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1 プロローグ

 なぜ自分がこんな目に遭うんだ!? 僕は何もしていないのに!


 背後から剣を突き刺され、奈落の底に落下していくれんは行き場のない怒りを噛みしめた。


 痛い。全身のありとあらゆる場所が痛い。


 どうやら全身を強打して、骨が折れたようだ。


 時間が経つほどに痛みが強くなり、息が苦しくて意識が朦朧もうろうとしてくる。


「もう、ダメだ……」


 もう死ぬのか……いやまだ死ぬわけにはいかない。姉達を悲しませてはいけないと廉は激痛に耐える。


 それでも動かない体に苛立ちを覚えながら廉の意識は遠のいていった。




 ▼




 彼の名は九条 廉。桜打第一高校に通う普通の男子高校生である。


 両親は数年前に不慮の事故で亡くなり、現在は廉と双子の京香と五歳離れた姉の真衣の三人で高層マンションで暮らしている。


 京香はとても優しくてとても頼りになる。弟に対して姉弟以上の感情を抱いているが、素っ気ない素振りをしてしまう。真衣は常に廉を甘やかしているが、たまに度が過ぎて京香に怒られることがある。だが、廉自身はスキンシップを好意的に思っていて、尊敬すらしている。


 今は学校で自分の席に座り友達と談笑しているところだ。彼はいつも朝のHR開始三十分前に登校している。ではその友達とやらを紹介しよう。


 一人目は廉の前で携帯ゲームに没頭している男だ。名を山口 大知。愛想が良く人懐こい性格だがオタクだからという理由でクラスメイトから嫌われているので友達は廉だけである。


「大地君、今日もゲームですか。捗りますな。」

「まあね。廉さんのおかげで絶賛どハマり中ですわ。あははっ!」

「お気に召して頂けたようで何より。」


 最近大地は廉が教えたゲームにどハマりし、勉強や食事の時以外は四六時中ゲーム三昧という生活を送っている。


「はぁ。参ったな。」

「どったの? きよちゃん。」

 

 今溜息をついたのは佐川 清志。普段は無口で寡黙な男だ。


「ケモミミ☆ガールズのコンサートチケットが売り切れちゃったんだよ。ああ、レイニャンに会えない。この世の終わりだ。もういっそのこと滅んでしまえ。」

清志きよしさん。地球が滅んだらレイニャンに二度と会えなくなるよ。」

「嫌だぁ! 神様、許してください。」


 だが実は隠れアイドルオタクで好きなアイドルの話になるとうるさいので友達がいない。


「安心しろ同志よ。実は私、コンサートチケットを二枚持っているのだ。我と共に行こう。」


 清志を励まし、コンサートに誘っているのが山本 由依。頭脳明晰でスタイル抜群の腰まで届く黒髪が特徴な美女だが、清志と同じくアイドルオタクで嫌われているので友達はいない。


「おお、同志よ。さすがは、学校一のドルオタ様だ!」


 三人と廉は小学校からの幼馴染である。周りからは誠に不本意ながら変人四人組と呼ばれている。


「ふふっ。褒めても何にも出ないよ。同志くん。」

「由依は今日もご機嫌だな。」


 由依が楽しそうにしていたので廉は微笑みながら見つめた。


「そんなに見つめないで。恥ずかしいよう。」

「由依はかわいいな。」

「廉くんも……かっこいいよ。」


 由依の言葉は最後まで聞き取れなかったので聞き返そうとした。だがそれはHR開始のチャイムと同時に現れた九条・・先生によって妨害された。


「みんな。おはよう。HR始めるから席に着いてね。」


 そう真衣は廉たちのクラスの担任でもあるのだ。


 真衣が教壇に立つと全員が姿勢を正して座りなおした。その次の瞬間、目にも止まらぬ速さで教室のすべての扉がほぼ同時に閉まった。


「何が起きたんだ?」

「ポルターガイストかなぁ?」


 隣で由依が突然の出来事に怯えて廉に抱きついてきた。何人かの生徒が扉や窓を開けようと試みたが一向に開く気配はない。一部の生徒の表情がゆっくりと好奇心から恐怖へと変わっていった。


「どういうこと!?」

「閉じ込められたのかよ!?」


 追い討ちをかけるように床に魔法陣が現れ光を放ち始め、クラス中が混乱に陥った。


「みんな、落ち着いて。」


 真衣が生徒たちを落ち着かせようとしたが混乱状態で彼女の声が耳に入ることはなかった。


 混乱の中、魔法陣が眩いほどに輝き教室から廉を含む生徒30名と真衣が異世界に召喚された。

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