フクシュウとチョコレート1-3
この作品はフィクションです。
私は、カウンターテーブルの奥にいる。
その他人は、カウンターテーブルを挟んで向かい側にいる。
この状況から察するに。
「………お客さん?」
「………はい。」
なるほど。やはりか。私の推察力は正解を導き出せたようだ。
「………、」
それにしてもこのお客さん、随分とおどおどしている。視線が右を向いたり左を向いたり、指が小刻みにぽりぽり動いていたり。
黒縁メガネに地味な髪形の女の人。いかにも気が弱そうではあるが、
服の修繕を頼むのって、そんなに緊張するかね?
「えーと、で、物は何ですかー?」
「………え?」
「修繕したい物です。コートですか?ワンピですか?それともスカート?」
「…あ、あの………」
視線が完全に下を向いてしまった。人見知りか?人が苦手なのか?それだと話がなかなか進まなくて困る。15時には店に、あの、しまもっちゃんがやってくるのだから。
「………、」
しばし、何やら考えたらしい後、
ごとり
彼女は、カウンターテーブルの上に、それを乗せた。
「ん?」
「………、」
テーブルに乗せた時の音。
その物体の質感。
それは明らかに、衣類ではなかった。
それはまさしく、
「…壺?」
「………はい。」
またしても、私の推察力は正解を導き出せたようだ。
今回もちまちまと少しずつ前進です(^-^)