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すれちがい恋愛  作者: 総督琉
第2章 文化祭
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第5話 文化祭まであと20日

 昨日の誘拐事件があったせいか、先生方はばたついていた。

 そしてその事件の当事者である耳川さんは学校に来ていない。心に深い傷を刻まれたても仕方ないだろう。

 僕はどことなく寂しい空間で悲しみを噛み締めていた。


 朝の会(ホームルーム)で先生の口によって耳川さんは風邪で休みだと聞かされた。クラスの反応から見ても、昨日誘拐されたのが耳川さんだと気付いていないようだった。



 ーー文化祭まであと20日。



 僕は耳川さんが心配で心配で、もやもやした気持ちを抱えながら一日を過ごそうとしていた。

 一緒に楽しみたい。だから文化祭に投票したんだ。それなのに……


「おい、大神」

「何、浅香くん」


 清潔そうに話しかけてきたのはは浅香くん。

 成績優秀、スポーツ万能。おまけに金持ち。そんな絵に描いたような誰もが憧れる人だ。


「一緒に看病しに行かないか」

「えっ」


 今耳川さんは大変な状態だというのに。それを知ってるのは僕だけだし。やめさせるしかない。


「別に、そ、そういうことじゃなくて、単純に心配で。だから、一緒に来てくれ」

「そもそも家の場所、知っているの?」

「教えてもらった。それに看病しに行くって(メッセージ)送ったら返信(いいよ)ってきた。だから……行こ」


 まあ確かにこいつと一番仲良いの俺だしな。でもなー、あんなことが会ってから会うのが少し恥ずかしい。

 でも……


「……行く」

「じゃあ、行こうぜ」


 僕は浅香くんについていく。


「ついたぞ」

「緊張してきた」


 ハイトーンのようなピーの音。少しばかり低いンの音。そしてモスキートトーンのようなポーの音。そして少しばかり低いンの音が響いた。


 耳川さんの家についてすぐ、浅香くん迷わずインターホンを押した。

 決断速すぎ。それよりもなんでお見舞いなんてしようと思ったんだろう。


「はーい」


 家の中からまだ若い女声が聞こえてきた。


「お見舞いに来ました。浅香と申す者です」


 僕達は案内され耳川さんの部屋に入った。

 耳川さんは額に熱さまシートをはられ、辛そうな顔をしていた。


「耳川さん。大丈夫?」

「平気だよ。ちょっと熱がひどいだけ」


 本当に風邪なんだ。


 それから何分か話した後浅香くんは家の都合で帰ることになった。

 耳川さんと二人きり。緊張する。


「耳川さん。昨日のこと、聞いてもいい」

「昨日?あっ、誘拐されたこと知ってるんだね」

「うっ、うん。でも知ってるのは僕だけだから。安心して」

「……実は私、あんまり覚えてないんだ。うっすらとは覚えてる。うっすらとした記憶の中でかっこいい人が助けてくれた。それだけしか覚えてないんだ」


 耳川さんは楽しそうにその出来事を語っていた。


「そう……なんだ」

「でも後から聞いた話によるとね、私を家まで運んでくれたのはその人なんだって。最高にかっこよかった。あの人が私の運命の人(ヒーロー)だって思ったんだ」


 言えないよ。僕が君の運命の人(ヒーロー)だって。だって、君は、とっても笑顔で話してくれているんだから。君は僕を求めていないのだから。


 好きだったよ……耳川さん。


 これが僕の初めての失恋だ……。

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