22 罪の代償
「そろそろ出発しようか。準備はいいかな?」
「大丈夫です。いつでもいけます。」
廉は護衛の騎士と荷物の最終確認をしながら返答する。
「では、出発だ!」
廉達はギルドから借りた馬車に乗ってロウグ達を見失わないようについていく。
ちなみに馬の手綱を握っているのは乗馬経験のあるアリンだ。
「ロウグさんってとても気さくな人だったね。」
「私もはじめてみたよ。でも、普通だったら首を切られてたよ。今度から気を付けてね。」
「わ、分かった。」
笑顔で忠告するアリンの瞳の奥が闇を纏っていたので慌てて廉は頷いた。
「ゼヘラザード家の貴族階級は何かしら?」
「彼らは子爵家だね。ゼヘラザード子爵領を統治しているの。」
「だから、今日の目的地はその領主の館ですね。」
京香からの質問にアリンが答え、メイが補足説明をする形になった。
「なるほどね。……ん?」
彼女達の話を傍らで聞いていると蹄の音が聞こえてきた。ふとメイと目が合ったがその大きな耳で彼女も異変を感じ取っていた。
「レンさんも気付きましたか? 盗賊です。」
その音がこちらに向かって来るとその正体は馬車に乗った盗賊だった。
彼らはロウグが乗る馬車の前方で道を塞ぐように止まった。
「おい、止まれ!」
「何の用だ? お前たちに渡す金などないぞ。」
盗賊の頭目らしき者とロウグが睨み合っている間に廉達は馬車を止めて駆け寄ると、頭目の額に青筋が浮かんだ。
「チッ、まだ護衛がいやがったのかよ。でも関係ねぇ。お前らやっちまえ!」
頭目からの合図を皮切りに盗賊達は剣を携えて襲ってきた。
「オラァァァァッ!!」
「おっと!」
廉にかかって来た彼の剣捌きはかなり雑だが一応形になっていて、攻撃をかわすのは楽ではない。
「……でも遅いな。」
「何だと!」
ただ、廉にとっては隙だらけでかわすのは赤子の手をひねるようなものだった。
「死ねや! オラッ!」
「よっと。」
廉の煽るような独り言でプライドを傷つけられた男は怒りに身を任せて斬りかかってくる。
だが、攻撃が当たる寸前で廉に躱されたので勢い余って地面に叩きつけられた。
「ぐッ……!」
「しばらくそこで伸びてろ。」
他の奴らも威勢は良かったが実力で廉達に負けて、地面に伸びていた。
「あとはアンタだけだが、どうする?」
「クソッ……覚えていやがれ! ギャッ!」
捨て台詞を吐いて逃げ出したが、愛の仕掛けた罠に嵌って身動きが取れなくなった。
「これで盗賊はやっつけたな。でも、こいつらどうする?」
「普段なら縛って騎士団に身柄を預けるんだけど、今回はこのまま放置しておこう。」
ここは魔物だらけだしねとアリンは満面の笑みで言った。
▽
その後、盗賊に襲われた以外は特に何もなくゼヘラザード子爵領に到着した。
「護衛ご苦労だった。報酬の金貨二十枚だ。受け取ってくれ。」
ロウグから報酬を貰うと屋敷に来て夕飯を一緒に食べないかと誘われたが、ギルドに戻り依頼の達成報告をする必要があったので断った。
せめて見送りだけはさせてほしいと言われたのでロウグ達と別れの挨拶をしてその場を後にした。
その頃ーー
盗賊達は魔物に追い回されて、食べられそうになったり脅かされたりと散々な目に合っていた。
彼らにとってはまるで今までの悪行を責められた気分であった。
五人組の盗賊は悪いことをすれば自分に返ってくるということを嫌というほど思い知った。
だが彼らは自分達の犯した罪の重さをまだ理解していなかった。




