第7話 文化祭まであと1日
俺達は練習し続けた。だが、まだ耳川さんは復活しない。
「おい、大神。耳川さん、何で復活しないの?」
「さあな。あれから連絡がとれない」
耳川さんは風邪を引いている。ただそれでも長すぎる。
明日は楽しみにしていた文化祭。なのに、耳川さんがいないなんて……
「おー、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの」
「遠藤さん。似合ってるじゃん。その衣装」
ちなみに僕がロミオ役で遠藤さんがジュリエット役。
「かわいいだろ。耳川さんが復活したら驚くだろうな。こんなにクラスが団結したのも大神くんのお陰だよ」
「でもみんなの協力が無かったら今頃何も出来てなかった。だから、ありがとう」
「じゃあ練習再開しようか」
「うん」
いよいよ明日が文化祭本番。どのクラスもハイテンション。
だがここに元気の無い青年が一人いた。
「浅香、元気出せって」
「明日が文化祭本番。多分耳川さんは来れない」
こんなに落ち込んでるってことは、好きなのか。
「多分だけどさ、誘拐された学生って耳川さんなんじゃないの。じゃないち風邪で10日以上休むなんておかしいだろ」
「そっ、そうだね」
もしも耳川さんが記憶を失っていないのだとしたら…
もしも強がりを言っていたのだとしたなら……
たった1日の文化祭。
耳川さんはその1日をどう過ごすのだろうか。
どんな想いで文化祭を考えるのだろうか。
僕には分からない。
文化祭。
それは高校生活でたった3回しかない一大イベントである。
そのイベントは時に人を結び、時に人を遠ざける。
だからこそその思い出は誰もが夢を抱いてしまうのだろう。だからこそ彼らには速すぎた。
まだ彼らは仲良くない。
大神は耳川にメールを送る。
"明日は文化祭。絶対に来てね"と。
だから彼らはすれちがう。
だから彼らは結ばれない。
まだ彼らには速いのだ。
文化祭まであと1日……