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若葉の手紙

大好きなお姉ちゃんへ


お元気ですか。私は元気です。お姉ちゃんがこの手紙を読んでいる頃には、きっと私は将軍と一緒に遠い場所へ行ってしまっていて、すごくお姉ちゃんに心配をかけているのだと思います。だけど、心配しないで欲しいな。人と人とである以上、いつかは離れ離れになる日が来るはずだし、それがたまたまこのタイミングだったという以上の意味はないのだから。こうやってお姉ちゃんにお手紙を書けるだけでも、私はラッキーな人間の部類に入ると思います。


さて、お姉ちゃんはとっくに知っているかもしれないけど、私はお姉ちゃんのことが大好きです。一応、念のために伝えておくね。お姉ちゃんはいつも優しいし、入院する前には私の電車に沢山乗せてくれたし、一枚の布団で身体をくっつけて寝ることなんて言葉で言い表せないほどに最高なことでした。


それでも。毎週のようにお姉ちゃんと会っているけれど、こうやって私の考えていることをきちんと伝えることはこれが初めてかもしれません。隣に座って美味しいものを食べているときも、病院のベッドの上で今日あったことを話しているときも、沢山沢山チャンスはあったにもかかわらずです。


きっと私の病気のせいもあるのかもしれません。私が言葉にできない感情をお姉ちゃんにぶつけるとき、お姉ちゃんは何も言わずにただ優しく抱きしめてくれましたね。きっと若杉先生からそうした方が良いって言われていたからなのかもしれません。お姉ちゃんは人の言うことを簡単に信じることありますからね。でもね、本当は本当は、私に苦しい思いをさせてでも、私の伝えたいことを強引に聞いてほしかったです。優しさを言い訳に、愛してるを言い訳に、私の伝えたいことを理解するということを辞めてほしくありませんでした。これは私の言い訳です。いつも迷惑かけてばっかりなのに、それでもまだわがままいってごめんね、お姉ちゃん。


私は将軍と一緒に行きます。一生とまではいかないだろうけど、しばらく会えなくなってしまうかもしれません。私はすごくそのことが悲しいです。お姉ちゃんも私と同じくらいの悲しい気持ちになってくれたら、それだけで私は十分です。誰かにとって、それだけ大事な人間であることができたということは、私のこれからの人生で大きな大きな自信につながるからです。


さようなら、お姉ちゃん。お元気で。


追伸

ちなみにですが、あまり若杉先生を責めないであげてください。確かに治療はなかなか上手くいかなかったし、将軍が私を迎えに来たときも適切な対応を取れたとは言えませんでした。それでも、先生は一生懸命でした。神様以外の一体誰が、一生懸命に頑張っていた人を責めることができるのでしょうか?

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