フクシュウとチョコレート1-1
この作品はフィクションです。
『♪♪♪♪♪』
『♪♪♪♪♪』
『♪♪♪♪♪』
電話が鳴っている。
電話が鳴っている、ということは、私に用事のある人がいる、ということだ。
ならば、でねばなるまい。
めんどくさいが。
がちゃり
「お電話ありがとーございます。衣服の修繕よろず承ります、こちら服の修理屋、服修屋でございまーす。」
壁に貼ってある電話対応メモを目で追いながらそう告げる。電話に出たらまずこう言う、と書いてあるから間違いではないだろう。テンションや抑揚に指示はないから、どれだけ棒読みでも許されるはずだ。
後輩くんに言わせれば、だからこの店は流行らない、だそうだが。あと、クレームつけられそうなその店名もどうにかしろ、と。
余計なお世話。私はこの店名が気に入っているのだ。クレームをつけたい奴は勝手につければいい。
「………え?」
とか考えてたら、電話先の話が完全に上の空。
「…あ、あ-、すいませんすいません。ちょっとあれがそれなもんで。えーと、山崎さんですか?………あ、まだ名乗ってない。それは失礼しました-。………あー、島本さん。こないだコートの修繕のご依頼に来た。はいはい………、はいはい………、あ、大丈夫ですよーもう仕上がってます。ボタンの付け直しと、染み抜きと、袖のほつれの修繕。…はいはい。あ、わかりましたー。では、本日の15時に。はーい、お待ちしてます-。よろしくどうもー。」
がちゃり。
「………15、と。」
壁に掛けられた予定ボードにメモを残しておく。
不定期にぼちぼち続けて行ければと思います(^-^)