3日目 賢者マスター
「ぎゃおー!」
ドォン!
ドラが俺を運んで着地してくれた。
「偉いぞー」
俺はドラの頭を撫でながら背中から降りる。
「くぅーん」
犬みたいな鳴き声で俺にスリスリ顔を寄せてくる。
「可愛いなぁお前なぁ」
そう言いながら歩く。
それにしてもここは何処なんだろうと周囲に目をやった。
村と呼ぶには色々と危ないしそもそも倒壊している建物まである。
どう見ても廃村だった。
「ん?廃墟だよね?あれ」
その中に一際大きな損傷を受けていた建物があった。
屋根はなくて壁も真ん中から上はない。
そんな建物。
「廃村か。分かってたことだけどさ」
そう呟きながら大きな建物を目指して歩きながら思う。
「いい場所だ。ここなら誰も来ないだろうし、なぁ、ドラ。ここで俺と一緒にのんびり暮らそう」
「がう」
「良い奴だなお前」
そう言って笑いながら頭を撫でてやりながら進む。
重い扉を開きながら大きめの建物の中に入った。
「あ?何者だ?」
こんな辺境の廃墟、誰もいないだろうって思って中に入った。
でも
「し、失礼しましたぁ!」
大変!
中には強面のおじさんという先客がいた!
そう言って外に出ようとしたけれど
「もうおせぇぞ、兄ちゃん」
ニヤニヤしながら近付いてくる男。
「タイミングが悪かったな。見られちまったからには兄ちゃんも奴隷にしてやる」
ペロリと舌を出してそう言った男。
お、俺を奴隷にするだって?
その言葉を聞いて奴隷のように扱き使われた前世のことを思い出す。
俺の頭の中は驚く程にクリアになり盾と剣を構えた。
もう二度とあんな体験はごめんだ。
「奴隷?死んでもゴメンだね」
もう、殺るか殺られるか。
この場にはそれしかなくなっていた。
そして俺が殺る側に立たなくてはならない。
奴隷として強制労働なんてまっぴらごめんだからな!
だがすっぴんの俺では戦えない。
よしジョブチェンジだ!
【どのジョブになりますか?】
───────
・ナイト☆☆☆☆☆
→狩人
・竜騎士
・モンク
・召喚士☆☆☆☆☆
───────
いつものウィンドウが現れた。
その中に意外なものを見つけた。
───────
・賢者
───────
よし!これになろう!
元々すっぴんはジョブを切りかえて戦うジョブだ。
【賢者にジョブチェンジしました】
ここで1つ疑問に思った。
俺がジョブチェンジした場合ドラはどうなるんだろう?
そう思っていたら
「あ!消えた!」
当然今の俺は召喚士でもすっぴんでもない。
ドラは消えてしまった。
そうだもんな一応召喚したモンスターだもんな。
そう思った俺だが
「賢者って確か強いんだよな?」
そう呟いていたら
「おいおい!何ごちゃごちゃ言ってんだ!すっぴん野郎がよ!」
突っ込んでくる男。
な、何かないか?!この状況を打開出来るような魔法!
魔法ウィンドウを開いた。
───────
→ホーリー
・フレア
・メテオ
───────
よし!何でもいい!
「ホーリー!」
俺は叫んだ。
すると、発動する魔法。
瞬間、目の前が真っ白になって
「ぐぁぁぁぁぁ!!!!!」
「な、何だ!」
俺は今の魔法を知らない。
なんと言うかあったから使っただけの魔法だった。
ただの光るだけの魔法か?!
そう思って光が止むのを待っていた。
そうしたら
「あれ?」
男は地面に倒れていた。
「眩しすぎて気絶した?」
そう思った。
まぁ、何にせよ都合がいい。
勝手に伸びてくれているんだから。
「よっと」
俺はそう言いながら男を縛り上げた。
勿論自由のままでは困るからね。
なんてことを思いながら歩いているとウィンドウが出てきた。
【賢者のレベルが上がりました。現在2です】
ん?今のでどうやらレベルが1つ上がったらしい。
よし、このまま素振りしようかな?
俺は素振りしながらこの廃村を探索することにした。
勿論、残党が残っているかもしれないからだ。
そうして廃村を1周してみたが軽く見た限り他にはいないようだ。
よし、次はさっきの教会らしき建物に向かってみよう。
そう思った俺は真っ直ぐに調査していなかったあの建物に向かう。
「誰かいませんかー?」
シーン。
帰ってくる言葉はなかった。
「誰もいないのかなー?」
そう思いながら歩いているとガサっと物音がした。
「ん?」
その物音は奥の部屋から聞こえていた。
俺はそっちに足を向けて歩く。
扉を開けて中に入るとそこは小部屋だった。
物置だろうか?そんな小部屋。
その中には
「んー!んー!」
ジタバタと暴れているエルフの少女が1人。
金色の髪は肩で切り揃えられていた、その髪の間からは尖った耳が見える。
どうやらロープを噛まされていて話せないらしい。
「ちょっと待ってね」
俺は顔の後ろで括り付けられていたロープを慎重にナイフで切る。
そうしたら
「う、うえーーーん!!!こ、怖かったですーー!!!」
「わぁっ?!」
少女が抱きついてきてビックリした。
「ど、どうしたの?!」
「こ、怖かったんですー!!!」
ぎゅーっ。
俺にしがみついて来る少女にドキドキしながら離れさせた。
「そ、それは分かったけどさ」
俺が気まずそうにそう言うと
「あっ……//////」
少女も顔を赤くして俯いてしまった。
まぁいいや。
とりあえず名乗っておこう。
「俺はシアン。君は?」
「え?私ですか?私はレナです」
そう名乗ってくれた少女。
そうか、レナか。覚えておこう。
「そ、それよりあの人は?」
赤くしていた顔もすぐに戻してそう聞いてくる少女。
「あの人って?奴隷商人のこと?」
頷くレナ。
「え?そこで倒れたよ?」
「た、倒れたんですか?!」
俺は今あったことをレナに話す。
ホーリーという魔法を使ったら商人が倒れたということだ。
「ホーリーって俺知らないんだけどもしかして気絶させる魔法なのかなぁ?」
そう呟いたら
「え?ホーリーを使えるんですか?」
逆にそう聞いてきた少女。
「え、うん。ホーリーだけど。でも俺が最初に使えた魔法だから大したことないのかなぁ?凄そうな魔法だったけど」
ジョブチェンジをあまりしたことのないジョブで最初から使える魔法はしょぼい魔法だと相場が決まってる。
だから凄そうな魔法に見えて実はしょうもない魔法なんだろうなぁってそう思う。
「え?!ホーリーはSランク魔法ですよ?!そ、それに使えるのは賢者だけで、凄く数が少ないレアなジョブですよね?!しかも神機の一つ魔導書に選ばれる可能性のあるジョブですよね?!」
と、そう叫ぶレナ。
「え?Sランク魔法なの?!」
今度は俺が驚く番だった。
その後俺はホーリーの素振りを行った。
賢者というジョブをマスターした。
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・ナイト☆☆☆☆☆
・狩人
・竜騎士
・モンク
・召喚士☆☆☆☆☆
・賢者☆☆☆☆☆
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どうやらマスターしたジョブには星がつくらしい。
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名前:シアン
ジョブ:すっぴん
レベル:20
固有スキル:ジョブチェンジ
汎用スキル:
・騎士の誇りEX
・召喚士のカリスマEX
・賢者の知恵EX
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・賢者の知恵EX
魔法を使うのに必要な魔力が大幅に減少する。
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