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3-4

「あ!」


 私はそこでふとあることを思い出した。


「どうしたの?」

「お二人って、シベリア鉄道についてご存知じゃないですか?」


 エリカさんとお兄さんが互いに顔を見合わせる。


「シベリア鉄道って、あのシベリア鉄道? 世界一長い鉄道の」


 私は頷き、それに乗ったことがあるかどうかを聞いてみる。お兄さんの方は乗ったことがないが、エリカさんの方はモスクワに少しの間だけ暮らしていたことがあるらしく、その時、数回使ったことがあるらしい。


「まあ、短い区間だからその醍醐味を知っているってわけじゃないけどさ」


 エリカさんは説明する。


「確かに、乗る価値はあるかもね。なんだかんだ言って世界的に有名な鉄道だし。ひとみも電車とかそういうのに興味があるの?」

「いえ、私の妹が電車好きなんです。それでいつかそれに乗せてあげたいなって思ってるんですけど、いくらかかるかとか、どこから乗れるのかとか全然知らなくて」


 お兄さんがいつの間にか取り出していたタブレットを机の上に置く。インターネットで検索しておいてくれたらしく、画面には広大な自然の中を走る真っ赤な車両が写っていた。エリカさんの話では、どこからどこまで乗るかで費用が変わるが、一般的な海外旅行と同じだけのお金があれば十分らしい。


「で、乗車駅なんですけど。日本国内にありますか?」

「シベリア鉄道って確かロシアとソ連を横断してるんだったよね……」


 エリカさんは眉をひそめ、額に皺を浮かべる。


「ま、行けるんじゃない」


 エリカさんはお兄さんの方へ視線を送りながら言った。


「詳しくは調べないとわからないですけど。日本にはいろんなものがありますからね、シベリア鉄道の乗車駅くらいあるでしょ」


 お兄さんは机の上に置いていたタブレットをカバンにしまいながら同意する。


「この前近所を歩いていたらですね、裏通りの人気のないところにスロバキア料理店があったんですよ。それを見つけてすごくびっくりしてですね。人の多い渋谷や新宿ならまだしも、閑静な住宅街のど真ん中ですよ。そんな場所にスロバキア料理店があるんですから、日本中を探し回れば、シベリア鉄道の乗車駅くらい見つかりますよ」


 スロバキア料理がどういうものかは知らなかったけれど、機会があれば食べてみたいですね。そう二人に伝えると、エリカさんは同意してくれたが、お兄さんは小さく首を横に振った。


「私、スロバキア料理は大嫌いなんですよね。心の底から」

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