C級戦はそんなに甘くはありません ー1ー
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「俺は男だろうと女だろうと容赦しない。それが俺を好きでいてくれる彼女達のためだから!」
C級初戦。これは俺の言葉じゃなくて、ハガネの台詞。C級になると準備が終わったら戦場の場面になるわけじゃなく、敵側のアイドルが宣戦布告する映像を見る事になってるみたいだった。俺としては天川織姫の映像の方が嬉しいんだけど、この場面は敵を寝返りさせるために歌声だけじゃなく、台詞や表情などでの宣戦布告という名のアピールタイムらしい。
まぁ……ハガネのアピールは俺としてはツッコミどころ満載だった。まずファンが女子ばかりと思ってるところだ。男子もいるはずだし、女性アイドルが相手の場合、大体が男性だろう。見る側としては痛い事言ってるなとしか思えない。それに戦うのはファンであって、お前じゃないわけだし。コスチュームも元アイドルグループの服を着て、未練がありありなのが分かるぐらいだ。これだったら、天川織姫の方がましなアピールをしてそうだ。
けど、後々動画でも確認出来るらしいんだけど、実際の天川織姫のアピールはこうだったらしい。
俺やカストルさんだけじゃなく、他のファンでもほとんどが謎となってる天川織姫のアピールに注目してたと思う。それが姿どころか声も出さず、落語のめくり台みたいな物が映し出させれて、『貴方達には興味がありません』とだけ書かれていたみたいだ。ファンを取り込む気なんて更々なく、完璧に宣戦布告として成り立ってる。これを見た相手のファンは自分達だけじゃなく、推してるアイドルに興味がないと思ってしまうだろう。
そんな事になってるとは戦争前の俺は知るよしもないんだけど。
今回はハガネのファン達は全員参加で二対八十の形。D級では十倍だったのが、四十倍にアップしてるわけだ。この時のハンデとして時間の猶予もあるんだけど、最初の展開も選ぶ事が出来るみたいだ。
一つは最初から二対八十の形での戦闘。もう一つは一対四十の半々に分けた形にして、時間が半分過ぎた時に合流するという展開。その際、一方の戦場にしかアイドルが乗る戦艦はいる事が出来ず、合流後はごちゃ混ぜの戦闘状態ではなく、一からスタートのような形になる。
その二つで選んだのは最初から二対八十の形だ。それは天川織姫の選択だと思う。カストルさんなら後者を選びそうな気がするんだけど、俺には選択権がなかった。きっと、カストルさんにもなかったはずだ。