表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストラフェスタ・オンライン  作者: 竒為りな
2日目 相棒とフレンド
11/26

ダンジョンアタック 前編



隊列を編成し直し、再び進み出した一行。


その前に姿を現したのは、またオークだった。



レダの斬撃が走る横で、



「ふんぬっ!!ーーーんがっ!」



渾身の一撃を叩き込めずに張り倒されるライトマン。



「やられてんじゃねぇかっ!!」


すかさずキリュウがライトマンにのしかかるオークの頭をぶっ叩いて剥がし、ダンがポーションで回復させながら前へ。



ライトマン。レベル7。


まだまだだったのでした。



けれども、ライトマンの超近接戦闘はこのダンジョンではとても貴重だ。


変わらずライトマンを前に出し、荒療治の修行。


この狭い中迫り来られて音を上げてもおかしくないが



「はっはっはーっ!掛かってくるがーーぶへぇっ!」



メンタル最強だなぁっ!!


ってか、敵前にして胸張ってんじゃねぇよ!!



ライトマンもいいが、そろそろシリウスにも戦闘に参加させたい、と考えていた所で。




ーーー分かれ道。




「……。どうする?」


問うてみるが、二手に別れるのは戦力的に難しい。


つまり、どっちに進む?



「なぁおい。めっちゃ枝分かれしてボス部屋その中の1本とか言わねぇよな?」



キリュウの問いに、全員が黙りーー



「そんなもの、行けば分かる事よ!はっはっはーっ!」


「…マジかよ。」


今のところその通りである。げんなりだ。



「どっちかの判断材料は無いな。とりあえず、全員の直感で。俺は右。」


「…左。」「右かな。」「右だ!」「左ですかね?」


右が3人、多数決。


「よし。右へ行ってみるか。」


皆の快諾を受け、ダンはGOサインを出した。




右へ行けば、傾斜がキツくなって来る。


これは奥へ続いているのではっ!?


と、期待が膨らんで来たその時に、挟撃。



前から3体。後ろから2体。やはりオーク。



「ここは、ーー()()()()()、って事か?」




前にレダ、ライトマン、キリュウ。


後ろにシリウスとダン。で分かれる。



ライトマンが中腰構え、右腕を真っ直ぐ撃ち込む。

クリティカルにはならず、そのまま迫るオークにキリュウがすぐ後ろから一撃挟んでライトマンに猶予を与え、アッパーカットを届かせる。



「くっそ!松明が邪魔だっ!!」


そう、キリュウは松明を持っているが故に、一撃を与えるのではなく、挟むのが精一杯なのだ。


ダンは昨日オークを倒しまくっているからか、片腕でもかなりアシストが輝いているが。



後ろでは、シリウスがハンマーを振り回し振り回し。

近づかせない近づかせない。


そも、獲物はハンマーなのだから、組つかれてしまうと仕様が無い。

ナックルなら殴り返せばいい(ライトマンは要修行)、剣持ちならなんとか斬り付ける事も出来るのだが。



ーーブンっ!ブンっ!!


真横に。


ガゴっ


突進しようとしたオークがまともに食らう。


シリウスは、食らった方を無視してもう一体を牽制。

ダンに任せる。

ダンは、腕だけでなく、身体を器用に使って連撃。

オークが起き上がったなら、またシリウスのハンマーブンブンブン攻撃再開だ。



キリュウのライトマンへの援護。

シリウスとダンの連携。


それを見て、大丈夫そうだと判断。

レダは、意識を全て、目の前の敵に向けた。



状況確認の間、オークの両腕を押さえていた剣、

それを強引に振り抜く。

勢いのまま袈裟斬り。

胴を薙いだ後、自身の肩まで引き戻す。

そしてーー


槍の投擲よろしく突き込んだ。



後ろでも一体倒したようだ。


残り3体。



レダは2体目に取り掛かる。


が、思いっきり突撃して()()()()オークさん。


刀身は前にある。

突きは間に合わない。

また袈裟斬りも出来るが、この体勢でクリティカルは狙えない。


もう目の前。


序盤で自分がやった事をやり返されているような状況になっていた。



突撃を回避すれば後ろへ流れる。


剣がダメなら手は?


残念ながら、オークは剣を握る右手側から。

左手は、やっぱり自身の剣が、()()になる。



そうだ。邪魔なんだ。




一瞬でこの解答に行き当たりーー




ーーー躊躇なく己が武装を手放した。




剣を放り投げながら、

伸ばされたオークの腕を掴み、

相手の勢いを利用したーー



ダァアアーーっ!!



はい。背負い投げでございました。



そしてーー



ーーアシストが付きました!!





あまりの物音にレダ以外のメンバーは振り返る。


完全にひっくり返ったオーク。

と、オークの頭もとで腕を掴んだままのレダ。



何が起こった!?!?



残念だが、戦闘中故に誰も一部始終を見ていない。

困惑しているのはレダも同じだった。



綺麗に決まってしまった。


えっと、これで……どうしよう?



とりあえず寝技?……は分からないしな。


剣は……どこに放ったか?



えっ?この後どうしたら????



次の手を、考えてなかった。


無論、ノックバックが終わり、起き上がろうとするオークさん。

と、とりあえずオークさんの頭を踏んづける。


けども、オークさん。


「うわっ!!」


空いた手で踏んづけた足を掴んで来て、バランスが崩れてオークさんの上に倒れ込んだ。



もみくちゃ。



オークさんは掴んだ足を離してくれない。

揉み合っていたが、オークさんが立ち上がりーー



ぷらーーん。



ーー足を持たれて、逆さまで宙ぶらりん。



「ちょっ!!このっ、離せっ!!」


とんでもない事にオークさん。攻撃してこない。

ほくそ笑まれている様だ!


今はオークさんと面と向かっている状態。

オークさん。身長はおそらく190辺り。

レダくんは160。く、靴入れればもうちょっ…はい。


そこまで高く掲げ上げられている訳ではない。


「はっ、なっーー」


手を伸ばせば、ギリギリ地面に着く。


「ーーーーーーせっ!!!!」


ゴツゴツとした地面を掴み、フリーの足を振り子の様に勢い良く!!合わせて身体をしならせ後ろに倒れるように。


油断?していたのか引っ張られるオークさん。


再度、



もみくちゃ。



「ーーこんのっ!どけっ!!」


レダは、オークの巨体に下敷き状態。



「おーい。大丈夫かー?」


声の方を向けば、キリュウがニヤニヤ。

横でライトマンが何故かサムズアップ。

シリウスがファイトです!と声掛けて。


ダンはーーーお腹を抱えて大爆笑。



「ーーてめぇらぁぁぁああああああ!!!」



その後。ーーー助けてくれない。



え?何故に???



どうやら、最強プレイヤーがここで一体どうするのか見たいらしい。


いや、考えてなかったからこうなってんだけどっ!?



くそっ!どうする!?


そうは言っても、オークさん落ち着いて!

足が!足が頭に当たる!!



お?足?



抵抗を止める。

当然、起き上がろうとするオークさん。

自身とオークさんの巨体に隙間が出来た。


身体をスライド。

這い出でるのではなく、自ら潜る様に。


まだ地面にほど近いオークさんの頭をーー



ーー両足でホールド!!



全身で捻ってオークさんを横倒し!


素早く離れて小さくジャンプ。


全体重を文字通り掛けたーー



ーー肘打ち。



否、オークさんのみぞおちに、肘から落ちた。




なんとなんと、この肘打ちもどき。

これもアシストがついた。

めちゃエフェクト弱いけど。


まぁ、攻撃、となる物は全て〈技アシスト〉に含まれるからね。


ただ、なんでもかんでも過ぎる訳では無い。

最初の背負い投げ、は完全に技有り。

微妙なただ振っただけ等の攻撃なら、攻撃判定のみ。

しっかりとした肘打ちなら技有りで流麗度によりダメージアップがあるが、今のは攻撃判定のみである。

だから実は、攻撃ならどんなものでもアシストは付くのだ。




さてと、ようやくレダは解放されたのだった。



剣を拾いに行かないレダ。


上体を起こしたオークさんに、それはとっても綺麗な飛び上がっての回し蹴りをその頭部に見舞う。


スッキリした。


そう言って剣を拾って来、またまた起き上がって来た所のオークさんに斬撃を、それはもうぶっ込んだ。




オレリウスとの修行で、斬撃をほぼ完璧にした状態で戦闘を始めたレダ。このゲームの戦闘システムの奥深さを改めて知ったのだった。




「…おい。お前らいつから見てた?」


レダが振り返らずに問う。


「クスクスクス、…俺とシリウスはお前が逆さ吊りになった所かな。」


くっ!


「俺らはそっから倒れ込んだとこだ。」


うぐぐ…。

お、ま、え、らぁっ!


と、じゃれつきに行く。


仲間とダンジョン。


現実では、クラスメイトと遊ぶ時も遠慮がちな玲奈。

レダとして思いっきり遊ぶこの時間は、嬉しいもの以外には決してならなかった。




ーーー




はてさて、先に進む一行。


その間襲って来たオークだが、連携が形になってきたパーティ。まだまだ余裕となるには遠いが、殺るか殺られるか、これがいいのだ。


あれからレダは背負い投げの練習。


剣を保持出来ないか、出来ない時はどうしたらいいかと色々試していた。



おっ?


「この先、広そうですね?」


シリウスの言う通り、前方は部屋の様にも見える。


「…セーフティエリア?」


「確かにそろそろ休憩したいぜ。」


「待て待て。中にオークがぎっしりとも限らん。」


「うむ!気を抜くな?はっはっはーっ!」


オークがぎっしり、というダンの指摘。

有りうる。非常に有りうるぞ。


近づいて来た所で、そろりと進んで中を窺う。



「つっ!!おい!!」


「ああ!宝箱だっ!!!」



そうとも!直径10メートル程の丸い部屋。


突き当たりになっていて先は無い。だから引き返さねばならないのだが、そんなことはどうでもいい!



「そうこねぇとなぁ!うぉお、ダンジョン来たー!」



テンション爆上がり。

画面で宝箱を眺めるのとは訳が違う!



「誰が開けます!?」


これは公平にーーーーージャンケンで!



ジャンケン、、、ポンっ!



「いぃいよっしゃぁあああああ!!!!」


勝者、キリュウ。



もう、皆わくわくしながらその時を待つ。



キリュウが、手を掛ける。


ゆっ……くりと、扉を開けーーー





ピィィィイイイイーーーーーーーーーーーーーー!!




「…っ!」「なっ!?」「へっ!?」「なんだ!」「何事かー!!」



ドタドタドタ


ドタドタドタ



嫌な予感。


「あはっ、あはははっ!」


誰かが掠れた笑い声を上げる。



「「「グガァァァアアアアアア!!」」」




「やっぱトラップ要素あんのかよぉおおお!?!?」



そう、オークがぎっしり、やって来た。



「おいおいおい。何体いるんだ。」


「ダ、ダンさん!?どうしてそんな冷静でっ!!」


「やべぇ!やべぇって!!」



いくら広い場所とはいえ、ほんとに何体いる?


唯一の入り口から入ってくるオーク達。

後続が確認出来ない。



「くっくく、あははははっ!やべぇ!おもしれぇ!」



ん?あ、はい。レダ君です。

もうね、メーターが故障してます。


それは獰猛な笑みを浮かべているのがもう一人。

ダンさんです。


「レダとシリウスが主に松明を持て。他もすぐ松明を持てるよう準備。灯りがなければ話にならん。」


えぇ、ここにも光源がありませんでした。



レダはレベル、装備、PSと三拍子揃っているし、

シリウスは片手でハンマー振り回すだけでもいける。


後ろは壁、横一列に並ぶ。



「はぁっはっはーっ!私は、超絶ライトマンっ!!!いざ、しょぅーーーーっぶっ!!!」



誰かの掛け声に、皆が合わせて叫ぶ。


それは、よくある事なのだけど。



ライトマン。誰も応えてくれなかったのでした。




ーーー





めちゃくちゃだ。めちゃくちゃだっ!!


なにぶん数が多い!



オークが棍棒を持っているのも脅威だが、今は肉弾戦なのだ。

勢いに押されてほぼ初手で壁際まで追い詰められる。

いや、流される。



一応の並んだ立ち位置は、レダ、ライトマン、キリュウ、シリウス、ダンの順。


前は語る事もないが、横からも押し潰されるのはなんとしても死守したい陣形。



「っくそっ!レダ!ライトにっ!!」


即座にポーションを投げるレダ。

叫んだキリュウに取り付かんとしたオークを、


「キリュウさんっ!!」「すまん!!」


隣りのシリウスがぶっ叩く。


「あっ!ダンさーー「俺はいい!!前!!」ーっ!」


パーティを組めば、他のメンバーのHPゲージが視界に表示されている。

ダンが押し込まれて攻撃を貰うが、ダンとキリュウ達3人との実力差はレベル差より大きい。

受けたダメージも、最小限だ。


レダは一体一体、と確実に相手し仕留めながらライトマンの補助とーー


ーー回復をと名前の上がった者へポーション使用。



アイテムのショートカット方法は、腰元をツータッチで反応音の後に登録した対応番号と対象者を


ポン 「①っ、ダン!」


音声入力だ。



一人一体、なんて無理。

バラバラになりそうなのを堪え、

組つかれた者には周りが攻撃を食らってでも引き剥がし、

武器を振る事が叶えば適当に振り回す。


これだけ敵がいるのだから、適当に振っても必ずどいつかにはヒットする。



肉弾戦で機能し始めたライトマン。

ハンマーを、とにかく振るシリウス。

自分も相手をしながらライトマンに複数オークが向かうのを留め、シリウスにハンマーを振らせられる様にと、周りを活かせられるキリュウ。

レダとダンは言わずもがな。



レベル9のオークの群れに、薄皮一枚で呑み込まれずにいた。




司令塔のダン。


「……?」


キリュウの補助が有るとはいえ、シリウスがハンマーを振り回せている。

シリウスの、柄も長さのあるハンマーを。

松明も落としていない。


迫るオークにコンパクト且つ勢いのある突きを入れ、

横合いのオークに斬撃を送る。

シリウスと自身の間に迫ってきたオーク。



そいつはシリウスではなく、こちらに。


気がついた。シリウスと自分に向かってくるオークの数が違う。

こちらが倍くらい多いのでは?



シリウスがハンマーだからか?

でも、俺とシリウスじゃレベルが2つ違うのたが。

レベルが低いと狙われる、という訳では無い?

なら、何故俺に?



無論、ダンとて必死に、決死に戦っている最中。


それでも頭を回す、回す。



被弾を覚悟で更に他のメンバーへと。


そして気がついた。

不自然ではあった。

いくらレダの戦闘能力が高いとはいえ、



松明を持って戦いながらポーション使用?



ガンっ



「レダさん!ダンさんをっ!!」


レダはオークをあしらいながら松明を持った手でショートカットの仕草。


レダが相手取っているオークは2体。

ライトマンに群がろうとしているオークは3体。



レダがポーションを使えるのは殲滅速度が早いから

ではない。




シリウスとレダ、何故か2人に向うオークが少ない。




「……つっ!!」



「全員っ、()()を持てぇっ!!!」



「はっ!?」「えっ」「なーー」



「いいから!()()だっ!!今すぐにっ!!」



全く真意が理解出来ていないだろう。

が、ダンの恐ろしく熱量の篭った指示に、皆松明を灯す。



途端、オークが下がった。




「くっく、ははははっ!そうか!そう言う事かっ!」




起こった現象、ダンの納得の叫びだが、

他の面々は一体なんのこっちゃ??分からない。



「…ダン!説明しろ。」



「松明だっ!()()()()()()()に光源が無いのは、仕様なんだ!松明が()()()()だっ!!」



驚愕を隠さないメンバー達。


なにせ、松明。

お助けアイテムとしか思っていなかった物が、超重要アイテムへと変貌したのだから。



「ーおらっ、おらおらっ!へぇ、火が怖いってか?」


キリュウが松明を振りかざして大きく動かせば、低く唸りながら後退するオーク達。


「ちっ。やってくれるぜ。流石〈ストラフェスタ・オンライン〉か。」


悔しそう且つ面白いといった歪んだ笑顔のレダ。

まぁ、全員が似た顔をしているが。



レダが突然、走り出す。松明を持って。


すぐさま逃げようとするオーク。


だが、そう、なにぶん数が多いのだ。


ごちゃごちゃして逃げ切れなかったオークに松明を叩き付ければーー



なんとなんと、オークの身体が燃えだした!



燃焼(バーン)状態である。



しかし残念な事に、叩きつけた松明はご臨終。

一人10本は、もしかしたら、少ない???


「どうします?ダンさん。」


シリウスの問いかけにほんのしばし考え込む。

数秒に1回燃焼ダメージを与えるバーン状態。

だが、それだけで倒す事は無理だ。


「バーンもいいが、このダンジョンが何処まで続いているか分からん。松明でーー追い立てるぞ!」


おうっ!


頼もしいメンバーの応えを聴きながら、策を。


シリウスとキリュウ、ライトマンが主にローテーションで追い立て役。

これまで為す術もなかったオークの勢いをコントロールし、待ち構えたレダとダンへ。



「いざっ!参るっ!!」


まず飛び出したキリュウとライトマン。

左右別々に壁際を走り、オークを中央へ。


キリュウ、ライトマン、シリウスと3方から中央へと押し込み、数体ずつレダとダンの方へ。


数体のオークなんざ敵ではないレダとダン。



必殺の振り下ろしでノックバック。

その間にもう一体をくるりと回避。

壁に激突した音を聴きながら回った勢いで横っ薙。

そこから更に上方へ払い、首を。

後ろから突撃してくるもう一体をーー背負い投げ。

自身の足元へ落とした剣をつま先で弾き上げ、掴んで寝っ転がる所へ叩き落としーー



こんな調子で、どんどんとオークの数が減っていく。


大体減った所で追い立て役を変更。レダとダンに。


他3人もみっちり戦闘を、楽しんで貰い殲滅終了。



「あああああ、疲れたぁあああっ!」


「ふん!私はどうって事ないぞ!?何故なら私はー」


「そうですね。ライトさんは頼もしいですから。」


「……。」


「ん?どうした、レダ?」



返事がないただのーーー、とはよく言ったものか?


手足を投げ出して、地面に突っ伏していた。


「………つかれたぁ……。」


「くっ、ぉおう。おつか、れ、ぷっクスクス」


頭を上げ、ギロりと睨まれた。


レダといると純粋に楽しいのだが、なーんかすぐ笑いのツボに嵌るのはなんでだ?

ダンがよく分からない自問自答をしているとーー



ーーポポンっ



音のした方を全員が振り返る。

顔を向けた先にあったのは。




宝箱。



さっきより、キラキラしてる??


「まさか、トラップをクリアしたら本物が?」


「お、俺は開けねぇ!!もう開けねぇからなっ!?」



「で、では、誰が…?」



無言。今の今は嫌だ。


「…ライトマン、行けよ。」


「…………ことわーーーーーるっ!!!!」



「「「「なんでだよっ!?」」」」



「はぁ、仕方ない俺が行く。」


そう言ったはいいが、身が強ばる。

いやぁ、もうトラップは無い。無いだろう。

けれどここは脳筋〈ストラフェスタ・オンライン〉。

油断は禁物、とついさっき思い知らされた所だ。



1歩1歩と辿り着き、宝箱に手を掛ける。


他の面々は、気にはなるのか、安全マージンを取りつつこちらを窺おうと首を亀のように伸ばしている。


ふぅ。よし。


ゆっくりと開いていくとーー



『トラップクリア報酬』



ーーと書かれた画面が表示された。


わっ!と驚く声が上がったので、皆にもそれぞれ表示が出たのだろう。



宝箱ではないが、トラップクリアねぇ。

まぁ、こんなトラップ仕掛けられて何も無いのも寂しいものだしな。



報酬内容は


経験値、ゴールド、素材、ポーション、そしてーー



ーーーーー松明×5



もう、楽しませてくれるのは分かったって。




ーーー




最初の分かれ道を目指して戻る一行。


先程のトラップのお陰か、

レダも含めた全員がレベルアップを果たしていた。



レダ    レベル14

ダン    レベル10

キリュウ  レベル9

シリウス  レベル8

ライトマン レベル8



である。

今のゲーム状況では、間違いなく高レベルパーティという事になる。まぁ、最初からだけど。



道中、オークと出くわす回数が少なかった事。

松明の有用性を理解した事。

で、それなりな速度で進んで、いや戻っていた。



「ふぅ。やっと戻って来たな。」


ダンが皆を見回す。


「進むぞ?準備はいいか?」


「はっはっはーっ!私に着いてくるがいい!なんと言っても私は超ーー」


「それは頼もしいな、ライト一人で先頭な。」


「はっはっはーっ!助けてくれぃ!!!」



意外と折れるのが早いが、キャラは絶対に折れない。

面白いと面倒が両方含まれる珍しいタイプの様だ。



分かれ道を、左へ。


さて、奥ーーーーーー…へ。



左へ入って3度オークと戦闘し、先へと進んだ一行。



再び、


分かれ道。



「うがぁぁああああーーーーー!!」


キリュウが吠える。

他の面々も、うへぇと顔が渋柿の様だ。


「はぁ。さて、どうしたものか。」


「ちょっと待って下さい!!」


分かれ道の内、左側を覗いていたシリウス。



「こっち!灯りが見えますっ!!」


なんだって!?

ばっと皆覗き込んだそこには、ほんのりと明かりのある部屋の口が、ここからでも見て取れた。


顔を見合わす。

すぐ見える距離。30メートルとかそれくらい。



「…行ってみようぜ?」


レダの提案に、他に選択肢もあまり無いので頷く。



やっぱりどうしてもオッカナビックリ。

ダンジョンに入る時はテンションも高く、行くぞっ!って様相だった。



今はそう、冒険。

何があるか分からない、いつ敵が出てくるかも分からない!

敵を倒し、宝箱を探し、このダンジョンをクリアする!


ドキドキわくわく、ビクビクわくわく。そんな感じ。



短い距離に、オークも出て来なかった為、すんなり着いてしまった。


松明が攻略の鍵であるだろうダンジョン。

そこで明かりの付いた空間。


ゴクリと喉を鳴らしてーー




ーー全員が、安堵の息をついた。



「ビビらせやがって。」


「やっと一息つけるな。」




そこは、セーフティエリアなのだった。



薄ぼんやりと明かりのあるエリア。

5人とも、どっかりと腰を降ろしてリラックス。



「…なぁ、昼飯食べてないんだけど。」


レダの言うように、時間はお昼時になっていた。


「そうですね。このダンジョンもまだ序盤かも知れませんし。」


「ああ、交代で昼にしよう。」



ダンジョンでは、完全にログアウトしてしまうと街まで戻ってしまう。


ダンジョン内で敵と出くわしログアウト。

またログインして敵がPOPする前に進む、とか出来ないようにね。



端末をスリープモードにすれば、アバターを残して、一度ゲームから離れる事が出来るのである。



セーフティエリアだからと言って、全員でスリープするのは心許ないので分かれる。

先はレダとキリュウとなった。


「んじゃな。」「…行ってくる。」






スリープモードで現実へ帰って来た玲奈。


端末を放り投げる勢いで飛び起き、


家の中をーーーー猛烈ダッシュ!!!



急げ急げっ!!



玲奈は女の子。15歳高校一年生の女の子。



みんな男性。



ーー食べるの早いに決まってるっ!



転げ落ちそうになりながら階段を降り、

そのままダイニングへ。


冷蔵庫にお皿ごと入っていた本日のお昼ご飯。

チャーハンを取り出しレンジでちんっ!


待ちきれないのでスプーンを握り締めながら、

レンジの中で回る回るチャーハンを睨む。


出来たチャーハンをあちちっ!あちちっ!と言いながらテーブルへ。


物凄い速度でかっ込んで行く。



ごほっ。むせた。



なんとか食べ終えた玲奈。

お皿を必死で洗ってお部屋へGO。



ダダダダっ、うっぷっ!ダダダダっ



食べてすぐそんな動いたら苦しくなるって。

だから部屋に入ってーー



ぴょんぴょんぴょんっ!


チャーハンよっ!下るがいいっ!!



ふぅう。よし!


端末を被って、いざみんなの元へ!






スリープから戻ってくると、

ダン、シリウス、ライトマンの3人は既にスリープしており、キリュウが留守番していた。


「…すまん、待たせて。」


「んおっ、いきなり喋んじゃねぇよ!っの、おかー」


「ぁ、ただいま。」



離席戻りのおかえりに、半ば感動を覚える。



「今日俺、カップ麺でよ。すすって終わり。」


笑いながら言うキリュウ。

それは確かに早そうだ。


「でも大して待ってねぇよ。ついさっき行ったばっかだぜ?」


「ぁー、そうだったか。…俺チャーハン。」


「ま、さかお袋の!?」


ニヤリと笑みを見せてやる。


「もちろん。」


ずりー!

とか言うキリュウは一人暮らしなのだろうか。


「なぁなぁ、レダ。昨日のオレリウスのやつ、聞かせてくれよ!」



目を輝かせて身を乗り出してくる。


「あぁ、いいぜ?」



そうして、他の3人が戻って来るまでの間、キリュウと熱く語り合い、笑い合い。



「ただいま。」「おかー」

「戻ったぞ!!」「おー」

「お待たせしました。」「おかりー」



全員揃い、準備を整えーー



「うし。行くか。」


おー!!



ーーー目指せ、ダンジョンクリア!!




他のモンスターは登場しません!

脳筋運営がオークの巣をテーマに作ったんです!


次回、まぁ、後編です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ