第8話 文化祭終了まであと5時間
いよいよ彼らの文化祭が…幕を開けた。
4月30日。文化祭当日
「おーい、大神。準備できたか」
「準備バッチリ」
「なんか元気無いように見えるけど…大丈夫?」
「だっ、大丈夫大丈夫」
文化祭当日。だが耳川さんはまだ来ない。だから大神颯は元気がない。
大神颯は期待していた。だがトラウマを植え付けられた者は、すぐには立ち直れない。それが人であり、悲しき現実である。
ごめんね。耳川さん。
昼過ぎになり、昼食をとる。
劇は午後からで、それぞれのクラスが一度だけ体育館で披露する。
俺達の番は最後。まだ時間はたっぷりある。
だけどどれだけ時間があろうと意味がない。
そんなとき一通メールが来る。
「耳川さん!?」
耳川さんからのメールだった。
すぐに内容を確認する。
『今日行けなくてゴメン(涙)
でも次の行事は楽しもうね!』
耳川さんは来れない。人生で三度しかない文化祭。
でもたった一度だけ。このクラスでやれるのは一度だけ。
「浅香。しばらく外出てる」
「えっ、なんで?」
俺は浅香の言うことを耳を傾けず、ある人の家に走っていた。
「着いた。はあ」
耳川さんの家に俺は行った。
緊張が止まらない。だけど…だけど……。
「大神くん!?」
「耳川さん……」
「なんで…? 今日文化祭でしょ。行かなくていいの?」
「耳川さんは…行かないの?」
「私は……いい…かな」
耳川さんは怖がっていた。学校に行くことが。
強引に誘うのも違うだろう。でも…このまま学校を嫌いにはなってほしくない。
「文化祭。耳川さんと一緒に行きたい」
かっこいいことなんて言えない。言えたら苦労しない。だからただ自分の思いをぶつけるだけ。
それでも伝わらなかったらそれでいい。
耳川さんは赤面していた。
「い…行ぅ」
「誰だ? ウサギ」
後ろから兄らしき人が現れる。
「学校の…友達」
「速く帰ってもらえ。これから仕事があるだろ」
「仕事?」
「お前は知る必要ないだろうがな。とにかく帰ってもらえ」
「大神くん。またあとで…ね」
耳川さんは…深くお辞儀をして、玄関を閉じる。






