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ここがわたしの魔界です!  作者: 文字虎
プロローグ
4/33

3.ここが私のハウスです



 しばらく木を切り倒し続けて、ある程度、虎さんに指定された大きさで木を切り分けた後。

 少し休憩をしがてら、わたしは倒れている木に腰を下ろし、虎さんが考えた家の建設予定地を一瞥して、息を吐こうとし――二度見する。


「――え、家出来てる」


 そこに出来ていたのは、小さいながらも、立派に建てられた一軒屋。

 家の角に、四角く均等に切り出されたであろう木の柱が立ち。白い漆喰の壁で作られた、なんとも可愛らしい家。

 玄関らしき場所にも、この原木を使ったであろう、木造の扉が取り付けられ。

 屋根なんかは小さな木の板が幾重にも重なり、瓦のようになっていて。

 更には、なんと煙突なんてあるではないか。

 立ち上がって、わたしは家の周りをぐるぐると回って確認し、どうやら家がほぼ完成したようであることを確認する。


 え、虎さん、わたしが見てない間にこれ作り上げたの? おかしいな、それほど時間たってないと思うんだけど……。

 考えながら玄関の方に向かうと、丁度、玄関の扉から虎さんが出てきて、一息ついていた。


「御疲れ様です。ある程度、住める家になったかと思いますよ」


 そう微笑みながら、虎さんが言う。少しばかり張り切りました、と言わんばかりに誇らしげに。


「えっと……あの、これは?」

「家をご所望でしたので、マキ様が過ごしやすいよう考慮して、このような家にしてみたのですが……お気に召しませんでしたか?」

「え、いや、お気に召してはいるんですが……あの、窓ガラスとか、漆喰とか、煙突はどこから?」

「こちらからですが」


 そういうと、また白い空間を開き、虎さんは窓ガラスと漆喰の入った容器を取り出す。

 べ、便利ですね……いや、それだけじゃ説明つかないだろ。

 いくら、わたしの木を切る技術が拙かったとはいえ、木の間から見える空の状況を鑑みて、家が一軒建つほどの時間は経ってはいないはず。そんな短時間で家なんて、作れるわけないじゃろがい。


「この短時間でどうやって?」

「そこは、マキ様の為のサポートですから」


 答えになってないんだよなぁ。うん、チートってことで理解しておこう。

 家の中に入ってみれば、そこはなんとも現代的な内装で。キッチンあり、ダイニングあり、リビングあり、個室あり、トイレあり、お風呂あり。リビングには暖炉なんてあったり。

 リビングから外を見渡すことの出来る全窓の縁側っぽいのもあり、そこには海が見えて……ってちょっと待って。


「あの外観から想像つかないような素敵に現代的な内装……というかこの景色といい、間取りの大きさといい、外とは違いますよね。こんなオーシャンビューじゃないよね外! 森の中にある小さな一軒屋だったはずだよね!?」

「そこは、マキ様の為のサポートですから」

「答えになってないよぉ!?」


 あまりの光景にわたしは頭を抱える。どうしてこうなった……木をなぎ倒していたから、てっきりログハウスっぽい感じの家なのかな、と思ったのにぃ! いや、別に、こういう家に住みたくないってことではないんだけれど……。


「空間を少し弄りまして、近場の砂浜に繋いでみました。海は実際に泳ぐことも出来ます。海にある実家のような感じになっているかと思いますが、如何でしょう?」

「そ、そだね……海の実家っぽいね……」


 ツッコミを入れるのも疲れるのと同時に、この白と黒の縞々模様が素敵な虎さんは、最早規格外っていうことがこれで良く分かった。薄々は異世界転移チートモノかなーとは思ったけど、これは流石に想像の斜め上を行き過ぎではないだろうか。


 ん? 白と黒の素敵な縞々、か……。



「そういえば名前なんですけど……」

「何か思いつきましたか?」


 日が傾いてきたということで。わたしと虎さんは家の中に入り、虎さんは夕食の準備を始める。わたしは何故か、席に座って待っていてほしいと言われてしまった。あれー……わたしもお手伝いしたいんだけどなぁ。

 そんなときにわたしが名前のことを出すと、虎の人は待ちわびたような声で聞いてきた。そんなに期待してたの?

 パッとではあるけども、なんとなく閃く。悶々と考えて出ても、なんかしっくりこないってことは結構あるし。というわけで私はこの名前にしました。


「シマ……さん、とか」

「サラリーマンですか?」

「違います」


 やめなさい、そんな印象になっちゃうでしょうが。字が違うから字が。ていうか知ってんのかい。


「縞々模様が綺麗だなぁ……と思って。だから、シマ」

「この縞模様が綺麗だから、ですか」


 やめて、恥ずかしいから復唱しないで! 言ってて、わたし何を言ってんだろうって思ったから。すごい恥ずかしいんだからやめて!


「……ありがとうございます。それでは私はこれより、シマと名乗らせていただきます」


 にこやかに、とても嬉しそうに微笑むシマさん。

 本当に嬉しいのだろう。耳はピコピコと音が鳴るんじゃないかっていうぐらい忙しなく動き、しっぽもユラユラと揺れていた。

 か、可愛……って、違う違う。


「それじゃあ……これからよろしくお願いしますね、シマさん」

「はい、全力で貴方に付き従います。マキ様」


 どこか重い感じがまだするが。

 こうしてわたしは、この異世界での第一歩を踏み出したのであった。

 閑話

「子供が出来た場合、子供の名前はシマジ○ウにしようかと思うのですが。如何でしょう?」

「可哀想だからやめてあげて。マジで」

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