只野救出作戦 ー9ー
「そう……こんな風にしないと普通に話せないから」
「何? トップアイドルが私達に用があるわけ」
着ぐるみのせいか、竹中かぐやの表情が分からない。それと明日香ちゃんだけを見てるわけじゃなく、俺の方も気にしてくれてる感じがする。
「そうね。さっきも言いましたが、私は貴方達の戦い方が気に入ってます。織姫をS級アイドルまで連れてきてくれる気がしますから」
「織姫って……天川織姫の知り合いなんですか? それなら、最近会ったりとか」
竹中かぐやの言葉に天川織姫に対する親しみが感じ取れる気がした。別の所属でも一緒に歌番組に出る事もあるだろうし、何か接点があったんだろう。それでも、天川織姫の会員番号一番の俺でも、何の仕事をしてるのか一切把握していない。他にアイドル活動をしてるのかも不明だし、アイドル戦記内でもまともに姿を見せた事もないわけだし。
「……ないです。一切姿を見せません。そんな事を言うのは、貴方達もそうなのですね……なるほど」
「っていうか、天川織姫とどういう知り合いなわけ? アンタが声を掛ければムーンライトにも所属出来たはずなわけだし」
天川織姫が竹中かぐやにとっての親友、もしくはライバルなんて言葉が出たら結構なニュースになるかもしれない。
「私と織姫の関係……何も聞いてないようね。会う事もなく、コメントも貰ってない。それなのに足を踏み入れたわけ……」
それは明日香ちゃんにではなく、俺に言ってるような気がするんだけど。
「……教えてあげてもいい。ですが、それには条件があります。貴方が操縦するトレイターで英雄に勝つ事。最終レース、アレクサンダーとの勝負を設定しましょう。勿論、ハンデをつけてあげます。これで良い勝負をしなければ、エンペラーには到底敵いませんよ」
竹中かぐやはエンペラーの強さを知ってるような口ぶり。しかも、俺がトレイターの操縦者って事も分かってるみたいだ。トップアイドルになれば運営との繋がりが出来たとしてもおかしくない。
それなのに竹中かぐやは天川織姫の事を聞こうとした。もしかしたら、運営も天川織姫を捜してるのかも。
「勝負……こっちが負けたら罰があったり」
「しないわ。最終レースで盛り上がるのも重要な事。勝たなくても、私が満足するようなのを見せて貰えたら、特別な景品をあげましょう。どうしますか?」
損する事がなければ、乗るしかないでしょ。アレクサンダーに勝てれば、天川織姫の情報だけじゃなく、一位になれば専用の道具。それプラス竹中かぐやからも何か貰えるかもしれない。サイン以上となるとファン会員でもないのにライブチケットとか。
「勿論やるに決まってるでしょ! 私達はエンペラーに勝つつもりでいるんだから、こんなところで負けてる隙はないの」
俺が何か言わないといけないと思ったんだけど、代わりに明日香ちゃんが良いところを取っていってしまった。