

 そしてこの世界ではそれが普通でそもそも昼に寝るという昼寝の概念がないのかもしれない。


 だからレナも戸惑ってるのか。

 俺は前世で昼寝はしたことあるしこれからも幾らでも昼寝のチャンスはあるだろう。

 だから今回は譲ろうか。


「寝てみなよ。周りの警戒は俺がしとくからさ」

「え、よ、宜しいのですか?」

「うん。ちなみに昼に寝ることを昼寝って言うんだけど」

「ひ、昼寝ですか?は、初めて聞きました」


 やはり昼寝の概念がないらしい。

 不思議な話だなぁと思う。


「スッキリするから今日のお昼ダルいなぁって時は昼寝すればいいんだよ」

「し、知りませんでした……こんなすごい物があるなんて……ではお言葉に甘えて」


 そう言って目を閉じるレナ。


「ね、眠れません」

「ゆっくりでいいんだよ」


 そう答えて俺はレナを静かに見守る事にした。

 初めてのお昼寝。無事にいきますように。


 3時間後。起きてきたレナ。


「ふぁー。お、おはようございます」

「おはよう。どう?」

「す、凄くスッキリしています。何かが取れたようなそんな感覚です」

「そうか。ならよかったよ。それがお昼寝ってものだよ」

「こ、これがお昼寝……ですか」


 凄く気持ちよさそうな顔をしているレナ。


「素晴らしい技術ですね。お昼寝というものは」


 技術なのかは分からないけどまぁいいものだね。


「こ、こんな素晴らしいものを知っているなんてシアン様はすごいです!」

「え?そうかな?」


 前世では普通にしていたことだから。

 まさか凄いと言われると思わなかった。


「はい。世界の皆さんが一斉にお昼寝をすればきっとこの世から争いは消えますよ。これは革命です!」

「そ、そこまで言うほどの事なのかなぁ?」

「そうですよ!睡眠というのは夜にするべき事でした。それをお昼にもできる。これを発見したシアン様は素晴らしい人なのですよ!」


 そう言ってくるレナ。

 まさか昼寝くらいでそこまで言われるなんて思わなかった。


 でも昼寝を知らなかったのだから最初はこんな反応を示すのだろうか?

 それにしてもここまで原始的な生活を送っているなら、彼女にはもっと色んな事を教えてあげたくなるなぁ。


 そう思いながら教会の方に目をやった。

 大分形にはなっているようだった。

 ゴブリン達を呼びつける。


「ギィ」

「ご苦労さん。ごめんね。こき使って」


 用意していたものを取り出した。


「これ報酬」


 そう言って俺は今の間に作っていたものを渡す。

 モンスターだったとしても労働には相応しい対価が必要だ。


「ごめんね。これで釣り合うか分からないけど、俺にはこれくらいしか渡せるものがないよ」


 そう言って渡したのはパンケーキだ。

 この世界に来てこんなものは食べたことがない。

 だからゴブリン達も初めて食べると思うんだけど


「ギィ」


 ゴブリン達がパンケーキを食べる。

 それを待って俺は次の指示を出した。


「ここまでありがとう。君たちは君たちの暮らしを送りなよ」


 そう俺は命令して鉱山に返そうとした。

 でも


「こ、これは命令だぞ!」


 ゴブリン達は去らない。


「な、何で?帰らないんだ?帰りたいでしょ?」


 少なくとも俺なら帰る。

 でも、ゴブリン達は命令に従わず帰らない。


 俺は別のジョブになった。


【竜騎士にジョブチェンジしました】


 これで彼らのテイムは解けるふずだ。

 もしかしたら俺たちを襲ってくるかもしれない。


 そう思いながらジョブチェンジした。

 しかし


「ギィ」


 俺たちを襲うどころかゴブリン達は俺に頭を下げた。


「な、何で?!」


 俺は急いでテイマーに戻ってコマンドを見てみた。


───────

・会話

───────


 会話コマンドを押す。

 すると、ゴブリンの言葉が分かるようになった。


「シアン殿。我々をシアン殿の下で引き続き働かせてください」

「え?!」

「我々はシアン殿の下さった食べ物に感激しました。これほど感動したのは初めてでした。こんな美味しく素晴らしいものを作れる人の下で働けることは至極でございます。どうか我々をこれからも使ってください」


 そう言って頭を下げるゴブリン。

 事情は分かった。

 どうやら俺のためにまだまだ働いてくれるらしい。


「分かった。なら、これからもよろしく頼むよ。ゴブリン達。ただし生活する場所は分けさせてもらうよ。人とモンスター。そこは区切りを付けよう」

「感謝しますシアン殿」


 思わぬ労働力が手に入った。


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― 新着の感想 ―
[一言] IQ2ぐらいで読むとちょうどいい
[一言] 三木なずなかとおもったわ
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