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すれちがい恋愛  作者: 総督琉
第1章 始まりの青春
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第4話 狼の子

 大神(おおかみ) (はやて)には二つの能力が宿っている。その内の一つは自らは狼になること。彼は狼になると理性を失うことが多々ある。だが今回は意識を保っていた。護りたいという意志が強かったからだ。


「なあ、誘拐犯。今から俺が、お前の心を鍛え直す」

「かっこいいじゃねーか。救世主」


 俺は銃を握る誘拐犯へと怯まずに突っ込んでいった。


「大神くん」

「耳川さん」

「出で来させんなって言っただろ」

「すっ、すいません」


 奥の方から姿を現した耳川さん。誘拐犯は仲間にキレつつ、俺に銃口を向ける。

 その時俺は恐れはしなかった。むしろその時恐れなかった自分に恐れるくらいだ。


「今助けるから待っとけ。俺がお前の運命の人(ヒーロー)だ」

「大神くん」

「黙れ。お前ら、撃て」


 リーダーらしき男がそう言うと、一斉に弾丸が俺を襲う。

 俺は駆ける。壁を走り、天井を走り、宙を舞う。そして蹴り、拳、と誘拐犯を次々に気絶させていく。銃弾を紙一重で避け、蹴りを入れて気絶させる。そしてあと一人。


「なぜそこまでする。なんでお前は命を懸ける。たかが女一人の命。その為だけにここに来たのか」

「惚れた女の為ならな、俺は命なんぞいくらだって懸けられる。…だから、命を懸けて、護る。お前を倒して」


 俺は最後の一人へと必死に駆けていた。


「いいよな。力を持って生まれてきた奴は。それだけで人生勝ち組じゃねーか。俺はそれが(にく)くてたまらねんだよ」

「だからって……」

「お前に分かるか。何の取り柄もなく生まれてきた俺の苦労を。なんの取り柄も無いこの俺を捨てた親。そんな環境に生まれてきた俺の何が分かるんだよ」


 誘拐犯は憤怒しつつ、引き金を引いた。放たれた弾丸が俺の頬をかする。


「どうだ。この距離で外しちまうんだぞ。こりゃあどう足掻(あが)こうと駄目なんだ。はあ……だが次は当てるぞ。ガキぃぃい」

「なあ、誘拐犯。お前はもっと普通に生きれただろ。お前は良い奴だ」

「ふざけるな。死ね」

疾風(しっぷう)……」


 俺は壁に飛び移り、誘拐犯目掛けて鋭い視線を向けた。

 その時、誘拐犯は壁にいる俺へ銃口を向け、そして引き金を引いた。銃弾は空を切り、当たらなかった。


「……()り」


 俺に誘拐犯の頭を蹴り、倒した。

 最後に残った誘拐犯は、覆面を外し、俺に言った。


「あーあ。負けだ。その子を連れてけ。とはいっても気絶しちゃってるみたいだけどな」

「よく頑張ったな。耳川」


 俺は気絶している耳川を抱え、立ち去ろうとした。すると誘拐犯は羨ましそうに俺へ言ってきた。


「俺もお前達のように生きたかったな。大切にしろよ。そいつを」

「お前はどうするんだ」

「俺は今からこいつら連れて自主しに行く。……なんか、ありがとな。なんで良い奴だと思ったんだ」

「だってお前、わざと銃弾を外してた。最初も。仲間が撃つときも俺が死角になるなるようにしてた。だから分かったんだ。お前がどうしようもないくらい良い奴だって」


 誘拐犯は笑みを見せ、伸びをして言った。


「ありがとな。これでスッキリした。次会うときはお互いに助け合える。そんな関係で会いたいものだ」

「お前なら出来るよ。誘拐犯」

「その呼び方変えようぜ。俺は宇氏(うし)っていうんだ。よろしくな」

「俺は大神だ。よろしく」


 次の日、宇氏とその一味は自主し捕まったらしい。

 彼らの判決がどうなるかは分からない。けど次出てきた時は正しい道に進んで欲しい。そんな綺麗事で良い。


 だって世界は美しいのだから……。

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