勝つために手段を選ばなかったら、悪役になりました ー10ー
「また殴られに戻ってきたわけ?」
「ノンノン。先程は失礼した。僕の名は只野、君の嫌がる事はしない。僕なら色々と説明出来ると思ってな」
「……ふん」
カストルさんは再度只野さんに殴り掛かろうとしたけど、俺に説明するのが面倒と思ったんだろう。コンビニで買ったお菓子を食べ始め、只野さんに説明を任せる事にしたみたいだ。
「任せてもらえたようだな。オホン! バイトロイヤルはアイドルが参加するのではなく、ファン達のみ。歌の恩恵はないわけだ。それにだ。先程参加人数によって階級アップが出来ると言ったが、D級、それぞれの級でそれをするのは滅多にいない」
カストルさんがいうバイトロイヤルはD級のアイドルで行われるようだ。C級やB級にもそれぞれあるらしい。けど、何で階級を上げようとしないのか分からない。
「なんでですか? アイドルは上を目指してるんだよね」
「各階級にもCD発売の権利やイベントを行う事が出来る。その機会を不意にする事になるだろ。それに実力がなければ勝ち抜けない。階級は上がる事だけでなく、下がる事もある。階級が上がればファン数が増えるのは、CD発売などをするから」
「そうなんだ……って、それなら誰も参加しないんじゃないの? 天川織姫だって」
「いや……階級アップ以外にも特典はあるのだよ。アイドルではなく、僕達の方にだな。機体や武器が撃破数によって選択出来たり、アイドルが乗る戦艦を強化するアイテムが貰えたり」
「なるほど! いやいや、他のアイドル達のファンが参加するのは分かるけど、俺達は天川織姫の階級アップでいいわけ?」
只野さんの話からすれば、このままD級にいればCD発売とか一回は出来ると思う。その機会を俺達は消そうとしてるわけだ。
「そこは問題ないわ。バトルロイヤルに参加するって言ったけど、私達の参加はすでに決定されてるから。先に言っておくけど、私がそうしたわけじゃないから。それを考えると、天川織姫がしたと考えるべきよね」
「……はっ? 参加は自由って言ってたのに。強制参加なわけ」
俺はアイドル戦記のアプリを確認すると、バトルロイヤルのイベントの情報が書かれてた。その中でD級組の参加者欄に俺とカストルさんの名前が書かれ、横には誰のファンかが表示されてる。しかも参加を表明してるのは俺達だけみたいだ。それも自分達の意思じゃないんだけど。