表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストラフェスタ・オンライン  作者: 竒為りな
3日目 馬が合う、馬に会う?
16/26

現実らしい非現実


ダンと合流を果たしたレダとヒナタ。

特にげっそりしたレダの姿を見て、ダンが大爆笑したのはもう当然のこと。



「…笑いすぎ。ホント疲れたんだよ」


「くくっ、…悪い悪、、、ぷぷっ」



レダに関しては笑いのツボが何処にでもあるというのか。

ジト目を送ってシュークリームをぱくり。



「あー、笑った。ーーで、何食ってんだ?」


「見りゃわかんだろ、シュークリームだよ」


「いや、それは分かるが…」



珍妙な顔をしているダン。


なんだよ、そんなにシュークリーム食ってるのがおかしいのか?

マスターのシュークリームを疑うなど…


無論、ダンにも取り出したシュークリームを。


1度、手の中のシュークリームを凝視してーー



「……美味い」



ーーぽつりと呟いた。



「そうなんすよ!クソ美味いんすっ!いやぁ、ゲームの中の食いもんも馬鹿に出来ねぇっす!!」


レダのセリフを奪いドヤ顔で答えたのは、ヒナタ。



「んぐ、ふぅ、ご馳走さん。で、全くその通りだが、そう言えば君は?」


ダンにしては珍しく、ヒナタとまだ挨拶も交わしていなかった。

爆笑の坩堝に秒速で嵌ったのだから。


「ヒナタっす!いやぁ、レダさんに会わなかったら俺どうなってたかーーーわかんねっす!!」


「ははっ、君も災難だったな。俺はダン。ーーーしかし、ヒナタって本名か?」


「そっすっ!」


「おま…ーーーーーそうか。」



こいつっ!!突っ込むの止めやがった!!


深く追求しても無意味と悟ったダン。

さて、これからどうするか?と、話題変更。



時刻はもう昼近い。

今来たばかりのダンには悪いが、昼飯か。

ちょっとフィールドに出てみるか。



「…どっか行こうぜ。せっかく会ったんだし、ヒナタも一緒に」


「えっ!!? いいんすかっ!?」


「お、それはいいな。行こうか」



おっっっしゃぁああああああっ!


大袈裟にガッツポーズで喜びの雄叫び。

マジっすか?マジっすか!?と、忙しない。



まぁ、正直お腹が減ったかどうかは、分からない。

お昼ご飯の時間をきっちり決めている訳ではない。


飯の時間がバラバラになるというのは、ゲーマーに訪れる不治の病レベルのものか。



「で、どこに行くかだな」



問うた所で、そんなに選択肢が有るわけではない。

けども


「ヒナタも連れてゴーレム行くか?」


「ゴーレムっ!?そんなん居るんすか!?」


「…あぁ、〈バーバレン荒野〉の奥で見た」



オレリウス討伐帰りに走り抜けたあの荒野、エリア名を〈バーバレン荒野〉という。


〈サーマル平原〉は全体として地形などにさほど変化はないエリアだ。

対し、〈バーバレン荒野〉は、走り抜けただけでも、岩場の多い所、最早砂漠のような所、石がごろごろ転がる開けた所と、違いがあった。

共通しているのは、どこも荒れ果てたという言葉が似合う所か。



「俺とヒナタはレベル的に釣り合ってないが…ま、俺は楽しめればそれでいい。ヒナタもそれでいいか?」



ゴーレムはレベル15。

〈バーバレン荒野〉のモンスターは、最低レベル12。


レダはレベル15。

ダンはレベル12。


そして、ヒナタはレベル10。



安全マージンなどクソ喰らえといった発言なのだが



「行くっすっ!!強い奴とか燃えるっす!!」



ヒナタ、戦闘馬鹿の予感。



「…決まり。行こうぜ」


行動予定が決定。

レダとダンは、南門へと歩き出す。


燃えるっすーー!!

と、もう既にテンションという精神的ガソリンが着火しているヒナタを連れて。





(なぁ、レダ何食ってんだ?)


(しゅ、シュークリーム…!?)


(あいつっ、かわいい路線も狙ってんのか!)

(何っ!?)(くっ、女子うけかよ)


(((っ!!こえー、睨まれた)))


(あれじゃあ寄ってこねぇだろ)



(いや、待て)((((ん?))))


(あれは…ギャップ萌え狙いだっ!!!!)

(な、なんだ、と…)



(((((くそっ!レダ許すまじっ!!!)))))



迫ってきている強烈な悪寒はーーー



ーーシュークリームの()()()には敵わないのである。





ーーー





意外と早く、ヒナタのテンションは落ち着いた。


補給の際、メニュー画面を見てむしろ青ざめた事で。


あの散財パラダイスで、お財布がかなり寒々しい事になっていたから。

ヒナタ程ではないが、レダもびっくり仰天。

やはりあそこは誘惑の迷宮だ、と心のメモが。



さてさて、赤錆びた南門に辿り着いた3人。


南門付近のフィールドに、他のプレイヤー達がモンスターとの戦いに興じている。



今現在、オークといった人型モンスターと十分に戦闘を積んだ他のプレイヤーの行き先は、2つ。



〈サーマル平原〉の奥地か、〈バーバレン荒野〉か。




〈サーマル平原〉

そこはやはり、プレイヤーに基本となる戦闘経験を積ませるエリアのようだ。


戦いそのものを学ぶ初心者フィールド。

武器を持つ敵との戦いを知る人型フィールド。


そして、奥地にあったのは。




()()()モンスターの楽園。



完全に地に根を張り移動しないモンスター。

移動してもとっても遅いモンスター。


一見楽勝に見えるが、勿論そうではない。



プレイヤーが学ぶ、経験しておくべき物の一つ。





ーーーーー()()()()




モンスターではなく、プレイヤーが受ける方。

そこは、SGOの状態異常のほとんどを経験させられるフィールドなのだ。



状態異常を受けるか。

より実践的な戦闘か。


この2つ。



これにより、


はぁ、良かった。

初日の様な大渋滞は発生していないみたい。


「あぁ、そうだな。あれは酷かった。」


「…全くだ。ーーーあれ? まさか俺、口に出てた?」


「いんや、顔に出てた」



おぅふ!!



流石、流石だぜダンお兄ちゃん。


ダンが早速、一歩踏み出した。

踏みしめるは硬めの土砂とごろごろとした石。

所々生えている草は、まるでツンツンハリネズミ。

夜にカラスが止まったら、凄い絵になりそうな枯れ木がぽつぽつと。



ザッ、ザッ


と、いい音を鳴らして進むとーー




ーーレベル12 ダープレゼル が現れた!!




見た目は完全に小型草食動物。

サバンナにいそうな脚が細く、鹿のような体躯。


鹿とは違うのは、角だ。


直線的な鋭利な角が2本。

長さは40~50cmはあるだろうそれが、真っ直ぐ天に向かって伸びている。



さ、刺されたら痛そう…。



「おぉ!? なんかビジュアル的にあれっすね、行けそうっすね。 俺行っていいっすか!?!」



元気良く、おててを挙げるヒナタ君。


おいおい、あんま舐めて掛かると危ないぞ?

草食獣って意外とやる時殺るぞ?



「お、行ってこい」「…がんば」



特に引き止めはしない。

やはり、かなり侮っている様に見えるけど。


そうかそうか、行ってらっしゃい。



基本、レダとダンは戦闘狂なのです。

だから、ピンチは楽しい人なのです。


何でもかんでも言うのはつまらない。



と言う訳でヒナタ君。


なんの注意もアドバイスも受けない事から、やっぱり大丈夫なんすねっ!と更に捉えてしまいました…。



「っしゃーーっ!! 来いっす!!」



角をヒナタに向け、前脚を踏ん張り、後ろ脚で地面を蹴り上げているダープレゼル。

闘牛のような明らかに突っ込む動作。


対し、へいへいっ、と言いながら一歩、前、へ。



どぅぶへらっ!



勢い良く地面を蹴って来たダープレゼルに、ヒナタは上段へと刀身をこれまでと同じに振り上げてしまいーーー



ーーがら空きのお腹へ。



それも、ヒナタの身長故に下腹部に。



結果、初めて聞くような音を漏らして飛んでった。



あーあ、HPが3分の1も飛んでったぞ。




「おーい、大丈夫か??」


「だ、大丈夫っす…くそ、意外とやるっすね…」


「じゃ、次は俺な」



ニッ、と笑ってダンがダープレゼルの元へ。



剣を中段に構えて迎え打とうと。

が、突っ込んで来たダープレゼルに、回避に切り替えた。


「目の前だと、かなり速いな」


「そーなんすよ!」



ダープレゼルは、〈サーマル平原〉では居なかったスピードタイプのモンスターのようだ。

鋭い角が、猛烈に迫って来るのだろう。



再びダープレゼルと対峙するダン。

タイミングを測り、ぶつかる直前ですれ違うように回避。

脳内シュミレーションにより、既に用意していた剣を通り過ぎるダープレゼルの胴体へーーー



ガイィーン



ここのモンスターはかなり()()

生物らしさを存分に盛り込んでいる。


回避されたダープレゼルは、急停止出来ずとも首を振って角をダンに。

気付いたダンが、横に振られた角に刃を合わせた。


けども、体勢と角の勢いによろめく。

少し大きめの石を踏んずけてしまい膝をつく。


その間に反転していたダープレゼル。

角を向けるのではなく、前脚を高く持ち上げてーー




ぐっ!



ーー踏み付けられる。




ダンというベッドの上ではしゃぐ犬の様に踏み付け、続けるダープレゼル。

まずいか、とレダとヒナタの2人で迫れば、ダープレゼルはばっと飛び退いて事なきを得た。



「はぁっ、ふぅ…確かに、これは生き物だな」


「…だろ? じゃ、次は俺だ」




さて、次の選手はレダ。



向かい合うダープレゼルに、剣を下段に。

見合って見合ってーーー




ドッ



飛び出したのはダープレゼル。

タイミングを見計らう。


ダープレゼルの角は40~50cm。

自分の持つ片手剣の刀身部分はおよそ90cm。



やって来る角。

柄を両手で握りしめ、ぐっと引いて溜めてーーー




ーーーフルスイング! カッキーーん!



ヒィィーーーん




こちらの刀身の方が長い。

けども初めて合わせるのだから、誤差しか出ない。


と、思い至ったので角ごと吹っ飛ばそうかなって!!



「うわぁ、流石っす…」


「全くだな」



1発で行けちゃうとか、すげぇっす!!

と、憧れ尊敬が噴出している隣りで、そわそわし出すダン。


ダンの心のエンジンが回転を始めたようです。




そういえば、今、レダ君は両手で握ったよね?

片手剣じゃなかったの??



初期装備から、片手剣として支給されたのは、

両手でも扱える、柄も刀身も、少し長めの剣。


イメージ、ではなく。長さでぴったりなものはーー




ーーーーー竹刀(しない)




ええ、ええ。竹刀です。


中学校で剣道の授業があった人も多いだろう。



そう、日本人にとって、一番馴染みのある剣だ。



実際に目の前の敵と戦うとなると、中段に両手で身構えてしまうのもおかしくないだろうし、

リアルでは片手剣の場合、盾を装備する事が多い。

けども、そこも文化的に馴染みがないのだ。



SGOは日本で開発、発売されているゲーム。



現実の職業が侍ではない日本人の為、


片手剣でも

両手剣でもない



正確には、片手半剣(バスタードソード)なのだ。





おっと、立ち上がったダープレゼル。

角を巻き込んでの攻撃だったから、あまりダメージを与えられてはいないようだ。


さて、次は。


突っ込んで来る。


かなりの速度を活かしての突進が武器らしい。



突き出される角。



自身はそれを躱そうと身体を捻りつつ。



角を引っ掴み、

足は大地を蹴る。


ダープレゼルの背に跨って。

剣を収めて角を両手とも掴んで。


当然暴れるダープレゼル。





ーーーーーーーーーー()()()




「あっは、ははははははははっ! ダンっ! 見てこれ楽しいっ!!!」




………………。




天を仰ぐダンと、顎が外れそうなヒナタ。


いや、顎が外れそうなのは他のプレイヤー達もか。



「…ダンさん」


「ん?」


「レダさんて、いつもこうなんすか?」


「俺もまだ会って3日目だが……まぁ、そうだな」



レダのプレイスタイル?は、


強敵なら、如何に挑み闘うか。

弱いなら、如何に挑み遊ぶか。



「あいつは…SGOの申し子だからな」


呆れのため息と、理解不能のため息が。




獰猛な高笑いのレダと、必死のダープレゼル。



やがて飽きたのか、勢い良く飛び降り距離を取る。


体勢を整え再び来る角。

タイミングは掴んーーーっぐ!


変わらず突っ込んで来るのかと思えば、直前で跳ね上がって角が顔面へ。

下ろしてあった自身の剣もまた跳ね上げ、角を払いつつ肉薄していたダープレゼルの胴体を躱す。

躱して着地した足を蹴って止まったダープレゼルの元へ。


迎え撃たんと向けられる角。

それに対して自身も剣先を向ける。



レゼルの角と角の間。眉間。



走り込みながら、剣を刺し入れる。

急ブレーキ。

自身が角に刺さる前に、レゼルを捻り飛ばす。

転がったレゼルに、レダは踊りかかっていった。



「あー、楽しかった」


晴れやかな顔で戻ってくるレダ。


「みたいだな」


ロデオが始まった当初は驚愕を隠さなかったダンは、

レダだしな、とすぐに普段と変わらない様子に。


「凄かったっす! 流石すぎるっす!!」


ヒナタは興奮覚めやらずだけど。




その後、


自分もロデオやりたい! とダープレゼルに突っ込んで行ったヒナタを補助したり。

ダンの修行に付き合ったり。


草だと思ったらハリネズミ型モンスターで、いきなり針が飛んで来て慌てたり。

カンガルーみたいなモンスターの足蹴りに見舞われたり。

地中に潜んでいたデカいモグラ型モンスターに足を掴まれ地面に引き倒されたり。




ーーーそして、現在。



ピンチです。



囲まれてます。



自然のリアルを感じています。





南門から少し奥へ入った3人。


最初に彼らを出迎えたのは、ロージャッカルという、小型の肉食動物だ。

レベルは12で、耳が大きく尻尾がふさふさしている、現実に存在するジャッカルに良く似ている。


ダープレゼルと同じく、飛びかかってくるスピードタイプ。


けども、草食獣と肉食獣。

速さも段違いに思えるし、しなやかな走りから爪や牙が襲ってくる。



「今度は負けねぇっす」



これまでの道中。

同格、格上でも一歩も引かず、余裕を求めずギリギリの戦いをし、その中で新しい事に挑戦していくダン。

レベルもステータスも格下の相手に対し、たとえ初見であっても新しい事を生み出しにいくレダ。


元々、無鉄砲で強い敵に燃えるヒナタ。

この2人と一緒にいて、感化されない方が難しい。



侮ることなく、立ち向かう事を宣言したヒナタ。

2人は何も言うまい。



動きの速い相手。

速度も間合いも掴めていない。


だから、動かない。


神経を研ぎ澄ます。


まばたきも止める。


持っている剣には、余計な力を入れない。


中段に持ち上げるだけ。


どんな動きにも対応出来る様に。


全く想定と異なった場合はすぐ回避出来る様に。




ヒナタの集中に、ロージャッカルもたたらを踏む。



飛び出したロージャッカル。


口を大きく開き、立てた爪と共に襲いにくる。



速さだけでなく、自分が迫力に怯んだと、理解した瞬間に身を横に投げる。


次。


そう、思考を切り替えた時には迫られていた。



ダープレゼルとは違い、着地して即反転していたロージャッカル。



一時しのぎに剣を横に大振り。


だが、身を起こすには足りない。



開かれた大口に、自ら左腕を突き出し噛ませ、そこを右の剣で叩いた。



ギャン!



と鳴いて飛び退くロージャッカル。


減ったHPは同じくらい。



「相打ちっすね」



ニーヤ、と笑いだした時。




ウォォオオーーーーーン




「お、遠吠え! かっけぇっーーーーーすぅ?!?」




ウォォオーーン

ウォォオオーーーン




遠吠えと共に、増える、増える。




ロージャッカルは、()()()()()()



あっという間に、レダとダンも含め囲まれる。



「…マジか」


「あー、そう言えば…」



リアルのジャッカルは数体で群れる習性があったな。

本来は死肉を漁る動物なんだがな。


と、ダンの解説。



「ちょ、解説とか、ダンさん余裕っすか!?」


「そんな訳ないだろう?」



と言いつつも、ふむふむと頷いている。



「ど、どうするっすか!?」


「…闘う他ないだろ」



狼狽えるヒナタに問われても、それしかない。



「このまま四方八方から飛びつかれては殺られるだけだ。一点突破で抜けた方がいいと思うが」



打開策を打ち立てるダン。


しかし、相談する時間は与えてくれそうにない。

数体のロージャッカルが、姿勢をより低く。



「来るぞっ」



離れ離れは避けなければ。

3人で背を向け合い、剣をとる。


向かって来たロージャッカルに、それぞれが剣を振る。

特にダンとヒナタは、噛まれても爪で切り裂かれてもその場を維持する事に務めている。


かなりの数だが、全て一斉に向かって来るのではないのが幸いか、どうなのか。

包囲されたまま、襲われ続けるのだから。



どうにか道を切り開かないと。


けど、ここから離れる訳には。



ただ単に出ていけば、ダンとヒナタの2人と、レダ1人が別々に囲まれるだけ。



ここに居ながら道を…。




つまり遠距離。



つまり投げる。




でもここには石くらい。




投げる。

投擲。

投擲…




あの、ナイフ投げ。




ただし、自分は武器を失う。




一発勝負。




ゴクリ、喉が鳴る。

ゾクゾクする。背筋に冷や汗。




やべぇ、ーーーーーー()()()()




「ダン! ヒナタっ! !」




目の前のロージャッカルを、身体の左から渾身の振りぬきで払う。

右へとやって来た刀身を、腰辺りで真横に引く。




ーーナイフは縦に投げる。

手首は固定して、あまり回転をかけないように。

遠くに投げる時は回転数を意識してーー




お兄さん、ありがとう。



だが、状況が違う今。

イメージはブーメラン。

刀身を横にぐるぐる回して横幅もある程度確保したい。



投げる。

そう意識して引き絞る。



あれ?〈アシスト〉の補助エフェクト??


使えるものは何でも使うべっ!!




行ったれぇえーーーーー




ザァーっ!!!




走る、()()()



ーーーえ?





「ーーあれぇぇええっ!?!?!?」




道は開けた。

うん。通れる。

でも、剣がある。

手に、剣が握られてる。

投げるつもりだったのに。




んと、んと、斬撃がーーーー()()()()()



うん。飛んだの。



漫画みたいだったよ。



流石運営。とても非日常へと至るアシストですね。




「何してる! 走れレダ、ヒナタっ!!」



何故かもはや平然と走り出しているダン。

やらかした本人が、最後に包囲から抜け出ることに。



「すっげ! すげぇっす! すげっ! マジすげぇっ!」


語彙力が壊滅的になっているヒナタ。



「ははっ、またとんでもないものを…。アシスト名、なんだ?」


すごいな、それ何? 的な感じのダン。



スキルではないからか、所持アシスト! という欄はなく、アーカイブ的な所に概要が載る。



「…〈飛斬アシスト〉」


「相変わらずそのまんまだな」




〈飛斬アシスト〉


技名のようだが、〈技アシスト〉ではないので注意。

〈技アシスト〉は、全ての技、攻撃にダメージ付けるよっ! というもの。



走った三日月の飛斬。



それは、流麗度判定で眩く煌めいたのだった。






だが、しかしっ!!



状況は、ジャッカルの包囲を抜けたのみ。




だが、しかし。



ーーー相手は、群れている。




「…悪いな。 ちょっと付き合って貰うぜ?」




視線は外さない。目は開いたまま。


ニンマリとした笑みを貼り付けて。



「ぉおお、っらぁ!!」



三日月の飛斬を、とりあえず1番固まっている所へぶっ込んだ。



「ったく、ヒナタっ! 左右から挟むぞ!」


「はぃいっ!? ら、らじゃーっす!」



慌てて走り出すヒナタに、


「お前もやりたかったら試していいぞ? 飛斬」


「まぁーーじっすか!? うぉお、やるっす!!」



混乱状態をたったひと言で鎮圧するダンさんでした。





「いやぁ、やばかったっすね!!」



ジャッカルを倒し切った3人は、セーフティエリアを発見し座り込んでいた。


ジャッカルとの戦闘。そう上手くいった訳では無い。


〈飛斬アシスト〉の発動には、投げ込むような姿勢を取る事で補助が発生する。

補助が発生しなければ斬撃は飛ばない。


タイミングを考えずに試そうとしたヒナタが襲われたり、飛んで行った飛斬に当たらなかったジャッカルが散らばったり。


3人とも、飛斬の1発1発では倒すまではいかない。

狙っても最終的に当たるまで分からないし、何頭巻き込むかも不明。

相互にフォローし合って、少しずつジャッカルが倒れていった。



「あぁ。中々濃い戦いだったな。ま、得た収穫は大きいがな」


「…飛斬」


「も、やべぇっすね! ちょー気持ちぃっす!」


「…同感」「全くだ」



胡座をかきながら、身を乗り出して話すのがヒナタ。

緩く胡座を組んで、感触を確かめる様に自身の剣を握っているのがレダ。


ダンは、画面を操作している。



「…ダン? 何してんだ」


「〈飛斬アシスト〉の情報提供」


「さっすがっす!」



新発見アシストをネットにアップ中。



「レダ。 飛斬の動画、撮らせてくれ。 載せる用な」


「おーけー」



立ち上がり、構えを取って放つ。



「よし、完了」


ダンは画面を閉じて背伸び。


「あざーっす!」


「おう。ーーそういえば、もう2時過ぎなんだが、ここいらで飯にするか?」


「…そうする」



このままズルズルと時間が経って、晩ご飯に影響が出るのは困る。


ヒナタも了承したので、一旦お昼休憩。


「30分後くらいに集合な」


「おけ」「アイアイサー!」



今日のお昼は、昨日のカレー。

一晩寝かせた、お母さんのカレー。




現在進行形でネットが沸騰している中、呑気に昼ご飯を考えている3人であった。





ーーー




30分後、である。


お昼から戻ってきた3人は、一度第1の街へ補給に戻り、また〈バーバレン荒野〉へと歩を進めていた。


あれやこれやと雑談をしながら歩く。



「しっかし、ゴーレムまで辿り着くかどうか…。」


「…確かに」


「レダ、前からゴーレム行きたいって言ってただろ。先行くか?」


「…やだ」


「ふふ、了解」



優しい笑みと共に頭が撫でられる。


うふふ、心地良い。やっぱりお兄ちゃん。



「ホント2人とも仲良いっすね。リアフレっすか?」



リアフレ、リアルのお友達。

…リアルでダンになでなでして貰いたいかも…。



「いや、違うぞ。俺たちはーー」


出会いが偶然であり、その後も馬が合ったから、と。



「…そういえば、ヒナタ、フレいい?」


ヒナタとフレンド登録をしていなかった事に気づく。


跳んで喜ぶヒナタのフレンドリストに、レダとダンの名前。


「うわぁあ、やべぇっす…やべぇっすよこれ…」


画面をうっとり見始めている。

自分達が有名人になっているのは知ってるけど、大丈夫か?こいつ…。


レダとダンの前を、ふらふら。前も良く見ずに。



だからーーー



「あたっ!」


「どわっ!」



豪快にぶつかってしまったヒナタ。相手はNPCだ。



「あ~っと、すんませ~ん」


所詮NPC。軽く流そうとーーー



「おいコラ!人にぶつかっといてなんだ!?それで謝ってるつもりか、ぁあ?」



豪快にキレてきたNPCの強面おっさん。



「えっ!?えっ、と、すみませんした…」


「あ??聞こえねぇぞ!もっとでけぇ声出せねぇのか!!はっ、でけぇのは図体だけってか、ぁあ?!」



なんだこのNPC、けんか腰すぎるだろ…。

名前は、ガルドと出ている。


1歩近づくヒナタさん。


ん? ちょっと、まさか?



「ちょっとウザいっすね。おっさん、俺ちゃ~んと謝ってんすよ。耳遠いんじゃないっすか?あ~それで声でけぇんすね、まじウケる」


意外と、キレやすいのか。

レダやダンに向ける声音が、全くない。


ヒナタはその高身長を活かし、上から口元だけ吊り上げて挑発。

まぁもう当然ながら、額に青筋を走らせるガルドさん。


どうしよう、とオロオロしだすレダ。

面白そうだ、と静観を決め込むダン。



「おーおー、言うじゃねぇか。しっかしなんだぁ、女みてぇにぐちぐち言いやがって。玉ぁ付いてんのか?あいや、すまんなぁタッパだけ見てたみてぇだ、女だったか」


「男に決まってんでしょうがっ!耳だけじゃなくて目も悪いんすね、いやぁ老後が心配っすねぇえ!」


「はんっ!てめぇみてぇなガキに心配されるようなこたぁ何もねぇなぁ?!しっかし嫌味ったらしいガキだぜ、まーだおっかさんの乳吸ってんじゃねぇのか?それこそ心配してやんねぇとなぁ!?」



ヒナタの口元が引きつり始め、眉間が寄りに寄り、青筋が。


「なんなんすか!!アンタあれっすね、友達いないっしょ!周りから迷惑がられてんしょ!?可哀想なおっさんっすねぇええ!!」


「ガッはッは、俺ぁこの南門辺りを取り纏めてんだぜ?ここいらの連中に聞いてみろよ、み~んなガルドさんは頼れる人だって言ってくれるぜぇ?!目が節穴ってぇのはてめぇの事だな!!」


「こん、のっ!!」


「おうおう、やろうってのか、え?いいじゃねぇか男らしいぜ、えぇ?」


「だから、男だっつの!!!」


「ほーぅ、じゃあその男らしい所を、見せてもらおうじゃねぇか?なぁ??」


「いいっす。やってやるっすよ!!!!」



そう、ヒナタが宣言した途端ーー



『クエスト発生 ガルドの腕試し』


『クエストを受注しますか?』


   はい   いいえ




レダとダンが驚いたのも束の間。


元気よく、ヒナタが「はい」を。



「ガッはッは!それでこそ男だぜっ!そんじゃ、お前らには<バーバレン荒野>のゴーレムから[機械鎧の欠片]を取ってきて貰おうか。おーーっと、1人1つずつだぜ?」



ぱ、パーティクエストっ!?

でもこれ、完全に隠しクエストだろっ!?

ガルドさんとぶつからないと発生しないんじゃ!?



いやぁ、いい顔をしてくるガルドさん。

クエスト受けた事に気付いているのかいないのか、メンチを切り続けるヒナタ。

困惑から抜け出せないレダとダン。




ど、どうしてこうなった!?!?




はい。

こうして3人は、辿り着くとか着かないとかではなく、ゴーレムさんに向かわねばならなくなった。



え? いやなら破棄しろって?


目にもの見せてやるっ!! と意気込むヒナタを止められるのならばね…。



遅くなりました、そしてまだゴーレム出てこない何故だ…


PCで書こうとチャレンジしたのですが、上手くいかないのでやっぱりスマホ執筆です。

PCの方は行間がより多いと思われるかもしれませんが御容赦ください



次話、ようやくゴーレム登場する予定です…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ