親父と新戦艦が出撃します ー15ー
☆
「はぁ……もうすぐ九時か。只野さんと明日香ちゃんの結果……本当は観戦する事が出来たのに」
人が足りないって事で仕事に駆り出されたわけだけど、大雨だったせいか全然客が来ない。店長も事務をしてるせいか、誰とも話す事が出来ないし、仕事だから携帯をイジる事も出来ない。
「後一時間……こんな大雨だから、カストルさんも訪ねて来ないだろうな」
俺がバイトに行く事になって、カストルさんは何処かへ行ってしまった。彼女でもないのに、家にいるのもおかしな話だ。
独り言を呟いてると、客が来た事を知らせるドアの音が鳴った。
「いらっしゃ……」
入ってきた客はズブ濡れの状態で、商品を何も持たず、俺がいるレジ前に立った。煙草やコーヒー、レジ横にある商品を買う様子でもない。
「どうしたの? 傘もささずに来るなんて。しかも、それって衣装だったりするんじゃ……」
その客は明日香ちゃんだった。しかも、西園寺アスカの姿で。
「あっ! もしかして、勝った事を報告しに来てくれたの……って、下を向いてるって事は……負けたとか」
只野さんの言葉で本当に負けフラグが立ってしまったのか。カストルさんがその場にいたら、やっぱりとか言ってそうだ。
「……勝った。次は天川織姫……星野さん達との対戦が決定。けど、それもなし。ファン達には悪いけど、引退する事にしたの」
「……えっ! 勝ったんだよね。俺達の対戦が決まったのに何で?」
俺と明日香ちゃんの話す声が聞こえたのか、店長が表に出てきた。そして、ズブ濡れ姿の明日香ちゃんを見て、温かい飲み物を渡した。
「私が前に出ているから、星野君と只野君の妹さんは中で話してくれて構わないから」
店長は明日香ちゃんが只野さんの妹だと知ってたらしく、好意に甘える事にした。
「それで……一体何があったの? そんな姿で俺に会いにくるなんて理由が見つからないんだけど」
引退するって事は、天川織姫と西園寺アスカの対戦が無くなるわけだ。俺に宣戦布告する意味もない。まして、実は好きでしたと突然の告白って雰囲気でもない。
「……お兄が倒れたの。お兄がいないと星野さん達には勝てないから。それに……私というより……お兄のカリスマでファン……仲間達がついてきた形だから。その存在がいなくなると崩れるだけ」




