19 狐の獣人 後編
この話には一部暴力的な描写があります。
ギルドに着くと廉達は作戦を実行した。
「アリン。メイさんはどこにいるの。」
「えーっと……あっ、あそこにいた。」
アリンが指した先には受付に並ぶ狐耳の美女の姿があった。
「あの子ねぇ。嫌がらせを受けているようには見えないけど……」
傍目からは、優しそうで他人が気分を害することはしないように見えた。ただの噂ではないかと疑い始めたが、そうは問屋が卸さなかった。
「おい、お前退けよ。邪魔だ!」
後ろに並んでいた髭面の男が彼女を蹴り飛ばしたのだ。
「くっ!」
「なんだよ。文句でもあんのか、なあ!」
キッと男を睨みつけるメイに彼は理不尽にも怒鳴りつけてくる。
「メイちゃん大丈夫?」
「アリン……ありがとう。」
アリンは辛抱たまらずメイに駆け寄った。メイはアリンの顔を確認すると安堵のため息を漏らした。
「あんた、何やってんすか! 順番は守らんといかんでしょう。」
「うるせぇ! ボーっと突っ立ってる奴が悪いんだ。」
言いながら男は拳を振り上げた。廉は防御の体勢をとった......がしかし、拳は飛んでこなかった。
「落ち着けって先輩。こいつは何もしていないでしょう。」
「何!」
通りすがりの冒険者が片手で拳を受け止めたのだ。それだけでも驚きだが、その顔を見て廉はもっと驚くことになる。
「恭作!?」
「そういうお前は廉か? やっぱり生きてたか。俺は信じてたぜ!」
クラスメイトとの再会が嬉しくて、廉は少し舞い上がっていた。
「廉君。恭作の奴、心底心配していたんだ。それこそ二日間徹夜で弓の訓練をしていたぐらいね。」
「栄治もいたのか。通りでお前がおとなしいわけだ。」
「だ~れが狂犬だ! こら!」
「「言ってねぇよ。」」
赤崎恭作と神楽栄治、遠藤綾人それに九条連。この四人を学校内で知らない人はいないだろう。彼らはイケメン四天王と呼ばれており、ちょっとした有名人だ。四人とも生徒会役員だということが人気に拍車をかけたのだろう。逆に美女四天王というのも存在するがそれはまた別の話。
「おい、お前ら何無視してんだ。あ?」
「そこまでにしないか。ラウス! みっともないぞ。」
「レイトさん!?」
無視されて苛立ちを隠せず怒鳴りつけるラウスだったが、全身黒の鎧に身を包み、背中に鎧よりも黒い剣を差した男に制された。
「これには訳があって……」
「お前の言い訳には聞き飽きた。出ていけ。」
「はい……」
この期に及んで、言い訳をしようとするラウスにレイトと呼ばれた男は有無を言わせぬ剣幕で睨み付ける。流石に怖気づいたのかラウスはその場から立ち去った。
「レイト? どっかで聞いたことあるような……」
「バンドのライブ中に失踪したあの椚木玲人さ。よろしくな廉。」
目の前にいる青年が誰なのか自問していると爽やかな笑顔で自己紹介するとレイトは廉に握手を求めた。
「はい。レイトさん。」
「ははっ。そう堅苦しくしなくていいよ。」
緊張の面持ちで握手に応じるとレイトは嬉しそうに笑った。




