親父と新戦艦が出撃します ー5ー
「えっ! マジですか。親父さんと二人だなんて無理ですよ。新しい戦艦の御披露目でもあるのに」
「仕方ないでしょ。こっちが日を決める事なんて出来ないんだから。今回は負けても文句は言わないから。ただ、新戦艦の機能は使ってほしくないわね」
カストルさんは冗談を言ってるわけじゃない。本当に次のアイドル戦記に参加しないみたいだ。俺は対戦相手と日時を確認してみる。
「明日の夜八時で……対戦相手は五右衛門。渋い名前の相手ですね」
俺はアイドル戦記に参加してから、バイトを日時を朝、昼、深夜にして夜を外すようにしている。日常を変えるぐらいにアイドル戦記が楽しくなってるんだろう。
「今回も男が相手。しかも、五十代。演歌に転向したアイドル。アイドル戦記が作られる前の歌を含めて、持ち歌も十曲。年齢も関係ないようね。ファン数は百人。けど、勝率とかは悪いみたいよ。順位も最下位みたい」
アイドルは若いイメージがあるけど、最初がアイドルで、今も現役ならそれで通じるみたいだ。しかも歌うのは演歌。昔は考えられなかったけど、新人で演歌アイドルユニットとかも組まれてるんだから、アイドル戦記に参加していても問題じゃない。
それとC級での順位。俺達は昇級したばかりで、初戦で負けてしまった。それなのに最下位は五右衛門。どうやら全敗してるみたいだ。百人いるけど、全員が参加出来てないのかもしれない。
「最下位だからって、全くの情報なしではこの前と一緒。出来るなら勝ちたいし、初めての一勝を相手に与えるつもりはないですよ」
全敗って事を聞いて、もしかしたら勝てるかも……という気持ちが生まれてしまった。そんな気持ちが相手を下に見て、負ける要因になるかもしれない。だから、過去の五右衛門の戦争を確認する事を怠らない。それと親父さんにもカストルが不参加の事とかを報告しないと。
「……なんだろう。色々とツッコミたい」
掲示板にカストルさんの不参加を書こうとしたら、親父さんが先にコメントを残していた。そこには五右衛門が相手でテンションが上がってる感じ。歌が好きだとかも書かれていて、何でこの人は天川織姫のファンの一員になったか疑問に思ってしまうし、裏切るとかないだろうと不安になる。
それと五右衛門のファン達の戦い方。全員がモブのままで、統制も取れてない。というか、操縦がチグハグ。失礼な言い方だと思うけど、ファン達も高齢者でイマイチ理解してないのかも。C級に上がれたのも奇跡というぐらいの動きだ。