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ここがわたしの魔界です!  作者: 文字虎
プロローグ
2/33

1.ここが異世界のようです



「――さて、起きてください」


 低く、うなる様な声が耳に届く。全くもって聞き覚えのない声だけど……誰だろう?


「……えぇっと、ここは?」


 記憶にない声を聞いて、訝しげに目を開けると、そこは森の中。

 ふわりとした光が辺りを漂い、森の中だというのに薄暗さを感じない幻想的な光景。

 そしてそこに立つ、執事みたいな黒の燕尾服を身にまとった、白い虎頭の人。


 えーっと。どうしよう、さらに状況が分かんなくなったぞ?


 おそらくは、そこで突っ立っている虎の頭の人が、私に声を掛けたんだろうけど。


「目覚めましたか、マキ様。ここはイアスブリード大陸という所です。異世界、と言うべきでしょうか」


 異世界と言うワードを聞いて、何を言っているんだこの人、という言葉と同時に、少し前の記憶が浮かび上がってくる。

 あ、そうだ。確か、わたしは――。


 脳裏に浮かんできたのは。男の人が、急に私にぶつかってきたこと。目の前いっぱいに広がる、電車と、電車を運転する強張った顔の運転士さん。


 そして、いつの間にか白くおぼろげな空間で出会った、黒いスーツに身を包まれた、気の弱そうな声で話すおじさんと、この虎の頭の人。


「えっと、つまりは、夢ではなく……」

「えぇ、現実でございますよ」


 虎の頭をした男の人がふわりと笑う。おぉ、なんかこうやってみると猫っぽい……いやいや、そうじゃなく。


 記憶を辿ろうと思考を巡らすが、頭に浮かぶのはそれだけで、どうしてこうなったかが、いまいち思い出すことができない。

 それに気がついたのか、虎の人が咳払いをして、意識を向けるようにしてくれた。


「記憶が少々混濁しているご様子ですね。僭越ながら、私からある程度の説明を。マキ様――七草 真希様は、通学に利用している駅のホームにて不幸にも、逃げようとするひったくりに強引に押し出され。タイミング悪く、ホームを通過しようとする電車にはねられました」


 ふわりとした笑顔を引き締め、虎の男の人が淡々と告げる。

 ――そうだ、確かわたしは電車にはねられたんだっけ。


「しかしながら、その死は本来マキ様に用意された運命ではなく、私のクソ上司である神の手違いによって、引き起こされたものでした。その事実を強引に帳消し――いえ、貴方をあわれに思われた神は詫びとして、貴方の魂と亡骸を蘇らせ。このイアスブリード大陸に転移することにしたのです」


 色々とツッコミを入れたいのを、グッとこらえる。


 とりあえず、この虎の人が、あの神様のことが嫌いなのが良く分かった。あの神様泣いてるんじゃないかな、メンタル弱そうな感じだったし。

 徐々に記憶を思い出して、何故、ここにいるのかというのは理解できた。


「ここまでが、マキ様がこの場所に立つまでの経緯でございます。少しばかり端折りましたが、状況把握には十分かと」

「あ、は、はい。ありがとうございます」


 わたしが礼を言うと、その虎は満足とばかりに微笑む。とても、上司の愚痴を溢していたとは思えないぐらいに、柔和な笑顔である。

 状況は理解できたけど……異世界転移かぁ。まさか小説のような出来事がホントに起こるとは。

 まさに、事実は小説より奇なり、というべきだろうか。うーん、人生とは分からないものだ。

 とんでもない状況に居るにもかかわらず、わたしは酷く落ち着いていた。


 とても不自然なぐらいに。


 あきらめにも似たような感情が、何故か少しだけ渦巻くが。わたしは一呼吸置き、どうしようか考える。

 小説とかのセオリーを考えると。強引に異世界に転移、ということは、何かやってほしい事とかがあるんじゃないだろうか? それならば、それをまずは足がかりとしていってみようかな。


 そう考えてわたしは虎の人に質問をする。


「異世界に転移したけど、神様は具体的に何かしてほしかったりするのかな?」

「いえ、特にアレからは何も指示は受けてないですね。自由にしてくれて構わないとは言われましたが」


 あれーどういうことなの?

 まるで相手の意図が見えないことにわたしは、ただただ首を傾げるしかないのであった。


 えっ、これどうすればいいの?

 初投稿です。

 至らない点が多々あるかと思いますが、よろしくお願いします。


19/7/13 色々修正と追加。

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