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ストラフェスタ・オンライン  作者: 竒為りな
4日目 本日は大安のはずです
23/26

ヒナタの受難


リリース4日目のおやつ時。

今日もゲームの中は晴天です。


東門から広がるエリア<サーマル平原>の奥地は、見渡しの良い平原から背丈の高い草木が点在するフィールドへと変わっている。

その草木の陰に隠れていたり、草木のオブジェクトに扮していたり。

出てきて黒影のメンバーを楽しませてくれるのは、植物型のモンスター。


心地良い晴天。

緑の鮮やかなフィールド。

色々と妙で面白いモンスター。

元気よく遊びまわる黒影メンバー。


「いい加減にして下さい!!」


飛ぶ叱責。


いきなり飛び込んできたお叱りに、ギルド黒影の動きがピタリと止まる。


メンバーの誰かの発言ではない事を確認した所に。


「行かないって言ってるんです!! もうあっち行ってください!! しつこいです!!」


お叱り第二弾が、後方から聞こえてきた。


これはまたなかなかの文言だ。

しかし、言葉から考えるにどうやら自分達のことではないらしい。


まぁ、心当たりがなくとも、何かしちゃったかなとは考えるものだ。



ヒナタ達は、そっと、遠慮がちに、振り返る。


近くもなければ遠くもない。


そんな所に、5人のプレイヤーが立っていた。



5人の内、女性プレイヤーが3人。男性プレイヤーが2人。

だがどうやら、1つのパーティではないようだ。

女性同士、男性同士で別のパーティを組んでいる。


視界に表示される情報でもわかる事だが、それに頼る必要はない。


女性3人、男性2人で真っ二つ。

真っ向から対峙するように立っているのだから。


こんな場景にあの叱責だ。

面倒な予感以外に一体何があると言う。



「あ~、どうするっすか?」


ヒナタは、レダとダンに問うてみる。

問うてはみたが、どの道取る選択肢は決まっているだろう。


「…あ、うん。止める、よな?」


レダもその結論には至っているのだが、自身と同じくどうにも煮え切らないらしい。

ヒナタは、レダと揃ってダンを仰ぐ。


ダンは今年で19歳。つまり自身の1つ年下。

なのにどうにも、ダンには敵わない。

自分が子供っぽいとはよく言われるし、自覚も残念ながらしているが、今ここではダンが大人っぽいのだと言い聞かせる。


「居合わせたからには、見過ごすのもな。まずは話を聞いてみよう」


さすがギルマス。一生ついていきます。



とは言ったものの。

ダンも含めて、気が引ける思いを抱きながらそろりと近づく。

存在感を出した方がよいのか、ダメなのか。


例の5人の側まで来たところで、会話が聞こえてきた。



「だからさぁ、俺らとパーティ組もうって。ここヤバいじゃん? 人数いた方が絶対いいからさぁ」


あ~やっぱりか。


男性側の1人が、大袈裟に手を動かしながら語っている。

重心を片足にかけ、馴れ馴れしい。


「お断りしますって、さっきから何度も言ってるじゃないですか!」


近づいて分かったが、この女性達はまだ若い。

女性というより、少女と言うのが正しいだろう。


「いや、俺らレベルもあるからさぁ。俺らといた方が効率も絶対いいって。人数いて効率も上がってレベル上げもすぐだって。だからさ、ほらパーティ組もうぜ?」


「ほんと、ほんと何度言わせれば気が済むんですか。あたし達はあたし達で遊びたいの! もうあっち行って!!」


なるほどなるほど。


どうやら、少女達はこの男どもにパーティに誘われていると。

でも少女達にその気はない。

だというのに、男どもに引く気がまるでない、という事だ。


ま、近づく前から予想は付いていたけども。


少女の自分達だけで遊びたいという発言。

裏にあるのは男とは遊びたくないという、完全な拒否の言葉である。


「そんな事言うなって。君らのレベルじゃここまだキツイって。俺らといればいいんだって」


こいつ、この子達の言葉、完全に聞いてねぇっすね。


男の発言に、ヒナタは苛立ち始める。


一緒にいる方がいいなど、よく言えたものだ。

しかし男にそうさせているのは、男のレベルだけでなく少女達の様子もあるのだろう。


少女達に迫る男どもは揃って、レベルが12。


レベルが18のレダはともかく、16のダンも15のヒナタも、全プレイヤーの中では頭が抜けている。

レベル12というのは、上位層と中間層の境あたりと言えた。


対し、少女側だ。

一方的に話してくる男に答えているのは、3人の少女の内の1人だけ。


レベル10 サラ

ゲームながら黒髪で、ミディアムストレートのそれを下ろしている。

いかにも皆を引っ張るような、はっきりした顔立ち。

そして言葉から、意思強い性格が感じ取れる。


そのサラの背後に、残る2人の少女が庇われるようにして立っていた。


レベル9 カリン

レベル8 ココア


カリンは、薄い緑の髪を長めのボブにして、たれ目でお淑やかな印象の少女だ。

ココアは、なんと銀髪ツインテール。こちらはか弱く見え、無表情でカリンの手を取っている。


サラが立ち向かってはいるが、後ろ2人の様子から、レベルを盾に迫っているようだ。

確かに、ここのモンスターは最低レベルが9で、最高レベルが13。

正直に言って、この少女達では苦戦を強いられるように思う。


だが誘う男達を見るに、断る方が正解だ。


「ほんとにいい加減にして下さい。嫌だって言ってるの!」


いや、ここまで言わせるって。

一体いつからまとわりついてんすか。



「いや、何でわかんないかな? 状態異常ばっかりだとポーションもいるよね。3人だとマジ大変だよ。それもレベル10以下の女ばっか。俺らさ、親切で言ってやってんのよ。わかんない?」



……は?



「なっ、親切って。――ふざけないで! 勝手な事ばっかり言ってきて、そもそもあなたには関係ないでしょ!」


「だからぁ、関係ないところをご親切に言ってやってんだろ? ――」



この男、いう事を聞かない少女に痺れを切らし始めたか。


親切だというが、親切心など毛ほどもない事はすぐわかる。



「――うだうだ言ってねぇで、俺らとパーティ組めって」



「はぁ~い、ストップっすよ~。そこまで、そこまで!」



明らかに素を出し、強気に出た男。


状況的に、心情的に。

これ以上はと思い、ヒナタは両者の間に姿を見せた。


すると5人ともが驚いた顔を向けてくる。


いやほんと、すぐそばまで近寄ったというのに、誰も気づいていなかったとは。



「何、お前。なんか用かよ」


割り込まれたのが腹立たしいのだろう。

苛立ちを、言葉、表情、態度にまで表してくる。


「いやぁ、何にもわかってないあんたに教えてやろうかなぁって。あれ、老婆心的な?」



やべぇ、自分マジ大人。


どうよこれ。

ガルドの糞おやじめ、俺のどこがガキだっつの!



「は、きも。別に教えられるような事ねぇし」


さっさと消えろ、と手を振ってくるがそうはいかない。


「聞いた方がいいっすよ~。あのさぁ、レベルとか関係なく、きもいあんたとはパーティ組みたくないんすわ。ね、そうっすよね?」


ヒナタは、きもいあんた、と言いながらご丁寧に指差ししてやった。

そして少女達を振り返れば、彼女達は一斉に頷いている。


「そ、そうです。パーティ組むんだったら、あなたじゃなくてこの人がいいです」


サラの言うこの人とは、ヒナタの事である。

やはり、パーティを組みたくないとストレートには言えなかったのだ。


「ほらほら、聞いた方が良かったっしょ?」


ここで活きるのは自身の身長。

思いっきり上から見下してやると、怒気に変わった視線と交わった。


「あ? お前何様だよ。レベルいく……つ。15? ヒナタって……」


お?

もしかして俺の名も全国区っすか!?



「おい、()()()()! そいつ黒影だ!!」



へ?



「嘘だろなんで黒影がここに……」



え、待って。

こいつ、名前、なんて??



「…おい。俺らもいるんだけど」


いつの間にか、ヒナタの背後にいたレダがひょこりと顔を出した。

それと同時に、ダンがヒナタの隣に並ぶ。


黒影、集合である。



あ、うん。でも待って。

こいつの名前、()()()()っすよっ!?



「悪いな。少し話を聞いていた。パーティ誘うのは別にいいが、無理強いするのはどうかな」



うんうん、そうなんすよ。

でもダンさん待って、俺を置いてかないで。



「あ、いや、俺は、その」


ダンに問われて、急にしおらしくなってしまったトラキチ。


「おい、トラキチ! もういい、行くぞ!」


「あ、あぁ」



やっぱりトラキチっ!?


待って待って、トラキチ行かないでーー!



そうして、トラキチとその仲間は去った。

少女達は良かったと、安堵と共に手を取り合っている。

それをレダとダンは柔らかく見守っている。


ただ一人、ヒナタだけが、誰からも取り残されていたが。



「あの、ありがとうございました!」


「へ? あ、どうもっすぅ~」


ようやく、少女の内、サラがヒナタを回収に来てくれた。

トラキチの衝撃から抜けられたか、と言われれば微妙だけれど。


「災難だったな」


「…もう平気か?」


ダンとレダが少女達を気遣う。



「あ、ひゃい! へへへ平気でしゅっ!!」



何故か、いきなりサラが強烈に噛んだ。

滑舌よくあのトラキチと対峙していたサラなのだが、きっと緊張から解かれたのだろう。


壮絶に噛み恥じているサラを、カリンとココアがなだめている。


「大丈夫っすか?」


やはり落ち着くまで一緒にいた方がよいのでは?

そう思っての問いだった。


「あはは。はい、大丈夫です。黒影の皆さんに助けてもらえるなんて感激です! 本当にありがとうございました!」


もう立ち直ったらしいサラ。

サラが感謝の言葉を述べお辞儀をすれば、カリンとココアもそれに倣う。


「皆さん凄くカッコよくて。ヒナタさんも、ダンさんも、――」


更に続けたサラだが、流暢な語りは不自然に途切れる。



「――――れ、れれ、レダ君、も」



あれ?


レダの名を出そうとしたらば、噛みまくる。

そういえば、さっきもレダに返事をして噛んでなかったか?


おおっと?


妙な予感。ざわざわとした胸騒ぎ。

ヒナタが感じるものは瞬く間に確信へ。


噛みまくった後のサラに、カリンとココアも加わる。

そうして少女達は視線を一点に向けた。


無論、レダである。



「あの、レダ君!」


口を開いたのは、カリンだった。


「私、レダ君の動画とか記事とか、いつも見てます!」


そのセリフは合っているのだろうか?

普通テレビ番組とか、ラジオとか、ネット配信者とかに向けるもので、レダが自分から上げたものはむしろ無い。


「…あ、あぁ。ありがとう? まだ4日目だけど」


突然の告白に、レダも困惑気味のようだ。


「あ。4日間毎日です!」


いや、さっきのはほぼ愚痴だろうに。


「わたしも。わたしも見てる。いつもカッコいい。会えた。嬉しい」


カリンに続いたのは、ココアだ。

単語を置いていくように喋るのが独特である。


が、そんな事よりも。

ヒナタにとっては、ココアが顔を赤らめている事のほうが問題だ。


「あ、あ、あたしもっ!! れれれれレダ君と会えりゅなんてあた、あたしもう、感激でしゅっ!!」


この子はもう触れない。

触れたら危険だどうなることか。


しかしまぁ、少女達は揃ってレダのファン。

当然だが、レダを少年と思っての事だろう。



「あの、レダ君!」


再び、カリンがレダに話しかけようとした。


「…なぁ、レダでいいから。君はいらねぇ」


言いながら、レダはいつものようにマフラーを引っ張ろうとした。

植物園用にマフラーを外していた事に気づいて挙げた手が所在なく漂う。


レダがマフラーを引っ張るのは、ちょっと照れた時の仕草だ。


「え、でも……」


「…いいから」


遠慮したカリンに、レダは促す。


「じゃあ、れ、レダ……さん」


何がカリンに遠慮させるのだろうか。

年のころは近いだろう。


「あの、やっぱりレダ君じゃダメですか?」


「…なんで?」


「その、ちょっと、違うっていうか」


違う?


理由は言わずに、カリンはもじもじと落ち着きを失くす。

すると今度は、決意のこもったような顔を上げてきた。



「あの、じゃあ! ()()()()()って呼んでもいいですかっ!?」



「…はぁっ!?」


急転直下のちゃん付け要請。

更にココアが加わって。


「君。ダメ。ちゃん。かわいい。ダメ?」


「…いやさすがにちゃんは」


「あ、れ、れれれれレダちゃんっ!!!!」


ココアがレダの顔を至近距離から覗き込む。

その隣から、発狂したようなサラが突っ込んだ。



「あーーーー! もういい分かった君でいい! いや君でお願いします。ちゃんはやめろぉおおおお!」



レダは女の子であるとは言っても、流石にそのレダというキャラでちゃんはキツイらしい。


まぁわからなくもない。

しかしこの少女達はレダに何を求めているのだろう。



「やった」


ぽつり。カリンの呟きと小さなガッツポーズ。



なるほど本気でちゃん付けしたかった訳ではないと。

女子こえっ!?



レダ本人に、君付けの了承をさせた少女達。


「ねぇレダ君。レダ君がいつも食べてるシュークリームって、どこで売ってるの?」


「…シャトー・リリアン洋菓子店」


「そこ。どこ?」


態度、口調が一気に砕けてレダに質問による猛攻を開始した。


あれもこれもと、一心に語り掛ける少女達。

勢いに押されて答えるしかないレダ。


ヒナタとダンからは、少女達の垣根からレダの頭がちょこっとだけ見える状態だ。

青年2人、完膚なきまでな置いてけぼりである。


これも仕方がないだろう。

レダは最強プレイヤーと呼ばれているのだし。

年齢も体格も、レダは身近なのだ。


ヒナタとダンは、少女達にとってはもう、大人の部類という事。


自分は最年長だ、しっかりしなくては。

などと、ヒナタはレダと少女達、いや少女4人を見て、改めて自身の歳を考える事となった。



「ねぇ、レダ君って、彼女とかいるの?」



ぶへぁあっ!?



彼女て……。


あ~、彼女はいないんじゃないっすかね。



今の問題発言はカリンのものだ。

意外にも、一番レダに質問を投げていたのがカリンである。


「ふぇっ!? か、かのぉっ!?」


まぁ、サラは相変わらずぶっ飛んだまま。

ココアはカリンが投げる質問の返事を、いつも心待ちにするだけなのだから当然だけど。



「…いねぇよそんなの」



はぁ~、そうっすよね!!

いやいや、わかっていたけども!


てか、居たらお兄さん泣くかもしれない。

色んな意味で。



レダの返答を得ると、少女達はその顔を見合わせた。

カリンは満面の笑みを。

ココアはガッツポーズ。

サラは安堵から大地へ。



いや待って。もうほんと待ってよ。

君たちレダさんに何期待してんすか!!


ダメっすからね!?


レダさん、――いや、()()()()()はダメっすよ!?


女の子だもの。



レダちゃん女の子だものぉおおおおおお!!



全くヒナタの胸中は、大嵐が止まない止まない。


ギルド設立初日だというのに、完全に厄日だ。


どうして俺1人だけこんな?



そういえば、ダンが大人しい。

この状況など、ダンのツボには効くだろうに。


そっと隣のダンをうかがう。



ダンは、素知らぬ顔をして在らぬ方向を眺めていた。



……1人じゃなかったわ。




短めから永遠会話となりまして。

ツイッターを始めて、1話が長すぎてもどうなのかと確かにそうなので、今後これくらいの文量にしようかと思っています。


次話、レダの受難

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