只野救出作戦 ー8ー
けど、ドレークの動きはあまり良くはなく、順位もそのレースの中で十位と丁度真ん中の位置で終わっていた。海のステージだったら最強だけど、地上戦はイマイチという事なんだろうかと思ったら、そうじゃなくて、次のレースを見たら納得した。
別の英雄がレースに出て、全てが真ん中の順位にゴールしている。英雄が本気を出せば一位は当然で、他の参加者は楽しめない。英雄が出るのは一種のパフォーマンス。しかも、海下乙姫のドレーク以外、登場した英雄は竹中かぐやのファン達が持っていて、十体所持しているらしい。
S級でもないのに英雄達と戦える機会を与えたわけだ。レアな光景を見る事が出来るせいか、観客達はスクリーンに釘付けになっている。リベリオンの完全勝利も無かったような感じだ。それだけ、竹中かぐやだけでなく、ファンが操る機体も魅力的という事だ。
「ちょっと……どういうわけ?」
明日香ちゃんは今の状況にではなく、携帯でアイドル戦記を確認しながら地団駄を踏んでいる。
それは他のレースで一位になった人達はすぐさま武器とかが届けられたという声が聞こえてくるのに、明日香ちゃんの携帯には一向に届く様子がないみたいだ。
「それは英雄と同じで特別な機体だから。すぐには来ないと思うわ」
俺と明日香ちゃんが観客達と距離を取り、二人でいると不意に声をかけられた。
しかも、その声は竹中かぐや。休憩中なのか舞台に姿はない。そのかわりに別の新人アイドルが進行役をしていた。けど、それだと周囲に人だかりが出来るのにそれがない。
「その声は竹中かぐや……よね?」
竹中かぐやはゲームセンターのマスコットキャラの着ぐるみに入って、俺達に近付いてきたのだ。