勝つために手段を選ばなかったら、悪役になりました ー16ー
すると、画面に緊急警報という文字が出てきた。ボスキャラの登場かと思えば、機体の選択画面に戻った。それは俺が機体を再選択するんじゃなくて、プレイヤーとして乱入してきたんだ。
「C級に上がれたなら、早くも対決出来るかも。そうなった時には賭けをしたいんだけどな」
乱入してきたのは只野さんじゃなく、明日香ちゃん。選択して機体や装備は近接型。カストルさんのフェアレーターに似たタイプだ。戦闘に戻ると、画面は二分割された。協力プレイになるかと思いきや、対決みたいだ。敵もちゃんと出現するんだけど、撃破数を競うんじゃなくて、先にどちらが大破されるか。勿論お互いに攻撃する事は可能だ。
「賭けって……カストルさんを明日香ちゃんのファンの中に取り込む事?」
「カストルさんだけじゃなくて、星野さんもですよ。この前の戦闘は見違えるような動きでしたもん」
明日香ちゃんは俺とカストルさんを引き込もうとしてるのを諦めてないらしい。それに俺一人では決められない。
それと明日香ちゃんが操る機体の動きは凄まじく、本当にフェアレーターを操るカストルさんみたいだ。アイドル戦記で操縦しても、俺なんかよりも上手いんじゃないかと思ってしまう。
「それと賭けなんだから、こっちもそれなりの代償がないと駄目よね。私が負けたら、アイドルを引退して、天川織姫の仲間に入ってあげる。勿論お兄も一緒にね。操縦技術も、このゲームで何となく分かるでしょ」
「……はっ! 負けた時はアイドルを引退するって本気で言ってるんですか?」
「本気も本気。これぐらいじゃないとアイツも乗ってこないだろうし。それに……まぁ、これは言わなくてもいいか」
冗談かと思ったら、明日香ちゃんは本気みたいだ。俺達に勝つ自信があるんだろうな。
「ちょっと! 只野さんも止めなくていいんですか。こんなのに引退を賭けるなんて、ファンも許さないんじゃ」
只野さんも明日香ちゃんの会員番号一番で、他のメンバーのために止めるべきだと思う。
「僕としては別に構わないが? マイシスター明日香の意志を尊重するぞ。アイドルを辞めても、妹を辞めるわけじゃないからな」
それなのに軽いノリみたいに引退を賭ける事を、只野さんは許した。簡単にアイドルになれるわけないのに手放そうとするなんて。しかも、天川織姫の仲間というか、ファンになるといっても会員にどうなるかも分かってないのにどうするつもりなんだろう。
「なんか、こっちが負ける前提な感じなんだけど」
明日香ちゃんはムスッとした顔で敵を次々と撃破していく。こっちが攻撃を当てようとしても、上手く敵を盾にして距離を詰めてくる。
そして、明日香ちゃんが操る機体に集中させらた事で、レーサーの事をすっかり忘れてしまっていた。明日香ちゃんが無防備に横移動した時には、すでに負けが決まっていた。
明日香ちゃんも只野さん並みに作戦を立てるのも上手いのだ。それに兄妹であり、普通のアイドルと違って連絡を取り合える分アドバンテージがあるわけだ。
「終わりっと……私のお兄みたいに操縦が上手いのは分かった? アイツにもちゃんと伝えてよね」
俺に操縦センスを見せつけて、ボロボロにしたのに満足したのか、再びエロ本を見始めた。しかも、渡したエロ本とは違って、タンスが新しいのを取り出したみたいだ。