2 異国の姫
「ここはどこだ?」
光が収まり目を開けて周りを見渡すと知らない建物の中にいた。
目の前には壁を覆うぐらいの大きな壁画があった。壁画には祈る一人の聖女が描かれていて、その美しさに目を奪われそうになった。床は丁寧に扱われているのか光沢が出るほど綺麗な大理石で、天井はドームになっており、そこには女神らしき人が描かれていた。
ーやったわ! 成功だわ!
ーこれで我が国は安泰だ!
声が聞こえて振り返ると周りには廉たちを囲うようにローブを着た人達が立っていて歓喜の声を上げていた。
本当にここはどこなんだよ!
廉は心を落ち着かせるために友達や家族が無事なのか確認しようと周囲を見渡す。驚いた表情の大地に無表情の清志、驚きで腰を抜かしてしまった京香と真衣、とっさに抱きついてきた由依の五人が無事だったので安心した。
今廉たちを囲っている人達はローブを着込んだ魔導士のような服装の女性が六人。その奥に純白のドレスを着た美少女の合計七人の組み合わせのようだ。
ドレスを着た美少女が一歩前に出てきて、一礼してから話し始めた。
「よく来てくださいました勇者様方。私はアルスター王国の第一王女、シャルル・マーヤ・アルスターです。アルスター王国はあなたたちを歓迎します。」
王女様だと!? 彼女のドレスをよく見ると随所に金の装飾が施されていた。肩には紋章があり王女だということはすぐに納得できた。だがアルスター王国という国は知らないし、勇者様ということは僕は異世界に来てしまったのかと廉は思考を巡らす。
「突然連れてこられて理解できないかもしれませんがよく聞いてください。この国は今魔族を率いる魔王によって侵略されています。魔族は全種族の敵です。どうか勇者様のお力で敵を退けていただきたいのです。力などについては詳しく教えて差し上げますのでお願いです勇者様。」
「この国を助けるぞ!」
「魔族なんてやっつけちゃえ!」
「そうだ! そうだ!」
美少女に助けを求められていい気になった男達は自分で考えることもせず勝手に決めてしまった。
「王女様、この世界について教えて頂けませんか。」
すると一人の黒髪の男がマーヤに話しかけた。彼の名は遠藤綾人という。皆が知りたかったことを聞いたので彼の話に耳を傾けている。
「はい。ではお話しましょう。この世界は二つの大陸があります。一つはここエルフィア大陸です。もう一つが魔族が暮らしている魔大陸です。」
「魔族は全種族の敵という認識で合ってますか?」
「はい。ですが、魔族は現在五つの派閥に分かれていて、友好関係にある派閥もあるので全部が敵とは言えないのが事実です。」
話がややこしく魔族も一枚岩じゃないのかと廉は勝手に納得することにした。
「最後に力について教えてください。」
「はい。力とは体力、魔力、知力を合わせたものです。体力は命です。体力がゼロになると死亡します。魔力は魔法を行使するときに必要です。知力は賢さです。力についてはこの水晶で数値化することができます。ですので今から勇者様方には一人ずつこの水晶に触れていただきます。その数値によって武器の適正や、戦い方が決まりますので順番に水晶に手をかざしてください。」
おや? もしかしてこの後鍛えられるのか?
王女様の発言に一抹の不安を覚えたが、気のせいだろう。
マーヤの指示に従い綾人を先頭に皆が並び始めたので廉も列に並ぼうと立ち上がった。