親父と新戦艦が出撃します ー10ー
☆
「今夜のアイドル戦記も波乱が起きました。司会は同じオールマイト、解説は安室さんです。遂にエンペラーが再登場しましたね。しかも、今回はちゃんと姿が確認出来てます」
「はい。あの圧倒的な強さ、両軍を一機で全滅させる勢いでした。五右衛門の戦艦を大破し、あわや天川織姫の戦艦さえもと思わせました」
オールマイトと安室の後ろにあるスクリーンにエンペラーの一連の動きが放送される。別のアイドル達に対抗手段を考えさせるためだろう。
「私も思いました。開始数分。勝利条件のフラッグも出てない状況。両者の戦艦の撃墜による引き分けもありえました。しかし! 今回も天川織姫は意表を突きましたね。誰もが考えそうで、しなかった事ですよ」
「はい。私としては天川織姫側に新たなファンが一人と、その機体にも注目。旧モブは、開発中に考えられた機体で表舞台に出なかった機体。またしてもレアな機体を手にしたわけです」
「あの……旧モブの存在はレアかもしれませんが、あまり活躍もなく、性能もモブと大差がないかと。それよりも」
安室さんは熱く旧モブの事を語りだしそうなのをオールマイトは止め、エンペラーに何が起きたかを話すのを促した。そのため、映像は一時停止になっている。
「申し訳ない。アレが動く姿を見たら興奮が止まらず……エンペラーはどの機体の攻撃も当たらず、トレイターを踏み台にして天川織姫に攻撃を仕掛けた。誰もが五右衛門の戦艦の二の舞になるかと思ったでしょう。その時、天川織姫が歌い出した事によって、エンペラーの動きが鈍くなるのではなく、一時的に止まった。次に起きたのがコレです」
エンペラーから天川織姫の戦艦に映像が切り替わる。
「天川織姫の戦艦がカスタマイズされていたんです。可憐、派手、華麗など知った事か! 鉄の堅固な城を選んだわけでもない。形はあまり変化はなく、隠し持っていた。まさかの主砲、戦艦に攻撃手段を取り入れたわけです」
アイドルが乗る戦艦に誰も武器を搭載しなかった。アイドルはファンが守る存在であり、歌によって力を与える、見守る形が主流だった。アイドルが別のファン達を攻撃するのは、仲間に引き入れる事が難しいというのもある。
「そうなんです。エンペラーに攻撃を当てたのは天川織姫の主砲のみ。しかし、撃破する事は出来ない。エンペラーの装甲が高いというのもあるかもしれませんが、主砲の威力が弱いという事も。運営も初めての事で調整してるかもしれません。ですが、その攻撃によって勝敗が決まりました。五右衛門の戦艦が沈黙したと判断されたからです。これによって、五右衛門のスキャンダルが公開される事になりました。何故、時間の猶予があったのにも関わらず撤退しなかったのか……っと、新たな情報です。五右衛門のスキャンダルは無くなりました。アイドル戦記の最中、意識不明の状態に陥ってしまったようです。病院に運ばれ、現在も意識が戻らない模様。撤退が出来なかった原因はそれでしょう。エンペラーの攻撃で倒されたからではなく、理由が理由だけにスキャンダルは出さない事を運営は決めたようです」