フクシュウとチョコレート1-8
この作品はフィクションです。
「おーい、いるかー?」
とある場所。それは、この店の屋根裏部屋。移動時間、約1分。
さっきの窓のない小部屋に、屋根裏へと昇るハシゴがある。それを昇るだけで、はい到着。
明かりも無く、埃臭く、狭苦しい。だけど、この場所こそが、私のもう一つの、大事な仕事場。
「………なんだ。仕事か?」
そして、その仕事のパートナーが、暗闇の中から、のそり、と現れた。
「よっ。そう、仕事。よくおわかりで。」
「下でごちゃごちゃ喋っているのが聞こえたから、大方そうだろうとは思っていた。というか、仕事のこと以外でお前がここに来ることはないからな。お前が来たと言うことは仕事だ。」
「えー、そんなことないじゃーん。ちゃんとご飯も持ってきてるでしょ?ここに。」
「…お前、あれを、ご飯、と呼ぶ気か?」
「ご飯以外になんて呼ぶのよ?」
「少なくとも、俺の好むご飯ではない。」
「えー。美味しいのになぁ、チョコレート蕎麦。」
「猫に不気味なものを食わせようとするな。」
のそりと現れたそいつ、猫は、そう言って、ふん、と鼻を鳴らした。
そう。こいつは猫。でかい図体をした、黒猫の雄。
「実際には猫じゃないじゃん?」
見た目だけは。
「猫であろうと無かろうと、蕎麦にチョコレートを絡めるような嗜好は俺には無い。」
「基本的に、ぐちぐちうるさい野郎はモテないよ?」
「結構だ。」
ったく、冷めた奴。しかも、冷めてるくせに文句が多いから困る。
チョコレートは至高の食物なのだ。それ故、どんな食物と組み合わせても漏れなく美味となる。
それがわからぬとは、哀れな見た目だけ猫野郎め。
暗闇の黒猫は目が殊更輝きます…。