C級戦はそんなに甘くはありません ー5ー
「またレディ・モブだけに効果があるのかと思ったけど、機動力が上がったみたいに見えないし」
カストルさんに交戦中の一団に攻撃力が上がった様子はない。相手が一機であり、同士撃ちの可能性があるから避けてるのかも。
スピードが上がってないと感じるのも、一定の動きであって照準がぶれる事なく、グレネードを撃てるからだ。
「そのおかげで一気に敵を減らせるわけだけど」
カストルさんに指示されたようにグレネードを放つ。勿論、フェアレーターと一番離れた相手に。
今回の勝利条件は敵の全滅。全員がカストルさんに攻撃を仕掛けず、俺の方に向かってくる。集中攻撃にも限度があり、手分けした方が無難なんだろう。
「……って、一機も倒せてない! 歌の能力はまた防御力を上げるやつなのかよ」
歌の能力の選択はアイドルが出来るわけで、同じ能力にしては駄目というわけじゃない。曲数が増えたら被ってしまうのは仕方ないわけだし。
それでもカストルの武器ではレディ・モブを倒してる。威力は近接に強いのか、防御でも遠距離武器に対して効力を発揮するのか。
「カストルさん! こっちの攻撃が通じないんですけど、どうしたら」
「歌が終わるまで逃げ回るにしても、もう一曲も防御系なら厄介ね。危険を承知で接近するのも手よ。距離が縮まれば、その分威力が上がるはず」
選ぶのは広範囲ではなく、単体攻撃。連動した爆発ではなく、直接当てる事。
「相手もこっちに接近してるわけですし……やるしかないですよね。トレイター……行きます!」
フェアレーターと違って、トレイターは盾を装備してない。移動射撃が必要なんだけど、命中率は低くなるのは仕方ない。一番良いのは天川織姫が歌う事なんだけど、いつ来るかも分からないのを期待するわけにもいかない。
「まずは倒せなくても煙幕で狙いを外されないと」
相手に当てるのではなく、土煙でトレイターの姿を捉えられないようにする。まぁ、こっちも同じなんだけど。
それでも全体に土煙が立つわけじゃなく、効果があるのも一定の範囲だけ。敵の攻撃を減らすためにはうってつけだ。
「カストルさんよりも弱い俺を狙うつもりなんだろうけど、そうもいかないぞ……っと、あれ?」
俺に向けて攻撃する連中もいるけど、前進するのを止めないレディ・モブ達がいる。となれば、狙ってるのは天川織姫の戦艦だ。