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左利きの次郎兵衛  作者: ケンタシノリ
第6話 百貫島に潜む海賊連中との最後の戦い
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その3

 海賊連中を倒した次郎兵衛だが、険しい顔つきはまだ緩めることはできない。口髭の男が言った警告は、百貫島にまだ多くの海賊たちが潜んでいるという意味合いを持つものである。


「周りに敵がいないのか、この目で確認しないといけないな」


 次郎兵衛は、自分の周囲を警戒しながら再び歩き出した。百貫島は、断崖に囲まれているので敵の潜伏に都合のいい場所である。


 砂浜の目の先には、木々や草むらが無数に覆われている。他の場所があればまだいいのだが、次郎兵衛が見る限りでは島の入口から頂上まで行く道はここしかない。


「これだけ条件の悪いところだと、悪事を繰り返す海賊たちにとっては好都合だろうな」


 次郎兵衛は、木々や草むらをかけ分けながら山道へ入ることにした。しかし、あまりにも多い木々を前に行く手を阻まれることになった。


 それでも、ここで立ち止まったら元も子もない。


「1歩ずつ歩くのも苦労するとは……。草がわしの膝上まで伸びているし」


 次郎兵衛は、海賊が潜んでいるかどうか確認しようと深い草むらを歩き続けている。そんなとき、周囲に敵らしき男たちの気配を感じた。


「この目では見えなくても、あの連中が近づいているのは間違いない」


 次郎兵衛は、草むらに足を取られてうまく体勢を取ることができない。そんな状況の中、敵の動きを察知すると右腰から素早く刀を抜いた。


 すると、海賊連中が草むらの中からいきなり姿を現した。突然の急襲であるが、次郎兵衛は決して動じる様子を見せることはない。


「おれたち海賊がいるのに、わざわざこんなところを通るとはなあ……」


 海賊たちは刀を振り下ろそうとするが、その前に次郎兵衛によって次々と斬り倒された。しかし、これで戦いが終わったわけではない。


 次郎兵衛の背後からは、敵が刀を抜いて静かに忍び寄ってきた。その様子に気づいた次郎兵衛は、振り向きざまに3人組の海賊を縦横無尽に斬りまくった。


 海賊たちの屍は草むらの中へ沈んだので、次郎兵衛の目から直接見ることはできない。


「それにしても、これだけ木々も草むらも繁っていれば……」


 次郎兵衛はその場でホッと一息ついたが、その間も敵のほうは草むらに隠れながら息を潜めている。海賊たちにとって好都合と言える場所は、瀬戸内海の島々を見渡してもほとんど存在しないからである。


 その辺りのことは、次郎兵衛も警戒を怠らない。けれども、次郎兵衛がいる場所は木々が繁っている上に草むらに覆われた山道の途中である。


 次郎兵衛が左足を1歩踏み出そうとすると、草むらから海賊たちがいきなり現れては刀でいきなり襲いかかってきた。


 不意を突かれそうになった次郎兵衛だが、敵の動きを見ながら間一髪かわすことができた。


「いきなり襲いかかるとは……。どういう意味なんだ」


 次郎兵衛は冷静さを保ちながらも、海賊連中を前に刀を握りながら構えている。


 海賊たちの顔つきは、次郎兵衛にとって想像以上に厳しい戦いが待っていることを意味するものである。けれども、山道を通るためには、目の前にいる敵を倒す必要があるのもまた事実である。


「何だと? ケッ、おれたちの縄張りに汚い土足で入りやがって!」

「汚い土足と言われるのは、わしにとって心外だ」


 海賊連中は、次郎兵衛に向かって次々と刀を振り下ろした。そんな敵の動きにも、次郎兵衛は自らの刀で縦横無尽に斬って斬りまくった。


 3人がかりで始末しようとした海賊たちだったが、結局は次郎兵衛の前にその場でぐったり倒れたまま息を引き取った。


 しかし、敵による次郎兵衛への襲撃はまだ終わったわけではない。今度は、短刀を手にした海賊が後方から次郎兵衛を始末しようと迫ってきた。


 次郎兵衛は、すぐにその気配を感じ取ると自らの刀を握りしめた。そして、後方へ振り向いては左利きの刀さばきで敵を斬り倒した。


「あの海賊連中……。本当にしぶといとは……」


 草むらに転がる屍を見届けると、次郎兵衛はその場から山道を再度歩き出すことにした。


 その間も、次郎兵衛は警戒を緩めることはない。次郎兵衛を狙う敵がどこから現れるのか分からないからである。


 木々の間に広がる草むらを進むうちに、高い木が少しずつ目立つようになった。


「こんなに生えていたら、山道を進もうにも手こずりそうだ」


 草むらをかき分けながら歩く次郎兵衛だが、途中で殺気らしきものをすぐに感じ取った。


「やっぱりそこにいるのか!」


 次郎兵衛は鞘に差している刀を抜くと、素早い動きでの刀さばきを繰り返した。刀を振り下ろしたり、横から斬ったりと次郎兵衛の実力を存分に見せつけている。


 すると、次郎兵衛の周りにある木から海賊らしき人間が次々と地面に落ちてきた。木のそばで倒れたままの男たちの姿は、次郎兵衛の目に飛び込んできた。


「果たして、この島に海賊はどのくらいの人数がいるのか……」


 海賊たちの屍を見るたびに、潜伏している敵の人数が尋常ではないことを改めて思い知ることになった。


 次郎兵衛は敵の動きに気をつけながら、再び草むらに覆われた中に足を進めることにした。

山道をすこしずつ歩き続ける中、次郎兵衛の行く手を阻む敵はいきなり現れるとは限らない。


「海賊たちにとって、ここは自分たちの縄張りで知り尽くしているし……」


 次郎兵衛は左手で刀を持ちながら、海賊の男たちが潜伏しているかどうかを警戒して進むことにした。

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