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リリース間近!


夏が来た。この夏一番の熱がここに――



8月1日土曜日。時刻は午前10時。


誰もが期待に胸を膨らませ、待ちに待った世界初のフルダイブ型VRMMORPG――



<ストラフェスタ・オンライン>



――その配信開始である。



仮想空間が実現し、VRゲーム機が開発されてから早10年。様々なタイトルのゲームが世に出回るもそのどれもがシングルプレイに終始していた。


VRでオンラインとなると、ゲームではなく現実では遠く離れた友人とお茶をするくらい。電話やテレビ電話に続くVR電話、チャットでしかなかった。



それも不思議ではないだろう。


世界が完全に設定されており、その中で不確定に動くものが一つならば計算は容易い。だが、複数、それも数多となるならば――



水面に一滴の雫が落ちる。真円の輪が広がる。

水面に雨が降り落ちる。幾多の波紋が折り重なる。


整不整。


どちらがどうなのかは明白な訳で。

それがVR空間とならば自明な訳で。



だがしかし、


VR技術が出来てVRMMO・・・・・を造らないなど、


そも、ゲーム制作会社側が許しはしないのだ。




当然各社は開発にありとあらゆる心血を注いだものの、足りなかった。それは技術であったり、資金であったり、機器であったり。時には著作権も壁となった。


特に大規模なものを造ろうと構想して最も壁となるのは、演算処理の壁。


1社では到底足りない。ならば――



もう4年前。

まさかの日本にある全ての制作会社と多くの企業が手を取り合い始めた、



――VRMMORPGプロジェクト。



そのプロジェクト運営陣は、つい1週間前の生放送で言った。



8月1日は、我々にとって第2の始まりになる、と。




――☆――




時刻は午前9時50分。

<ストラフェスタ・オンライン>配信開始まであと10分だ。



私は据え置きの頭部装着型ゲーム機を頭に被せ、すでにベッドに横になっている。



――準備万端! なのです。



これから始まる<ストラフェスタ・オンライン>



わくわくして、そわそわして。

落ち着かない、堪らない。




私がこんなに楽しみにしているのは、自分でも意外だった。


VRゲームは何度かしたことはあったけれど、どれもあまり続かなかったし、始まる前から高揚することなどあり得なかった。いやそもそも、ここまで胸が躍るなんて15年の人生であっただろうか。


私は所謂大人しいを体現したようなタイプ。クラスではいつも俯き加減で顔を隠し、自分の机にちょこんと座っているのが常だ。人見知りも激しいし、喋るにも「あの、その……」と進まない。


そんな私がゲームに夢中になっている。



<ストラフェスタ・オンライン>はプロジェクト始動時から全世界で話題になっており、私もずっと話半分では聞いていた。その時は正直、へぇーとニュースなりネットなりを流していただけだったのだが――



今から、3か月も前のこと。


<ストラフェスタ・オンライン>第1次プレイヤー募集受け付け開始日時が報じられた日。既に何度も流れていた宣伝動画が、初めて私の目に触れた。



綺麗だった。




素敵だった。




どこまでも広がる大地。大空。白い雲。


木々、草花、美しい湖。




凄かった。




胸が熱く熱くなった。




襲い掛かるモンスター。




立ち向かうプレイヤー。






広い空、大地、綺麗な景色を、背景として、





プレイヤーが生き生きと、活き活きと――――――。





私も。私もあそこに立てるのならば。



純粋に、単純にやってみたいと思った。

うん、思った。


ホントに思ったよ? でも……




テレビ画面を見ながら言葉が漏れ出た。


「やりたい」


そうして動いたのは、



私ではなく、



………………両親でした。





――☆――




両親の行動はとんでもなく早かった。


私が言った瞬間に、父母共携帯端末を取り出し検索を始めたのだ。一体何をしているのかと覗き込むと、第1次配信ソフトの抽選に応募をし終えていた。



あれ? 

私欲しいって言ったっけ? 

言ってないよね?


あ、いや欲しいけども、ね?


というかお二人ともゲームの買い方なんて知らんでしょうに。え、何? 困惑してる間に調べてGOしたの? 互いに情報共有もせずに?



ごほん。



第1次配信ソフトはたった1万枚である。そうたった1万枚。これだけ騒がれてて1万……はい。


その内の7000枚はネットで配信される。こちらは完全抽選だ。


では残りの3000はというと、値段が倍以上のプレミア版らしい。こっちは店頭販売。



さて、娘のためになんとしても手に入れたい私の両親は、当然? 店頭販売を見逃さない。


なんと販売店舗の中でも最も数を多く置いていると言われる店舗のすぐそばの、ビジネスホテルの一室に、2週間も前から乗り込んだ。ふぁっ!



ゲームの買い方だって微塵も知らなかったあの人たちが、


金、時間、有給! 等々使いまくって実行!




無論私は口を出した。出したとも!



そんな無理してまで欲しくないから――

第2、第3ってくるからっ。サーバー次第で数も増やしていくって言ってるし、私はそれで十分だから――

う、嬉しいけど、お父さんお母さん大変でしょっ――

は、恥ずかしいのぉ!


 対して、


玲奈れいなちゃん、中々欲しい物とか言ってくれないんだもの〜。うふふ、お母さん嬉しいわ〜。玲奈ちゃんがやりたいって言ってたんだもの、お母さん達頑張っちゃうわね〜――

そうだけど、第2次は早くて3週間後だろぅ?お父さん、玲奈に早くゲームして欲しいからねぇ〜――

はっはっは!お父さんこれでも稼いでるんだぞ〜?有給も丁度!溜まってたんだから、使う時に使わないとなぁ〜――

なんで玲奈ちゃんが恥ずかしがるのよ〜全然恥ずかしいことなんてないじゃない、うふふ――



だ、ダメだこりゃ。会話が噛み合わないし。




――☆――




枕元の時計を見る。


午前9時55分。あと、5分。




<ストラフェスタ・オンライン>略称はSGO・・・



うん。頭文字ならSFOだけど、SGOなの。



理由は造語ストラフェスタの意味とゲーム内容にある。




<ストラフェスタ・オンライン>は世界初のVRMMORPGだ。


だけれども、剣と魔法の世界ではない。




ストラフェスタ。


<ストラ>は闘争《struggle》、

<フェスタ>は祭り《festival》。


――ストラフェスタ《闘争の祭り》。



名前からして物騒極まりない。



ゲーム内容は魔法が一切無し。

遠距離攻撃は弓や投擲武器のみ。



己が仮想の肉体に、武具を装備し斬りこむのみ!



……はい。

あ、魔法はないけど生産系はいっぱいあるそうですよ、うん。





何故魔法がないのか?


残念ながらVRが出来て10年。ハリー・〇ッターの世界はまだ遠かったのだ。



元々脳みそで操作する仮想空間だが、頭の中で思えばどうにかなるのではない。五感の情報を与え、それに対し動こうとする電気信号を捉えるのだ。


つまり無詠唱魔法は夢のまた夢。行えるのは各種コマンドによって実行される設定された現象で、プレイヤーに出来るのは――



現実世界で画面越しに戦う既存のゲームの中に入ることくらい。




今現在はコマンドゲーに等しく、しかもシングルプレイ。エフェクトはかっこいいが、突っ立ってコマンドを実行するだけのため、魔法使い気分を味わいたい時以外はどのゲームでも他の職が人気だった。



そして今回はMMO。大人数による仮想空間への影響を演算し反映し続けなければならない状況で、魔法による空間干渉は重すぎる。


どこかで炎があがったなら、周りのプレイヤー全員の視界に炎のエフェクトを入れなければならないし、岩が砕けたなら砕けた破片一つ一つをまたプレイヤー全員に送らねばならない。


魔法を使うのが一人でなければ、さぁ大変だ。



てな訳で、サーバー負荷の関係上切らざるを得なかったらしい。




運営は魔法を切った。



切った、が故に……。




物凄い脳筋・・プレイに徹底的・・・にこだわった。




だってVR・・だもの。



現実の世界では、現実の肉体では出来ない闘い。


それを仮想の肉体といえど、仮想だからこそ実現出来る闘い。




それにこだわり抜いたのだ。


もう運営のこだわり様は相当なものだと思う。




例を一つ上げるならば、PVPモードがいい例だ。

今の所、プレイヤー数が安定し出すだろう第4次配信後に実装予定であるが、プレイヤー同士での戦闘はPVPのみとなっている。




――PK・・は存在しない。




闘いにこだわる運営が、何故PKを許さないのか。




プレイヤー同士で闘いたいならば、PVPで正々堂々思う存分闘うがいい!




やばい。脳筋だ。

すみませーん、助けてください。

ここに脳筋がいまーす。


……はい。




因みにPVPモードでは不可侵フィールドが展開され、決着がつくまで出られない。決着方法はたった2つ。


――死ぬか降参。


HPハーフライン切ったら? 降参しな、これ以上は死ぬぜ?


死んだらリトライポイントまで戻すか迷ってる、なんてこないだの生放送で言ってたけど、流石になぁフィールド消滅&回復でいいでしょうに。


しかし、運営も半端ないけどプレイヤーも大概だ。だってPVPモードに対して異論とかほとんど出てないって、何?



……もうみんな怖いよぉ。

ん? 私はPVPなんかする訳ないじゃん?



そうそう、そんなこんなだからSGOはstruggleのSとGなんだそうです。




――☆――




時刻。午前10時00分。




10分の間ずっと、<ストラフェスタ・オンライン>のことだけ考えていたとは。それだけ楽しみにしている自分に苦笑を送る。



いよいよだ。


目を閉じると聞こえてきたのは脈打つ血管の喚き声。落ち着かせるのに息を吸って、構わんと起動セットアップを開始する。



広がるメニューに焦がれた表示。

<ストラフェスタ・オンライン>



胸焦がれるあの世界と景色を掻き寄せて、私はわざわざ手を伸ばした。



表示の向こうの、始まる前から大好きな世界へ。




さぁ、<ストラフェスタ・オンライン>の世界へ!





――――――――行けませんでした。





()()()()()()()()()()()のチュートリアルを――』



あぁはい。

身体がないと立てるも何も、ないですよね……。



はじめまして。〈ストラフェスタ・オンライン〉を手に取って頂きありがとうございます


何やらVRについて色々書いてますが、特に詳しい知識がある訳ではないです笑

ゲーマーあるある等、ブログのプレイ日記風に玲奈の冒険を描いて行きます


さて、次話。


玲奈ちゃん、ネナベプレイへ第1歩…

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