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4-2

 エリカさんから待ち合わせに指定されたのは新宿駅東口の近くにある交番の前だった。早めに到着した私は、スタジオアルタの壁面に設置されている映像モニターで、いつものお昼のバラエティ番組を見ながら、エリカさんがやってくるのを待ち続ける。番組は私の目の前にそびえ立つビルの中で行われているらしい。テレビ画面に映るサングラスをかけた有名芸能人が、私とそれほど距離の離れていない場所に今存在している。正直ピンとは来ていないけれど。そのままぼーっとモニタを見ていると、エリカさんが駅の入口からではなく、スタジオアルタのある方向から現れた。エリカさんは前回と同じような格好をしており、私の腰をぽんと叩いて「行こうか」とラフな口調で言った。


「なんかさ、今日はちょっと街にいる生物兵器がいつもより多いんだわ。だからお兄と私は1時間前から現場に入ってさ、可能な限り数を減らしてたのよ」


 人でごった返す歩道を歩きながらエリカさんがそう私に説明する。


「それにさ、何だか今日はソ連人が多い気がする。さすがに見つかるようなヘマはしなかったけどさ、たった一時間で二人も遠くから見かけるなんて今までなかったもん」

「お兄さん、大丈夫ですかね」

「大丈夫大丈夫。お兄も前回の件ですっかり懲りてるし。今は自分の心配をしな」


 不安がる私を励ますようにエリカさんがあっけらかんとした口調でそう言ってくれた。汚い高架下の通路を通り、広い交差点へと出る。向かいの通りへ行くらしいので、私達は青信号になるまで立ち止まった。


「でも、確かにお兄が言ってた通り、最近色々と不穏な空気が流れてるのは事実なのかもしれないね」


 私のたちの目の前でトヨタの黒いレクサス信号待ちのために停まった。感心しながら私がふと車全体を観察していると、車の後方と両足とをロープでつながれた状態のエリカさんのお兄さんに気がついた。お兄さんは擦れきったボロボロの服を来たまま、ぐったりとした感じで道路に横たわっていた。私がまじまじとお兄さんを見ていると、お兄さんも私の姿に気が付き、力なく微笑んでみせる。それと同時に、信号が赤から青に変わり、レクサスはお兄さんをロープで引きずりながら走り去っていった。


 小さくなっていくお兄さんの姿を目で追いかけていると、いつの間に歩行者用信号が赤から青に変わったらしく、エリカさんがちょちょいと私の横腹をつついた。


「行こうか」


 はい。私は頷き、エリカさんの後ろをついていった。

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