勝つために手段を選ばなかったら、悪役になりました ー13ー
「本当ですか! ……って、そんなのがあるなら最初に教えてくださいよ」
只野さんの家を訪問した時にでも教えて貰えたら、カストルさんとゲーセンで練習せずに済み、お金も費やさなくて良かったかもしれない。必要な事だったとしても、勿体ないと思ってしまう。
「それが苦肉の策だからだよ。オタクによる妄想の力も必要になるかもしれない。その道具を家から持ってきてあげよう」
只野さんは道具を取りに行くために、只野宅へ一度帰宅するみたいだ。俺の家からだとバイクで往復一時間ぐらい。その間、俺とカストルさんは二人きりになるわけなんだけど。
「私は奴が戻ってくる前に帰る事にするわ。アンタと違って、私には必要ない事だから。オタクの妄想なんて持ち合わせてないの」
それを言うのなら俺もそうだ。オタクじゃないし、妄想力も理解してない。それに俺と只野さんの間柄だから協力してくれるみたいだけど、カストルさんは見返りを求められると思ったのかも。
「あっ……そう? また何かあった時は急に来るんじゃなくて、専用掲示板に伝言を書いてもらえると」
俺はカストルさんを止めなかった。天川織姫との出会いとかの話とか聞いてみたい気持ちはあるけど、只野さんが明日香ちゃんの兄と知られる前に離したい。
「アンタの家にもう一度来るか分からないけど、今度からはちゃんと連絡してあげる」
カストルさんは簡単に了承してくれて、家を出て行った。今度は俺がストーキングするのもありかと思ったけど、近所でそれをすると周囲の目が厳しくなるので止める事にした。
そして、一時間後……
「へぇ〜、ここが星野さんの家なんだ。男の人の部屋に入るのってお兄以外では初めてかも」
戻ってきたのは只野さんだけじゃなく、何故か明日香ちゃんも一緒にいた。カストルさんが帰った事が今では本当にありがたかった。
「星野氏、すまん。カストル氏は……帰ったようだな。必要な物をマイシスターが使っていてな」
只野さんも家をキョロキョロと見て、カストルさんがいない事に安心していた。明日香ちゃんとカストルさんを会わせては駄目だと思っていてくれたんだろう。
「結構綺麗にしてるんですね。もっと汚いイメージだったんだけど」
明日香ちゃんもカストルさんと同じ様に勝手に人の家に入り込み、部屋の探索まで始めてしまった。漫画とかの中だけの話だと思ってたけど、エロ本を見つけ出そうとしてるみたいだ。女子にとって、それを見る機会はこういう時にしかないのかも。興味があっても、女子にはなかなか見られない代物だから。