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2-2

 突然現れたJRの女性職員とともにリビングへと戻る。浜岡さんはテレビから視線を外し、私たちの方を振り返る。そして、私と隣に立つ女性を見ると、不思議そうな表情を浮かべた。


「なんだ、エリカも来てたのか」

「お兄こそ。珍しく、仕事が早いじゃん」


 そう言うと、エリカと呼ばれた女性は浜岡の隣に腰掛けた。私もとりあえず座り、三人で部屋の座卓を取り囲む形で向かい合った。狭い私の家のリビングに、私と二人のJRの職員。テレビにはお昼のバラエティ番組が映っている。


「お二人は兄妹なんですか?」

「そうそう。私が妹のエリカで、こっちが愚兄の浩一」


 エリカさんのお兄さん、浜岡浩一さんが頭を下げ、私もつられて頭を下げる。すると、エリカさんが「そんな固いことなしなし!」と私達二人を茶化す。ほら、お兄からひとみさんに説明してあげなきゃと、エリカさんがお兄さんを肘でつついて促す。


「えっと、私達が佐々木さんのお家を訪問させていただいたのはですね。ちょっと重大な事件と関係があることでして……。単刀直入に言うと、今、日本とJRが危険にさらされているんです」

「はあ」


 言葉の意味をよく飲み込めない私をフォローするように、エリカさんがそんなんじゃわからないでしょとお兄さんに注意する。エリカさんのお兄さんは地図があった方がわかりやすいですね、と独り言をつぶやきながら、床に置いていた肩掛けカバンからタブレット端末を取り出した。それをちょこちょこと操作し、そのままの向きで座卓の中央に置く。エリカさんがタブレット端末の方向を、私が見やすい方向に変えながら説明を加える。


「簡単に言うとね、今、JRはソ連からの脅威にさらされているの。もちろん経営権とかっていう経済的な意味じゃないよ。もっと政治的かつ侵略的な意味。JRがやばいと日本もやばいでしょ。だから、お兄は日本とJRが危険にさらされてるって言ったの。で、ソ連ってどこかわかる?」


 エリカさんの確認に私が首を横にふると、エリカさんのお兄さんが身体を乗り出し、タブレットの画面に表示された世界地図を指差しながら説明を初める。


「いいですか、ここが私達がいる日本です。日本海を挟んだここの半島が韓国、と北朝鮮。で横の広い地域が中国。で、その上が……」


 お兄さんが画像を上にスライドさせる。


「えー、この横に広がっている領域の左側がロシア、右側にあるのがソ連。正式名称がソビエト社会主義共和国連邦というわけです」


 私は驚きを隠せないまま顔をあげ、二人の顔を見比べた。


「ソ連とロシアって……すごく広いんですね」


 お兄さんが口を真一文字に閉じながら頷く。テレビの中では今日一の笑いが巻き起こっていた。


「みんなそう思っています。私たちも、多分ソ連人とロシア人も」

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