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2-3

 エリカさんのお兄さんはソ連を指差し、説明を続ける。


「で、このソ連なんですが。私達が今いるJRに刺客やらスパイやらを送り込んできたりと、好き勝手なことをやってくれてるわけなんです。もちろんJRを側でもできる限りのことはやってるんですが、なにせ単なる民間企業対国家ですからね……。今はなんとかできていても、このままではいずれ乗っ取られてしまいます」


 国は助けてくれないのかと私が質問すると、エリカさんのお兄さんは「はい?」とマヌケな声をあげた。そして目を左右に泳がした後、妹のエリカさんの方へと顔を向ける。あからさまなヘルプを求められたエリカさんは大きなため息をつきながら、フォローする。


「国からはもちろんある程度の援助は受けてるの。でもさ、外交的にあんまり大事にしたくないのか、直接的に助けてくれるわけではない。だからさ、基本的には自分たちの力だけで何とかしなくちゃいけないの。特に私とお兄みたいな……えっと、JR職員がさ」

「なんとかするって、どういうことですか?」

「まあ、スパイを見つけたりもするけど、私達に直接関係があるのは、街に放たれた生物兵器の退治ね」


 エリカさんのお兄さんが力強く頷く。生物兵器という物騒な言葉に私が萎縮していると、エリカさんは「そんな危ないことをするわけじゃないから」と言葉を付け足す。


「生物兵器っていっても、人を殺すようなものじゃないの。基本的には情報収集のために開発されたもの。だからめちゃくちゃ弱いし、私達に襲いかかってくることはないの。なんか固いもので殴ってればすぐに死ぬしさ」


 こんな風にさ。エリカさんはそういいながら棒を何度も目の前に何度も振り下ろすジェスチャーをし始める。お兄さんはというと、いつの間にかテレビ画面へと視線を戻していた。番組ではちょうど、人気コーナーである『テレホンショッキング』の真っ最中だった。司会の機知に富んだコメントにお兄さんは少しだけ頬を緩ませた。


「あの……一つだけ聞いてもいいですか?」


 私の言葉に二人がお兄さんが顔をこちらに戻す。お兄さんは少しだけ不満げな表情を浮かべていた。


「JRの危機とか、日本の危機とかが本当だとして……それがどうして私に関係あるんですか?」


 エリカさんとお兄さんがお互いに顔を見合わせる。


「どうしてなの、お兄?」


 エリカさんがお兄さんに尋ねる。


「エリカが知ってるんじゃないのか?」


 エリカさんが首を横にふる。お兄さんは助けを求めるように私の方を振り返り、私に問いかける。


「あの……どうしてなんですか?」


 私もまたエリカさんと同じように、首を横にふることしかできなかった。

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