C級戦はそんなに甘くはありません ー13ー
気持ち的に前科があるカストルさんかもというのがあった。けど、バイトが終わる時間も知らないし、声を掛けてくればいいはず。俺の後をついてくるなんて余程の物好きだ。
「えっ……夜野さん?」
「すみません。家の方向が同じだったもので。先に行かれたので声も掛け辛く」
ストーカーと思った相手は夜野さんだった。女性だったら、どんな人かと怖さもあったけど、少し興味があったから残念な気持ちにもなる。
「そ、そうだったんですか? そういえば引っ越しの話もしてましたね。途中まで一緒に帰りますか」
このまま別々に帰って、後ろをついて来られるのも不気味にしか思えないし、先に行ってもらっても夜野さんも同じ気持ちになるかもしれない。
「申し訳ありません。それではご一緒されてもらいます」
だからといって会話が弾むわけもない。暇な深夜で結構会話もしてたし、眠気が襲ってきてる。年の差があって、私服とスーツ。むさい男が二人並んで歩いてる。他の人達が見たら変に思うかも。だからといって足早になるのもおかしいわけで、早く家に着けと願ってしまう。
「あっ! 私の家はあそこなので」
夜野さんが指差したのは俺が住んでるアパートだった。周りと人付き合いがないせいか、誰かが引っ越してきたなんて気付かなかった。
「俺もあのアパートなんですよ。一緒のところに住んでるなんて、珍しいですね」
アパートは二階建てで一階と二階で五つずつ。計十室ある。俺はその中で一階の一番奥。夜野さんはその隣。バイトも一緒で家は隣に引っ越してきた。恋愛漫画とかだったら運命の出会いになるんだろうけど、五十のバツイチのオッサンに何を求めろと言うんだ。
「それでは……」
変な疲れが俺に訪れ、家の中に入るとすぐに眠りに入ってしまった。