フクシュウとチョコレート1-6
この作品はフィクションです。
「………。」
「………………その………、お金を、取り戻したいんです。」
「ふぅん。詐欺か何か?」
「はい………。結婚詐欺、です。」
「あらら。」
「私、もう40近くで、両親も高齢だし、早く結婚して、親を安心させて、あげなきゃ、って…」
「あ~、絶好のカモね。詐欺師にとっては。」
「ちゃんとしたお見合いパーティーで知り合った人だから、大丈夫だろう、って、思ってたんです。結婚を前提に、お付き合いしましょう、って、言ってくれて、私、すっかりその気になって………」
「ふんふん。」
「半年くらい、お付き合いして、いよいよ、って時に、彼が、実は…、って。借金があって、これを返せないと結婚出来ない、って。どうしてもキミと結婚したいのに、借金のせいで、って………」
「………疑わなかったの?それ。」
「………結婚することばっかり考えてたので…」
「なるほどね。」
なかなか残念な女性だ。のめり込みやすいタイプで、しかものめり込むと周りが見えなくなるらしい。
「で、借金を肩代わりしてあげた、と。」
「…はい。」
「いくら?」
「………800万。」
「………よく肩代わりする気になったわね、その金額で。」
「…助けてあげなきゃ、って、思っちゃったから…」
「親御さんは止めなかったの?」
「………親には、言っていません。ただ、結婚資金が足りないから、少しだけ援助してほしい、って………」
「それで、親御さんにお金を工面してもらった、ってわけ?」
「………私の貯金と、両親に工面してもらったのと、あと、友人たちからも………」
「………。」
恋は盲目とは言うけど、本当にここまで盲目的になっちゃう人もいるのね…。
「そして、お金を渡したら行方をくらまされた、と。」
「……………。」
その時のことを思い出したのだろうか。下を向いて、小刻みに肩が震えている。
「ま、事情はわかったわ。じゃあ、次は相手の男について教えて。」
肩を震わせながら、彼女は小さく頷いた。
冷静な判断力はいついかなる時も失ってはいけないです。