親父と新戦艦が出撃します ー1ー
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眠りで意識が曖昧になってる中、ガサガサと音が聞こえてくる。ゴキブリが動く音にしては大きいし、ほんの数ミリの距離しかないのなら恐怖でしかない。けど、次第に音が大きくなって、ゴキブリの音じゃない事が分かる。人の声も僅かに聞こえてきて、もしかしたら泥棒が侵入したのかも。
すぐさま眠ってしまったせいでドアの鍵を閉め忘れてしまったのが運の尽きだ。
しかも、足音が俺の方に近付いてくる。眠ってる間にと思ったのが何も見つけられず、俺に脅迫でもするつもりなんだ。
ここで取れる方法は三つ。意地でも眠ったふりを続けるか、相手より先に先制攻撃を仕掛けるか。もしくは奇声を発して、相手が驚いているうちに逃げ出すか。
相手が武器、ナイフとかを持ってた場合。眠ったふりを続けても、ナイフを突き付けられた時点で気持ちが折れると思う。奇声を発して驚かすのも、相手の防衛本能でナイフで刺される可能性も。残るは先手必勝。体勢を崩しさえすれば勝機が見えてくる。
ズンズンと進んでくる音は俺の目の前で止まった。ここからは俺の勇気次第。
「きえぇぇぇ!」
勇気を振り絞るために出した声が奇声で、間違った選択を選んでしまった。それに飛び掛かる姿が相手を抱き締めようとする形。しかも、横になってる状態からだから、腹筋運動をした感じになっただけ。しかも、ナイフで刺される事はなかったけど、カウンターばりに足で顔を踏まれてしまった。
「何を欲情して、私に襲い掛かろうとしてるのよ。慰謝料の代わりに昼ご飯を作りなさい。インスタントも常備さておくように」
「その声は……カストルさん!」
カストルさんの足の裏で目隠しされた状態だけど、声で分かる。勝手に家に入ってきただけじゃなく、飯を漁っていたみたいだ。しかも、言い方はからして料理は出来ない。起きた時に、『ご飯が出来てるから』とか言われたら、不法侵入でも許してたかもしれない。勿論、知り合いの女性が対象で夜野さんだったら警察を呼んでるかもしれない。