親父と新戦艦が出撃します ー6ー
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「はぁ……親父さんはきちんと参加してくれたみたいだけど、一体どうなる事やら」
五右衛門戦が始まろうとしてる。相手は全員参加の百人。普通は人数の差もあるからハンデが与えられ、時間と二分割するか選ぶ事が出来る。そのはずなのに、今回は五右衛門のあまりの敗戦数によってハンデがなかった。運営が同等の力と判断したかもしれないけど、こっちはカストルさんが不参加。しかも、親父さんの初参戦で明らかにこちら側が不利なんだけど。
「皆様拍手喝采。吾輩の出陣である」
五右衛門は歌舞伎の演者のような姿、名の通りに石川五右衛門に似せようとしたのだろう。宣戦布告というよりも、その姿に見惚れさすのが目的。
一方、天川織姫側は「十番に行ってます」と書かれた立て札。業界用語なんだろうけど、何をしてるか全く謎。
「また同じ場所かと思ったけど、全然変わるんだな」
今回の戦場も草原。けど、夜戦である事から雰囲気が全然変わる。常にあるのは中央にある月の光だけで、ほぼ暗闇の状態。索敵で相手を確認するにもどういうわけか機能しない。近接型が有利となる戦場。
救いなのは勝利条件。敵の全滅じゃなく、フラッグの回収。最初からあるわけではなく、時間の経過によって出現する。
「やっぱり、あっちは最初から歌を披露するよな」
五右衛門側も同時に出撃するのだから、準備が出来てる状態。オタ芸を披露するためにも序盤で歌うのは当然。暗闇でその姿が見えないのでは? と思うだろうけど、五右衛門が乗る戦艦が光を照らし出す。
オタ芸によるペンライト型ナイフの乱舞で光を出す方法もあるんだろうけど、その光は一切なかった。モブ達はオタ芸はせず、五右衛門の戦艦の方に向けて正座していた。まるでコンサートを見に来てる客だ。
しかも、歌の始まりの言葉が「絶景かな、絶景かな」という言葉と同時にモブの何機かが夜空に向けてバズーカを放った。それは攻撃のためじゃなく、花火の代わり。
「……何かツッコミどころが一杯すぎる」
そのせいで相手がいる場所も分かり、正座してるから狙いやすい。しかも、何の能力も発動してるようにも思えない。
それにだ。一番のツッコミどころは親父さん。五右衛門の歌が始まると、そちらに向かって走り出した。その動きは滑らかで、操縦技術があるのが分かる。けど、攻撃するためではなく、本当に五右衛門のファンなんだろう。
「きゃあああ、五右衛門さ〜ん!」
驚きなのは操縦技術じゃなく、親父という名前なのにオバさん声。男性ではなく、女性なのかも。ネットなんで、ニックネームだけで判断するのは難しいって事なんだろう。もしくはオネェ系。