第3話 吠えろ
この学校のシステム。それは私達をワクワクさせる。
「今から今月の行事を決めてもらいます」
そう。それは行事を自分達で決められる。今は4月だ。4月と言えば始業式などの様々な行事がある。だがこの学校では始業式は無く、12個の中から好きな行事を1ヶ月に一つ選べる。
「投票用紙を配るのでやりたい行事を書いてください」
皆へと紙が配られる。
候補は、冒険に体育祭、音楽祭や文化祭などなど。
皆それぞれ悩んだ結果、今月の行事は確定した。
「今月の行事は……文化祭です」
「よっしゃぁぁぁあああ」
クラス中に歓声が響き渡る。
私は冒険にしたから残念であった。とはいえ楽しそうだ。
「今回は全会一致で文化祭になりました」
いや、嘘つけ。私は冒険にしたぞ。すぐ嘘つくんだからこの教師は。
私は担任の男を睨み付けるが、気づいていないようだ。
「明日から準備を始める。用の無い生徒は先帰っとけ」
「はぁぁあい」
私は家に向かって歩く。ほとんどの人は家までワープしたり、転移電車を使うのだが私はただ平凡に生きたい。世界がどれだけ進歩しようと私は普通に生きたい。
それが私の夢なのだから……。
「なっ、な…………」
私は突然後ろから襲われどこかへ連れていかれる。
~午後9時10分_大神邸にて
「お兄。テレビ見て、テレビ」
「何だよ。初恋の人でも映ってたか」
「違うよ。見て」
俺は風呂上がりにコーヒー牛乳でも飲みつつ、テレビへと視線を移した。
「今日の昼頃、北学園の女子生徒が誘拐されました。犯人は身代金三千万を要求してきており、警察も対応に追われています」
「お兄の学校でしょ。もしかしたら知り合いかもよ。でも誰が誘拐されたかは分かってないよ」
もしも誘拐されたのが耳川さんだったら、そんなの耐えられない。
僕はすぐに携帯を取り出し、勢いで耳川へと電話した。
「駄目だ。繋がらない。っ!メールが来てる」
俺はメールを開いた。
そこには一言こう書かれていた。
ーー助けて
「場所は分かるか?」
「分からない。まだ報道されてない」
「姉は居るか」
「姉は引きこもりでしょ。居るよ。絶対」
俺は急いで姉の部屋に向かう。
「姉貴、居るか?」
「何か用か」
俺は姉貴の部屋へと入り、事情を話す。
「相手の携帯から居場所を突き止めることは出来ないか」
「事情は分からんが……余裕だ。任せろ」
姉貴は引きこもっている分機械系には優れている。それに姉貴の能力はハッキング系の能力で、そんなことはお茶のこサイサイだった。
「場所は……ここだ」
「意外と近いな」
姉貴はパソコンに地図を写し出し、携帯の発信源であろう場所が赤く光っていた。
俺は家から飛び出し耳川さんのもとに向かう。
「おいっ、待て。ちっ、行っちまった。ったくあいつは」
俺は大急ぎで耳川のもとへと向かっていた。
早く救いたい。その心が俺の心を埋め尽くしていたからだ。
バンッ
突如として銃声が鳴り響く。
「何だ!?」
「驚いたか、救世主。私は誘拐犯だ。警察の前に君のような殺意むき出しの者が来るとは。これだから誘拐はやめられねーな」
「お前、覚悟は出来てんのか」
「異能でも使うのか」
俺は四足歩行の構えになり、鋭い目付きで男を睨みながら牙を尖らせた。
「狼」